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R25レトロカスタムから見えてきた新たなバイクライフの楽しみ方とは…

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真出典:Webikeバイクニュース

レトロとモダンを融合した日米合作カスタム

70年代のロードレーサーを思わせる流線型のシルエットに、現代アートのようなアバンギャルドなグラフィックを施したこのマシン。そのベースがヤマハの250ccスーパースポーツ、YZF-R25と気付く人はなかなかの眼力です。それほど見事な変身ぶりにまず驚かされます。

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プロデュースしたのは東京・西麻布にある瀟洒なバイクアパレル専門店「ROARS ORIGINAL(ロアーズ・オリジナル)」で、米国・カリフォルニアにある「GG Retrofitz(GGレトロフィッツ)」製の外装キットを使って仕上げたものだとか。また、外装キットやその他パーツのアッセンブリーは東京・東久留米のバイクショップ「ナインゲート」に依頼。今回のプロジェクトに際して、米国からGGのスタッフが打合せのためにわざわざ来日するなど、まさに日米合作と呼ぶに相応しい力作と言えるでしょう。

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目を惹く美しいフィニッシュは“割れたガラスの破片”をイメージしたものだとか。都会の雰囲気がスタイリッシュに表現されていますよね。これ以外にもマフラーはワイズギア製スリップオンに、前後サスペンションをKYB製のフルアジャスタブルタイプへと変更し、シートにも本革製の一品モノをあしらうなど、バイクとしての機能性やスポーツマインドにファッション感覚を融合した、今までにない新たなカスタムの方向性を提案したものと言えそうです。

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性能や信頼性は現代モデルという安心感

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実際に試乗してみましたが、ベースマシンは元々走りの良さに定評のあるR25(従来型)であるのに加え、軽量フルカウルと前後サス、マフラー交換によってアップグレードされているためか、その走りはSTDを上回るクオリティと感じました。

感心したのは外装キットのフィッティングの正確さで、素材はFRPで薄いのにしっかりしていてガタや歪みもなく、最初から市販モデルとして販売されていても不思議ではない完成度に思えました。

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特にラウンド形状のスクリーン越しに見える景色が、昔の市販レーサーTZを思わせて気分も盛り上がります。ベースは現代の最新モデルなので、性能はもちろん信頼性やメンテナンスにも不安がないところもメリットですね。

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旧き良き時代のWGPに想いを馳せる

最近は2輪でもネオクラシックがちょっとしたブームになっていますが、昔のロードレーサーをモチーフにしたレトロカスタムは今まであまりなかった気がします。

GGのコンセプトは70年代のロードレーサーということですが、その時代のヤマハの市販レーサー、TZ250を彷彿させるシルエットに青春時代のノスタルジーを重ねる人も多いことでしょう。また、若い世代には美しいRを描くロケットカウル風のシルエットが新鮮に映るかも。

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WGPがコンチネンタルサーカスと呼ばれ、今ほどファクトリーチームが圧倒的ではなかった時代。レースに夢を賭ける名もないプライベーター達が、トレーラーハウスを運転しながら欧州各地を転戦していた頃の息遣いが伝わってくるような……。GGの外装キットを見ていると、そんなストーリーが浮かんでくるんですね。

白いキャンバスに自由に描けばいい

今回、ROARSがプロデュースしたR25カスタムは、レトロな形の中に都会的でモダンなセンスを織り込んだ作品になっていますが、これ以外にも例えばガチな70年代レーサーレプリカにしてしまうとか、目立ち度優先で思いっきりサイケ風に仕上げるなど、人それぞれ自由な発想での自己表現があっていいと思います。

これまで2輪の世界では絶対性能や利便性などファンクション重視の考え方が主流でしたが、これからのバイクライフではモノとしてだけでなく、心ときめくエモーショナルな体験や“見せる=見られる”といったコミュニケーションの満足度にも価値を求める時代になっていくのかもしれませんね。

今回の試乗を通じて、そうしたムーブメントの一端を感じたのでした。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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