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2018シーズン注目のニューモデルを斬る!その(9)都市型モビリティの新しい姿「ADIVA」

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
▲ADIVA AD1 200 画像出典元:Webikeバイクニュース

2018オンシーズンということで各メーカーから新型モデルが目白押しだが、その中で個人的に注目しているモデルについて紹介していきたいと思う。今回はジャパン・クオリティを目指す新生ADIVAの3輪スクーターである。

ある発明家の夢から始まった

ADIVAはイタリアの発明家、ニコラ・ポッジオが創業したブランドである。「バイクの楽しさと手軽さ、クルマの安全性と快適性を併せ持つ天候に左右されることがないモビリティ」という夢の実現に向けて、同氏が90年代初頭にコンセプトモデルを発表。ベネリとの共同開発などを経て、現在はフロント2輪、後輪1輪の3輪タイプのスクーターを主力に展開している。

クルマ的な発想で作られた3輪モビリティ

ADIVAが通常の2輪メーカーと異なるのは着想がバイクではないことだ。車体を傾けて曲がっていく姿はバイクに似ているが、フロント2輪を支えるサスペンションは4輪のダブルウィッシュボーンに似た独自の構造を持つ「インディペンデント・クワトロ・ウィッシュボーン・サスペンション」が採用されている。

段差を乗り越えるシーンでも、左右のホイールが別々に作動しながら路面をトレースしていく様子はまさに4輪スポーツカーのようだ。前後3輪130サイズのワイドタイヤによるコーナリング時の安定感はもちろんのこと、操舵と緩衝装置が独立しているため、ブレーキング時に前のめりになるピッチング動作が少ないのも特徴だ。

脱着式ルーフに大型トランクを装備

こうしたユニークな特徴を持つADIVAの最新作が、主にアジア市場をターゲットに開発された水冷4スト単気筒190ccのエンジンを搭載した、軽量コンパクトなスポーツモデルの「AD1 200」である。

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▲ADIVA「AD1 200」

前面をすっぽりと覆うフロントスクリーンは、左右にピラーが付いた4輪のフロントガラスのように大きく頑丈で、なんとウインドウォッシャー液が出てくるワイパーが2本も装備されている。スクリーンとひと続きになったルーフは取り外し可能で、天気の良い日はものの30秒でオープントップへと変更できるし、ルーフは折り畳んで車体後部の大型トランクへ収納できるなど発想がクルマ的なのだ。

ちなみにトランクはフルフェイスヘルメットが余裕で2個も収納できる大容量サイズとなっている。最近の大型スクーターはシート下スペースを確保するために足着き性が犠牲になっていることも多いが、その点ADIVAはシート下スペースを最小限としつつスリムな車体と低いシート高を実現。収納は大容量トランクへと割り切ることで、足着きの良さを優先している。

本格的なバックレストを装備したリヤシートの作りもクルマ的。洗練されたデザインセンスや高級感漂うディテールの作りはさすがイタリアンだ。

グローバル企業として新生したADIVA

一時期ADIVAにはキムコ製エンジンが使われていたため、台湾製というイメージが強かったが、現行モデルにはプジョー製エンジンが搭載されているのもポイントだ。今でこそ4輪で有名なプジョーは古くからスクーターを作り続けている老舗でもある。

そして、車体デザインから開発までを本家イタリアで行い、台湾その他のアジア各国で製造。この春から日本に本社を構えて「ジャパン・クオリティ」の品質管理を徹底しているという。まさにグローバル企業として新生したADIVAに注目したい。

ADIVAが目指すのは3輪バイクではなく、あくまでも便利で楽しく実用的な「モビリティ」だ。そのコンセプトを具現化したのが今の姿なのだ。

ADIVA AD1 200 in Studio

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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