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2018シーズン注目のニューモデルを斬る!その(8)パラツインの逆襲「F750GS/F850GS」

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
▲F850GS 画像出典元:Webikeバイクニュース

2018オンシーズンということで各メーカーから新型モデルが目白押しだが、その中で個人的に注目しているモデルについて紹介していきたいと思う。今回はBMWからデビューする並列2気筒のアドベンチャーモデル「F750GS/F850GS」である。

BMWの屋台骨に成長したFシリーズ

Fシリーズは1993年に登場したF650を皮切りにデュアルパーパス色の強い水冷単気筒モデルを展開してきた。2006年には新開発の水冷並列2気筒を搭載するオンロードスポーツモデルのF800SやアドベンチャーモデルのF800GSが加わり、多彩なバリエーションを持つ新たなファミリーとして発展。今やRシリーズと並んでBMWを支えるミドルクラスの中核と言えるほどに成長した。

今回紹介する「F750GS/F850GS」は、昨年のEICMA2017(ミラノショー)で発表されたその最新モデルである。

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▲F850GS at EICMA2017

10年ぶりのフルモデルチェンジで全方位進化

「F750GS/F850GS」はプレミアム・ミドルクラスのトラベル・エンデューロという位置付けである。GSとはゲレンデ・シュポルト(グランド・スポーツ)の略。オンロードからオフロードに至る幅広いシチュエーションで高次元の運動性能を備えた、スポーティかつロングツーリングにも対応したモデルである。

今回、約10年ぶりのフルモデルチェンジに際してエンジンと車体を一新。全方位的に走行性能や快適性を高めた完全新設計モデルとしてのデビューとなる。

従来どおり2つのラインで構成され、ベーシックモデルのF750GSは低いシート高と扱いやすい出力特性、オールラウンド性能を兼ね備えるなど幅広いライダー層に向けたトラベル・エンデューロとして開発。一方のF850GSは、よりパワフルなエンジンと本格的なオフロード走行に適した車体と足まわりが与えられた上級版となっている。

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▲F750GS

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▲F850GS

注目すべきは逆回転270度パラツイン

今回の注目ポイントはやはりエンジンだろう。水冷並列2気筒DOHC4バルブの基本レイアウトこそ従来型を踏襲するが、排気量は798ccから853ccへと拡大され、クランク角も360度から270度に変更。最高出力もF850GSは85ps/7,500rpmから95ps/8,250rpm(F750GSは75ps/7,000rpmから77ps/7,500rpm)へと大幅にアップされている。

新型GSに採用されている270度パラツインというのは、実は現代のミドルクラスの主流となりつつあるレイアウトだ。シリンダーが縦に2本並んだ軽量スリムなコンパクトさに加え、Vツインのような鼓動感と路面をつかむトラクタブルな接地感がメリットと言われている。

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▲F750GS

例えば、新型GSのライバルとなるであろうKTM790アドベンチャーR(並列2気筒75度クランク)や、ヤマハの新型テネレ700(並列2気筒70度クランク)といった次世代のミドルアドベンチャーも同じようなエンジンを採用していることからもそれは明白だ。つまり、新型GSはより力強くトラクタブルな、いわばオフロード向きの動力性能が与えられていると察することができる。さらに、フューエルタンクが従来のシート下から通常の位置にレイアウトされたことでマス集中が図られていることが分かる。

また、今回から逆回転クランクが採用されているとのこと。一般的には減速時に発生するピッチングモーションを打ち消す作用があると言われ、BMWのテレレバーに代表される“フラットライド”的な姿勢安定効果を狙ったものなのかとも思うが、これがハンドリングにどう影響するかは推測の域を出ない。

BMWらしくミドルでも全部盛り

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▲F850GS

このようなエンジンを中心とした大幅なリファインに対応して、フレームも従来の鋼管トレリスタイプからより頑強なモノコック構造の鋼管ブリッジフレームへと一新。足まわりも新設計の倒立フォーク(F750GSは正立フォーク)、およびリンクレスタイプのモノショック&両持ち式アルミ製スイングアームが採用された。

また、電子制御も一層進化し、ABS、ASC(オートマチック・スタビリティ・コントロール)に加え、ライディングモードに「Rain」と「Road」を標準装備。加えてABS-ProとDTC(トラコン)、新たに「Dynamic」、「Enduro」、「Enduro Pro(F850GSのみ)」などを備えるプロ・ライディング・モード、そしてBMW十八番のダイナミックESA(電子調整式サスペンション)が工場装着オプションとして用意されている。

これ以外にも、キーレス始動やクラッチ握力を軽減した自己増幅式アンチ・ホッピング・クラッチ、LEDヘッドライト、6.5インチのフルカラーTFTディスプレイなどを装備。エクステリアもよりアグレッシブで現代的なフォルムが与えられている。エキゾーストの取り回しが従来とは逆で、車体の右側出しになっている点も見逃せないポイントだ。

ツアラーからガチな冒険スポーツへ

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▲F850GS

新型FシリーズGSはアドベンチャーという範疇にありながらも、軸足をツアラーからスポーツへと移しつつ能力を拡張したモデルと言えそうだ。前述した新世代ミドルアドベンチャー戦線における台風の目となることは間違いないだろう。その意味でも注目したいモデルである。

なお、気になる発売時期だが、欧米マーケットではすでにカタログに載っているが、日本への導入時期は今のところ未発表である。いずれにせよ、国内投入も時間の問題。アドベンチャーセグメントの開拓者であるGSの名を冠した最新モデルへの期待は大きい。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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