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【TRIUMPH STREET TWIN 動画インプレ】正統にしてモダン 初めての英国車に最適だ!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
TRIUMPH STREET TWIN 写真出典:Webikeバイクニュース

トライアンフの原点「ストリートツイン」の魅力とは…

2気筒から3気筒、クラシックからADVスポーツまで多様なラインナップを誇るトライアンフの中でも、最もスタンダードな入門モデルとして位置付けられているのが「ストリートツイン」である。ミニマムの中に詰め込まれた英国車の伝統とモダンを感じて欲しい。

■TRIUMPH STREET TWIN 動画インプレッション

60年代ボンネを現代流に再現

2016年に水冷化された新型ボンネビルシリーズのエントリーモデルが「ストリートツイン」である。エンジンは水冷並列2気筒SOHC8バルブ900ccで、シリンダーに刻まれた空冷風のフィンやミッション別体式風のクランクケース、キャブレターを思わせるFIカバーなど、60年代に世界を席巻したトライアンフ伝統のバーチカルツインのレイアウトを今に再現したものだ。車体もスチール製ダブルクレードルフレームにフォークブーツ付きの正立フォークやツインショックを採用するなど正統派ブリティッシュの流れを汲んでいることが分かる。

その一方で、デジタルメーターや前後ディスクブレーキにキャストホイールなど、現代のバイクらしい装備とスマートなデザインで仕上げられ、同じエンジンを搭載するネオクラシック系の兄弟車「T100」とは異なる点を持つ。現代の都会の景色にもすんなりと溶け込むモダンな雰囲気を持ったモデルである。

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ジェントルだが力強い鼓動感

天気のいい朝、ストリートツインでアーバンツーリングに出かけてみることにした。

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大都会の真ん中でも早朝は人気も疎らだ。ブリティッシュスポーツにはやはり石畳がよく似合う。スリムで低いシートは両足がべったり着くので安心。何の気兼ねもなくサッと跨ると、セル一発でエンジン始動。ジェントルだが力強い鼓動感をともなったサウンドだ。

従来の空冷ツイン時代は360度クランクだったこともあり鼓動感はやや希薄だったが、今の水冷ツインは不等間隔爆発の270度クランクを採用してくれたおかげでパルスはより鮮明に。バーチカルツイン本来の音色が味わえるようになった。

弾けるような気持ち良さ

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スリップアシスト機構付きの軽いクラッチをつないで発進し、節度感のあるシフトワークでギヤをかき上げていく。ストリートシーンに合わせて作り込まれた高トルク型エンジンは、3000rpm強でピークを迎える低中速レンジ型で、エンジンが唸り出す前の余力を残した回転数でギヤアップしていくのが旨味を引き出すコツだ。そうすれば、弾けるように気持ち良く加速していく。

最高出力は55psと控えめだが、そこはやはりリッタークラスに迫る排気量ということで、スロットルを開けたときの力量感はさすが。クラシカルな見た目以上の速さを持っている。左手に東京湾を見ながら湾岸線を横浜方面へと向かうが、高速道路でもクルマの流れをリードするのは容易いこと。潮風に乗って響き渡るブリティッシュビートがクセになりそうだ。

正統派ブリティッシュの走り

ハンドリングは割と安定志向だ。理由としてはフロントタイヤが18インチということが大きいはず。加えて、見た目以上にフレームが頑強に作られていることが挙げられる。19インチほどのねっとり感はなく、現在主流の17インチのような神経質さもなく丁度いいバランス感。太過ぎない150サイズのリヤタイヤのおかげで倒し込みは軽いが、フロントの挙動が穏やかかつ接地感もあるため安心できるのだ。まさに正統派ブリティッシュの流れを汲むこのスタイリングにして、このハンドリングありきだ。

それでいて、KYB製前後サスペンションとニッシン製前後ブレーキはシュアな仕事をしてくれるし、昔懐かしい顔つきのピレリ・ファントムも性能はしっかり現代版なので、その気になればけっこう攻められる。そして、ABSとトラコンという文明の利器がライダーを陰で支えてくれている安心感も大きい。

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気軽でシンプルだが品格もある

馬車道から赤レンガを抜けて、みなとみらいへ。伝統と先進が入り混じる横浜の街にもストリートツインはよく似合う。大型バイクなのに押し歩きも苦にならないし、流行りの観光スポットにスッと停めてスマホで撮影したくなる気軽さがいい。軽量でスリムなボディは街乗りも得意で、ナローなハンドルバーのおかげで400cc並みにスイスイ前に出られるし、軽く前傾したライポジと自然なステップ位置はリラックスした走りをもたらしてくれる。エンジンに急かされないから、自分のペースで思いのままアーバンツーリングを楽しめるのだ。

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ストリートツインに乗っていると、自分も穏やかな気分でいられるためか、周囲から注がれる視線も優しく感じられるのは気のせいだろうか。たぶん、スタイルやサウンドなどを含め、このバイクが持っているウェルカムな性格が人の心を溶かすのだと思う。シンプルでオーソドックスだが、都会的センスと品格が漂う。まさに現代の英国を象徴するようなモーターサイクルだ。

こんな人におすすめ!

エンジンは低中速に厚く出力特性も穏やかで、車体もコンパクトで足着きも抜群なので街中でも扱いやすい。それでいて高速移動も余裕でこなせるパワーとスポーティな乗り味も持ち合わせている。複雑なデバイスなども付いていないし、初めての輸入車として、またトライアンフ入門用としても最適。大型バイク初心者にもおすすめしたい。

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■ディテール紹介

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エンジンは新開発の水冷並列2気筒SOHC8バルブ900ccで、最高出力55ps(40kW) / 5900 rpm、最大トルク80Nm / 3230 rpmを発揮。ハイトルク型の出力特性と270度クランクを組み合わせることで、日常域から鼓動感あふれる走りを楽しめる。

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マフラーはスポーティな左右2本出しのメガホンタイプを採用。ジェントルで力強い現代のバーチカルツインサウンドが楽しめる。リヤサスペンションもプリロード調整機構付きの伝統的なツインショックを採用する。

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前後ディスクブレーキにキャストホイールのモダンな足まわり。2チャンネルABSとトラクションコントロールを標準装備し安全性も高められている。タイヤはレトロな外観に最新性能のピレリ製ファントムスポーツコンプを採用。

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スポーティなデザインが特徴のストリートツイン専用シート。ライダーシートはスリムに絞り込まれてホールド感も良好、リヤシートはタンデム用に十分な広さを備えたレトロ調のタックロール仕様となっている。

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フューエルタンクも専用設計のスリムタイプを採用。容量もT100の14.5Lに比べて12Lとコンパクトに仕上げられ、スポーティな外観と見事にマッチングしている。ロゴをあしらったグラフィックも現代的だ。

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クラシカルな雰囲気の速度メーターはアナログタイプで見やすい。内側にLED照明の多機能デジタルディスプレイを内蔵し、距離や燃料残量、ギヤポジションなどを表示。左手元のスイッチで情報を切り替えられる。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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