新型「KATANA(カタナ)」開発者に聞く! 今明かされる知られざる秘話とは…
先週末にドイツ・ケルンで開催された世界最大級のモーターサイクルショー「インターモト2018」では国内外メーカーから新車発表が相次いだが、とりわけ多くのメディア関係者やギャラリーを集めていたのがスズキのブースだった。
その主役はもちろん新型「KATANA(カタナ)」だが、幸運なことにプレス発表会の現場に居合わせた開発者の福留武志氏に話をうかがうことができた。
以下にその内容を要約してお伝えしたい。
KATANA 3.0に共感して本社が動いた
佐川 そもそも新型カタナのプロジェクトはどのようにして始まったのですか? やはり昨年のEICMAで発表された「KATANA 3.0 CONCEPT」はプロトタイプだったのでしょうか。
福留 「KATANA 3.0 CONCEPT」はイタリアのバイク雑誌MOTOCICLSMO(モトチクリスモ)とイタリア人デザイナーのロドルフォ・フラスコーリ氏、そして車体製作を担当したエンジンズ・エンジニアリング社の共同企画によって生まれたものです。これにスズキのイタリア現地法人が少しサポートした形ですかね。ただ、スズキ本社としてはこのプロジェクトには直接関わってはいなかったんですよ。ですから、3.0がプロトというわけではなく、あくまでも3.0のコンセプトに共感してスズキ本社が動いた形になります。
佐川 やはり、3.0に対する市場の反響の大きさが決め手になったのでしょうか。
福留 もちろん、反響の大きさに背中を押されたところはありますが、今までにもカタナ復活の話は社内でも何度も持ち上がっていて、その度にいつ出そうかとタイミングを見計らっていました。とうとう機が熟したという感じです。
今年1月から異例のスピード開発
佐川 昨年のEICMAが11月ですから、今回の発表まで1年も経っていません。製品化までずいぶん早かったですね。
福留 異例のスピード稟議によってトップからゴーサインが出たのが今年2018年の1月。初期型GSX1100Sカタナが1980年にデビューした同じケルンショーに間に合わせようと突貫で開発を進めてきました。幸運だったのはGSX-S1000という完成されたパッケージングが既にあったこと。また、3.0を製作したエンジンズ・エンジニアリング社は外装だけでなく車体製作から試走テストまでこなせる技術力のある企業で、3.0の時点ですでに実走できる段階までマシンを仕上げていたことです。もちろん、製品化するに当たっては、エンジンや車体各部の最適化や法規に適合させるための細かい詰めを行っています。
佐川 エンジンとシャーシは基本的にはGSX-S1000と同じと思ってよいのでしょうか。
福留 大方はそうです。ただ、見てのとおり外装パーツは独自にデザインされたもので、これに合わせてハンドル形状やシートポジションなどもアレンジしています。初代カタナがGSX1100Eをベースにしているのと同じ考え方と思っていただければと。
乗りやすさを優先してバーハンを採用
佐川 最もこだわった点はどこでしょうか。
福留 やはりデザインでしょう。プロモーションビデオでも強調されているように、鋼の塊を火で熱して叩いて日本刀として鍛え上げていくように、まさにデザインを丹念に作り込んでいきました。特に日本刀の鋭い切っ先をイメージしたフロントカウル先端のノーズは譲れない部分ですね。3.0ではやや丸まっているのですが鋭く研ぎ直しました(笑)。
また、現代のバイクであるGSX-S1000の軽快でスポーティなハンドリングを妨げないようにライポジも検証を重ねました。ハンドルも初代カタナのような低いセパハンのほうがカッコいいという意見もありましたが、わざわざ乗りにくいライポジにするのもどうかと。最終的には乗りやすさや幅広い使い勝手を考慮したバーハンドルに落ち着きました。
現代のカタナも愛してほしい
佐川 ネットでのユーザーの評判などを見ていると賛否両論のようですが、その点についてはいかがでしょう。
福留 正直なところ、最初から予想していましたし、日本のユーザーの中でも特に昔からのファンの方々から手厳しい意見をいただいております。それだけカタナが愛されてきた証と受け止めています。スズキとしては、旧来のファンの方から新しく入ってくる若い人も含めて幅広いライダーに現代のカタナを愛していただきたいと思っています。
追記
プロモーションビデオの中で見事な腕前で斬りまくるサムライ役は、本物の日本刀の迫力を出すために居合抜きの達人に依頼したそうだ。新型カタナに託されたスズキの気合を是非感じ取ってほしい。
KATANA official promotional video : FEEL THE EDGE