サウジアラビアで女性の運転解禁 日本のバイク事情と重ねてみた
世界で唯一禁止されていた
先週、サウジアラビアで女性によるクルマの運転が解禁されたというニュースが世界を駆け巡った。私自身知らなかったが、世界で唯一女性の運転を禁じていた国なのだという。イスラム教による厳格な解釈がその背景にあるそうで、サウジアラビア国内でも改革の象徴として概ね歓迎ムードらしい。
新聞報道などによると、24日の解禁日を待って首都リヤドでも一斉にハンドルを握る女性ドライバーの姿が目についたそうだ。今後は600万人の女性が免許を取得すると予想され、女性の社会進出とともに経済の活性化にも大いに寄与するとみられている。
サウジアラビアでバイク教習も始まる
さらに関連ニュースを読み込んでいくと、サウジアラビア・モータースポーツ連盟の女性メンバーが、F1フランスGP決勝前のポール・リカールでF1マシンを初ドライブしたという話題も。もちろん本番レースではなく、サウジアラビアにおけるモータースポーツのPR活動の一環ではあるが急激な進展ぶりである。
また、すでに運転解禁を前にバイクの運転を目指す女性たちが民間のクローズドコースに集まり、ライディングの練習に汗を流している様子なども報道されていた。女性たちのインタビューでは「バイクに乗るのが子どものころから好きだった」とか「家族がオートバイに乗っているのを見て育った」などのコメントも。
日本製のバイクで練習しながら「上達して街中を走りたい」と語り、バイクに乗ることは「自由の象徴」と紹介されていたのが印象的だった。
女性ライダーは10人に1人
翻って日本における女性のバイクへの進出状況はどうだろう。平成29年の警察庁のデータによると、自動二輪免許の取得者数は概算で大型二輪は男性900万人に対して女性60万人。
同じく普通二輪で900万人に対して130万人、原付については1000万人に対して600万人ということで、二輪合計で男性2800万人に対して女性790万人と全体の2割強になっている。
その中で普通二輪から上のいわゆるスポーツモデルと呼ばれる実質250ccクラス以上となると1割弱に留まる。
二輪業界でよく言われる、「10人に1人」という女性ライダーの割合とも合致するが、肌感覚としてはもっと少ないように思う。
自分の周囲を見回してもみても、免許は取得したもののバイク購入にまで至っていない場合や、バイクに乗り始めても何らかの理由ですぐに降りてしまうケースも目立つなど、ペーパーライダーになってしまっている女性の割合が意外にも多い気がする。さておき、他のスポーツやレジャーに比べて女性の割合が極端に少ないのがバイクなのである。
女性にとってハードルが高い!?
その理由は何なのか?最も多い理由としては、「体力や体格的に乗りこなすのが難しい」ということが挙げられると思う。
教習所でなんとか免許までは取得したが、いざ自分で公道に乗り出してみると、狭い路地や坂道での取り回しやUターンなど男性でも難しい局面に出くわす。そして大排気量モデルになるほどそれは重くのしかかる。乗ってしまえば関係ないと言う人も多い「足着き」に関しても、ストップ&ゴーが繰り返される実際のストリートでは大いに関係する。
自分も体格は大柄なほうだが、それでも片足ツンツンになるビッグアドベンチャーモデルなどに乗っていると信号待ちの度に緊張するのでその気持ちは分かるつもりだ。乗りたいモデルがあっても足着きで断念したという女性ライダーの声もよく聞く。
電子デバイスが鍵になるかも
ということを踏まえると、女性ライダーをもっと増やすためにはバイクというハードそのものの開発コンセプトを再考すべきかもしれない。
今の世の中ではすべての人に優しいバリアフリーやストレスフリーの発想が求められている。女性のバイク進出を考えると、心理的にも体力的にも受け入れやすいプロダクトを開発する方向性も今後は有りかと思う。それは単に物理的な軽さやコンパクトさだけでなく、デバイスによる乗りやすさや安心感の付与もあると思う。
▲ホンダ Riding Assist-e
▲ヤマハ MOTOROiD
その意味でホンダやヤマハが先の東京モーターショーなどで発表した自立し自律するバイク、倒れないバイクのコンセプトなどは有望である。それは女性だけでなく、障害を持った人や高齢者へのハードルも下げることになると思う。もちろん、気軽に乗り回せるキュートなファンバイクももっと増えてほしい。
「女性が集まるところには男性も集まる」という法則を持ち出すまでもなく、女性ライダーのさらなる進出は、バイク業界やレジャー産業の発展にもつながるのだ。