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【PCXハイブリッド試乗速報】アクセルを開けた瞬間から速い!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
HONDA PCX HYBRID

ホンダのニューモデル、PCXハイブリッドの報道試乗会に参加してきました。

先に発売された新型PCX(125cc)をベースにエンジンと車体はほとんど変えずに、ACGスターターを動力として利用したハイブリッド仕様となっています。簡単に言うと、ガソリン車のPCXにモーターの駆動力がプラスされているのが特徴です。

出足の良さが違う

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まず見た目は新型PCXとほぼ同じです。深みのある紺色の専用カラーとブルーステッチのシート、HYBRIDのロゴが控えめに付いている程度で、落ち着いたシックな雰囲気です。

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試乗した感想ですが、まず驚いたのがスタート時の出足の良さ。アクセルを開けた瞬間から力強い加速で飛び出していきます。スタンダードのPCXに乗ったことがある人なら、誰でもその違いは分かるはず。電動モーターの特徴であるトルクの立ち上がりの俊敏さを実感できるものです。

モーターとエンジンのいいとこ取り

ガソリンエンジンは回転数を上げてはじめてパワーが出てくるのに対し、電動モーターは瞬間的に100%のトルクを出すことができます。PCXハイブリッドに搭載されているモーターはACGスターターを利用したものなので、たった1.9ps分の上乗せではありますが、最大トルクで見ると33%も向上しています。ゼロからの加速では大きな違いとなることは容易に想像できますよね。つまり、モーターに強みがある低中速域とエンジンに分がある中高速域の双方のメリットをうまく組み合わせたシステムなのです。

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▲ACGスターター兼アシストモーター(左:PCXハイブリッド/右:PCX125)

その加速フィールは体感的にPCX150と同等以上と思えました。7,000rpm以上になるとモーターによるアシストはなくなり、その後の加速はエンジン車と同じとなるため最終的には排気量が大きいほうが有利かとも思いますが、ハイブリッドの威力はこの初期加速にあると言えます。

コーナリングも楽しいメリハリ感

たとえば、街中で信号待ちからスタートするとき、小排気量でしかもCVT(遠心クラッチ付き無段変速機構)のスクーターの場合、力が足りずにフラついた経験があると思います。ハイブリッドではそこがモーターの力で補われていることに加え、クラッチインのタイミングもガソリン車より早められたことで、弾けるようにシャキッと発進できるわけです。

イメージ的には電動アシスト自転車の“こぎ出し”の力強さに近いかもしれません。それでいて、アシストモーターの駆動があまりにも自然なので、「これ、ハイブリッドですよ」と言われなければまったく分からないスムーズさです。

また、コーナリングの際にもアクセルオンとともにリニアにトルクが立ち上がってくれるため、旋回中の安定感が際立っています。交差点を曲がるような場面でも車体のメリハリが出て気持ち良さを感じることができました。

使い分けられる3つのモード

PCXハイブリッドにはパワーモードが搭載されていて、通常の「D」モードに対しより強力なアシスト力を発揮する「S」モード、そしてアイドルストップを解除する「アイドリング」という計3つのモードがあります。

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▲左スイッチボックスで切替操作

メーターにはアシスト力を表示するインジケーターがあるのですが、「S」モードにするとバーグラフの跳ね上がり方が鋭くなり、車体を前に押し出す力がより強力になるのを感じます。その分、バッテリー電力の消耗は激しくなりますが、よりハイブリッドらしさを感じたいなら「S」モードがおすすめでしょう。

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感心したのは減速時ではもちろん、クルーズ状態でも常に電力をチャージしていることです。インジケーターをチラ見しながら、エコ運転を心掛けることもできそうでした。

やや重くなったがメリットはそれ以上

ちなみにモーターに電力を供給しているのがシート下スペースの後ろ半分に搭載されている48Vのリチウムイオンバッテリーで、従来の鉛バッテリーは灯火類を中心にまかなっているそうです。

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▲シート下にバッテリーを搭載

リチウムイオンバッテリーの見本を単体で手に持ってみましたが、意外にもコンパクトで、ちょうど電動アシスト自転車と同程度のサイズ感です。単体重量は2.6kgで、トータル車重では補器類も合わせてガソリン車から約5kg増しの135kgとなっています。

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▲リチウムイオンバッテリーパック

また、定地燃費値はガソリン車よりリッター0.4km増しの55km/Lと、僅かながらも重量増を補って余りあるものであることが分かります。価格は車両本体で40万円とPCXからは8万円強高めではありますが、量産二輪車初のハイブリッドという先進性とパフォーマンス向上による走りの楽しさ、爽快感はプライス以上の価値もたらすものだと思いました。そして、今後のモーターサイクルにおけるハイブリッドの大きな可能性を感じた次第です。

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▲ホンダの「PCX HYBRID」開発チーム

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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