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憧れを現実へと近づけたミドルクラスの冒険マシンが熱い!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
▲ヤマハ 新型テネレ(プロトタイプ) 写真出典:Webikeニュース

現実的な使い勝手を想定したクラス

最近続々とニューモデルが登場するなど、ミドルクラスのアドベンチャーモデルが元気だ。その明確な定義はないが、だいたい排気量が700ccから900cc程度で、舗装路だけでなく林道や荒地など道を選ばずに走破できるオフロード性能と、高速で長時間移動するためのパワーと空力を含めた快適性、ロングツーリングに対応する積載性などを備えたマシンである。

従来のアドベンチャーモデルが排気量を拡大しつつ、より高性能かつ豪華装備になり車格も巨大化していく中で、もう少し現実的な使い勝手を想定して普通のライダーでもあまり臆せず乗れるパワーやサイズ感でまとめられているのがミドルクラスである。特に多くのライダーが二の足を踏む、車重や足着き性の面で有利になっているモデルが多いのも特徴だ。

ユーザーの9割がオフロード経験なし

あるメーカーの調査によると、アドベンチャーモデルの所有者の約9割がオフロードを走ってみたことがないそうだ。「アドベンチャーには憧れるけれど、リッター超クラスには乗れる気がしない。ましてやオフロードなど入っていけるはずがない……」と多くのユーザーが思っている。否そう思うのが正常な心理と言える。凄い性能を持っているのに普通のライダーではオフロードを走ることができない、というジレンマ。そこに出てきたのがミドルクラスの冒険マシンだ。「デカいオフ車で土の上を走ってみたい」という憧れに応えた、まさにユーザーの気持ちに寄り添ったモデルと言えそうだ。

オフロードでは大きさや重さの影響が大きい

参考までにBMWのフラッグシップモデルのR1250GSとF850GSをスペックで比較してみると、パワーで41ps、車重で20kgの差があることが分かる。シート高はほぼ同じだが、車体の幅や重量などでも足着き性の印象は大きく異なってくるものだ。

■BMW R1250GS

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排気量1,254cc

最高出力100kW(136PS)/7,750rpm

車重256kg

シート高850/870mm

価格2,510,000円。

■BMW F850GS

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排気量853cc

最高出力70kW(95PS)/8,250rpm

車重236kg

シート高860mm

価格1,541,000円

特にオフロードにおいては、車体の大きさや重さなどが乗りやすさに直接関わってくるため、ツーリングでは無敵の走りを誇る最上級モデルでもオフロードでは一転苦労する場合も多い。それをコントロールするのも醍醐味ではあろうが実際はかなり難しいと言える。

大きく分けてオン寄りとオフ寄りがある

最近はアドベンチャーモデルも多種多様になり、それぞれキャラクターや立ち位置も異なるため簡単にひと括りにはできなくなっている。大きく分けるとオンロード寄り(オン仕様)とオフロード寄り(オフ仕様)の2つのカテゴリーへと分化が進みつつあり、オン仕様は前輪が17インチ~19インチのキャストホイールに舗装路向けのセッティングを施したサスペンションを装備したタイプで、これらはロングツーリング主体のユーザー層をターゲットにしている。

一方、オフ仕様は前輪21インチのワイヤースポークホイールと未舗装路向けに設定されたギャップ吸収性に優れるロングストロークの前後サスペンションが与えられているのが特徴。ハンドガードやエンジンガードなどのプロテクター類を装備したヘビーデューティな作りに加え、電子制御も含め、より本格的なオフロード走行に適した装備が与えられている。こちらのターゲットは自らのスキルを磨き、よりハードな冒険ツーリングに挑戦したい人々だ。

先行する海外勢、国産は新型テネレに期待

近年の傾向として、各メーカーとも同じモデルの中でオン仕様とオフ仕様の両方を設定するのが主流になっている。一般的にはオン仕様のほうがニーズも高く販売台数も多いようだが、オフ仕様のポテンシャルの高さがそのままブランドイメージにもつながり、またこのクラスのベンチマークとなるため、各メーカーともコストをかけて本気で作り込んでいるのが実情だ。

ミドルクラスで代表的なところでは、BMWの「F750GS」と「F850GS」、トライアンフの「タイガー800XR」と「タイガー800XC」、KTMの「790アドベンチャー」と「790アドベンチャーR」などやはり海外勢が強い。最新モデルとしては、クラシカルな雰囲気で人気を呼びそうなモト・グッツィの「V85TT」も注目株だ。

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▲BMW F750GS

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▲BMW F850GS

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▲モト・グッツィ V85TT

また、国産で現行モデルを挙げるとすれば、スズキの「Vストローム650」と「Vストローム650XT」辺りがこれに属するだろう。昨年から情報が飛び交っているヤマハの新型「テネレ700」もそろそろテイクオフするようなので楽しみだ。

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▲スズキ Vストローム650XT

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▲ヤマハ 新型テネレ700

いよいよ面白くなってきた中間排気量のアドベンチャーモデル。今後どのようなムーブメントに発展していくのか注目していきたい。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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