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2018シーズン注目のニューモデルを斬る!(6)冒険を現実にするか「KTM790アドベンチャー」

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
KTM 790 ADVENTURE R

2018オンシーズンということで各メーカーから新型モデルが目白押しだが、その中で個人的に注目しているモデルについて紹介していきたいと思う。今回は間もなくデビューが噂されているKTMの「790アドベンチャー」である。

KTM期待のミドルアドベンチャー

KTMと言えばオフロード。そして、ダカールラリー17連覇中という実績が示すように、オフロード界においては他の追従を許さぬ圧倒的なカリスマ性を持ったブランドと言っていいだろう。そのKTMが新たに開拓しようとしているミドルクラスの最新モデルが790アドベンチャーである。

2017年のEICMA(ミラノショー)でプロトタイプが初お披露目され、今春の東京モーターサイクルショーでもステージの真ん中に展示されるなど、KTMでもキモ入りのモデルであることは明らかだ。

エンジンは生まれながらオフ向き

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このマシンを読み解くキーワードはKTM初の並列2気筒エンジンである。今年5月に国内にも投入されたミドルネイキッド、790DUKE用に新たに開発された「LC8c」と呼ばれるユニットで、コンパクトを表す小文字のCが象徴するように非常に小さく軽く作られたエンジンである。

完全新設計の水冷並列2気筒DOHC4バルブ799ccエンジンは非常にスムーズな回転フィールで、それでいてガッツのある低中速トルクが持ち味。メリハリの効いた鼓動感とともに路面を引っ掻いて進んでいく。

75度位相クランクが生み出す独特のリズムはLC8系のVツインに近い感じだが、新設計の2軸バランサーのおかげで振動はほとんどなく滑らかなのだ。今年3月に国際試乗会が行われたカナリア諸島の荒れたアスファルトで790DUKEに初試乗したとき、既にダート向きのキャラであることが実感できた。

「丁度いい」感がポイント

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KTMは、1090/1290アドベンチャーという4機種のバリエーションをトップカテゴリーに揃えるが、その圧倒的なパフォーマンスと引き換えに、一方では乗り手を選ぶ部分もあるだろう。かといって、4スト単気筒の690エンデューロやそれ以下の競技用モデルがベースのマシンは普段使いにはマニアックすぎる。その意味では、790アドベンチャーは長距離ツーリングから本格的なダート遊びまで幅広い使い方ができてしまう「丁度いい」モデルになるはずだ。

また、電子制御も790DUKEから移植されるはずで、オフロード用にアレンジされたライディングモードにコーナリングABS、トラコンにMSR(エンジンブレーキコントロール)、アップ&ダウンシフター、そしてTFTフルカラーディスプレイなどの最新デバイスが与えられ、ライダーを快適にサポートしてくれるだろう。

790DUKEの試乗でも感じたが、扱いやすいパワーと軽量な車体がもたらすメリットは大きく、ビギナーには敷居が低くベテランにとっても操っている実感を得やすい。もちろん、プライス的にも値頃感が出るはずだ。

ダカールラリー王者マシンと互角の走り

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気になる量産市販モデルのデビュー時期だが、情報筋によると今年11月に開催されるEICMA2018で明らかにされるはずだ。すでにパッケージングとして完成されていることを考えれば、早ければ2019モデルとして年明けからデリバリーのアナウンスも期待できるかもしれない。

その証拠にKTMのオフィシャルPVでも本格的な走りを披露。ダカールラリーのチャンピオンマシン、450RALLYと互角に渡り合うアグレッシブな走りで、そのポテンシャルの高さを見せつけている。

■KTM 790 ADVENTURE R オフィシャル動画

冒険ツーリングを現実のものにしてくれるリアルアドベンチャーの誕生か。続報を楽しみにしたい。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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