ハーレーが仕掛ける電動バイク攻勢 その真の狙いとは!?

▲HARLEY DAVIDSON 「LiveWire」

先週、米国で開催された家電見本市CES 2019に、ハーレーダビッドソン初の電動モーターサイクル「LiveWire」(ライブワイヤー)が登場し、米国における予約開始と29,799USドル~(約320万円)の価格が正式にアナウンスされた。

3.5秒以内に0から時速60マイル(時速約97km)に達する驚異的な加速力や、クラッチやギヤチェンジを必要としないイージーな操作性、ブレーキ力を利用して蓄電するパワー回生モードに、専用アプリとクラウドの組み合わせによる最新のライダーサポートシステムなど、まさにEVならではの魅力と新しさを前面に打ち出した新時代のハーレーを印象づけるモデルである。

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また、同ショーでは2つの軽量電動バイクのコンセプトモデルも初公開されている。ライブワイヤーも含め、これらのEVは新たな価値の提供やハーレーへのアプローチを広げる上での戦略モデルであり、この先数年間における“モビリティの電化のリーダー”としての地位をハーレーが確立するための足掛かりとなるものだ。

1000ccスポーツモデル並みの性能

ここまでは既報どおりだが、注目したいのは今回登場した3タイプのモデルが持つ意味である。まずライブワイヤーだが、ハーレーの歴史に残るEVスポーツモデルであることは間違いない。ある意味でハーレーブランドにおける新時代のフラッグシップだ。だからこそ、2014年のプロトタイプ発表以降、4年もの歳月をかけて念入りに開発を進めてきたのだろう。

ガソリン車に換算すると排気量1000ccクラスのスポーツモデルと同等の動力性能や前後フルアジャスタブルサスペンションなどの装備を見ても、“走り”の性能を重視したモデルであることは明らかだ。

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ただ、ウィークポイントもある。それは航続距離だ。リリースによると「1回の充電で推定110マイル(約177km)の都市走行が可能」とあるが、街乗りペースならいけても高速道路を全開で走ったらそこまでもたないと推測できる。これはライブワイヤーに限ったことではなく、2輪4輪を含め現存する全てのEV同様、航続距離については未だガソリン車との差は大きい。EVの普及はバッテリー性能の向上にかかっているというのが、今のモビリティ業界の常識だ。

ハーレーフリークではない人に向けて

そして、300万円を超えるプライスもユーザーを選ぶことになるだろう。ハーレーで同じ価格帯を探すとハイクラスのツーリングファミリーでも「スペシャル」が付くモデルレンジに相当する。

つまり富裕層向けになるのだが、ただし、ライブワイヤーを求める層は従来のハーレーフリークとは全く異なる人々になるだろう。巨大な空冷Vツイン独特の鼓動感やサウンドが好きで、ゴージャス極まりない威風堂々のスタイルに憧れてハーレーに乗っている人が、まさかライブワイヤーに乗り換えるとは思えないからだ。もしかしたら、4輪EVの「テスラ」を選ぶような人々がターゲットになるのかもしれない。

EVで一発逆転を狙うハーレー

でもそれがハーレーの狙いなのだ。2018モデルとして新型ソフテイルが全面刷新されたときもそうだったが、ハーレーは今、既存ユーザーとは異なる層へのアプローチを図っている。ハーレーはその圧倒的なブランド力とは裏腹に、前述したようなステレオタイプ的なイメージがあまりにも強烈すぎてユーザー層の硬直化が進んでいた。新たなユーザー層の掘り起こしがここ数年のハーレーの課題だったことはよく知られている話だ。

とはいえ、今からスーパースポーツなど他のジャンルに打って出たとしても勝算は薄いことは彼らも承知している。であれば、まだ他メーカーが手を付けていないEVで一発逆転を狙っていくのはマーケティング戦略的にも正しい発想と言えるだろう。

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コミューター領域もしたたかに狙う

今回公開された2つのコンセプトモデルも同様で、ハーレーとは今まで縁が無かったコミューター領域へと踏み込んだモデルである。2つともシンプルな構造で作れるEVの特性を生かした軽量コンパクトなモデルだが、その方向性は大きく異なるように見える。

ひとつは剥き出しのフレームが印象的なスクーターのようなタイプだが、ユニークなのは“中身がない”こと。フレームに囲われた部分がフリースペースになっていて、荷物を運んだりスケボーなどの遊び道具を詰め込んだり、とちょっとホンダのズーマーに似ていなくもないがアイデア次第でいろいろな使い方ができそうだ。

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もう一方は自転車のマウンテンバイクかBMXと見まがうばかりのスリムなボディが特徴で、大径ワイヤースポークホイールとブロックタイヤ、倒立フォークと本格的なリヤショックを備えた車体構成から推測するに、トライアルマシンのようなパフォーマンスも可能なモデルかもしれない。普段は自転車のように足代わりに使いつつ、週末は山でエクストリームに興じるなんてことも。

2モデルとも実用性とファンを併せ持つ、よく練られたコンセプトだと思う。

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国産メーカーも、うかうかしてはいられない

ともあれ、今回のハーレーのEV攻勢には正直“やられた感”があるのは自分だけではないだろう。「あのハーレーが!?」と戸惑っている間にどんどん先行逃げ切りで遠い存在になっていってしまうというのが、家電やIT業界で嫌というほど見てきたパターン。やるなぁハーレーと感心しつつも、日本のお家芸でもあるモーターサイクルもいよいよ、うかうかしてはいられないと思うのだ。

出典:Webikeバイクニュース