急にブレーキが効かなくなる!? 故障や整備不良などのトラブルとどう付き合うか!?
急にブレーキが効かなくなる
先日、サーキットで開催したスクールでこんなことがあった。
ある参加者が困り顔で「何故か今日はブレーキの効きが悪いんですよ…」とのこと。最新スポーツモデルに乗っているベテランの方だ。早速試してみると、フロントブレーキのタッチがたしかに甘い。ブレーキレバーを握り込むと奥の方までグニュと入ってしまうのだ。
これは典型的な「エア噛み」の症状で、たまたまエア抜きツールを持っている人がいたので、これを使って対処するとタッチは元どおりに直り、その後の走行でも支障はなかった。
作業中にエアが混入したかも
よく聞くと、ショップで最近ブレーキパッドの交換をしてもらったらしいが、どうやら作業中にエアがブレーキラインのどこかに混入してしまったらしい。それ自体はよくあることだが、普通はちゃんとエア抜き作業をしていれば問題になることはない。
最近の油圧ディスクブレーキには、ブリーダーと呼ばれるエア抜き用のバルブがマスターシリンダー側とキャリパー側の両方に付いているが、そのバルブが緩んでいたりするとエアが入ってしまうことがある。
また、サーキット走行などでハードブレーキングを繰り返すとブレーキライン内に気泡が発生してレバーの握りが甘くなる、いわゆる“ベーパーロック現象”が起きることがあるが、今回はサーキット走行前だったので前者ということだろう。
原因が特定されて、その場で正常に機能を回復できたから良かったものの、よくわからないままサーキット走行を開始していたら大きなアク
シデントにつながったかもしれない。
プロでもミスする可能性はある
考えてみれば、こうした整備不良に起因するトラブルやアクシデントがもしかしたらよく発生しているのかもしれない。ただ、ここで問題になるのはショップで整備をしたにも関わらず、という点だ。自分でメンテナンスしたのであれば自己責任ということもあるだろう。でもそれが、本来は全幅の信頼を寄せていいはずのプロが作業ミスをしているのだ。
もちろん、機械的なトラブルである可能性も捨てきれないが、今回のケースでは明らかに整備不良と思われるものだった。プロに限ってそんなことはないと信じたいが、人は誰しも完璧ではない。バイクの整備は人の命を預かる仕事なので、関係者はいまいちど気持ちを引き締めていただけたらと思う。
自分でチェックする習慣を
それとともに自己防衛することも大事だ。人がやることだから、どんなに注意していてもミスはつきものだ。自分だって昔はマフラー交換を自前でやって走行中に脱落するなど、笑えない大失敗も経験している。ただ、それが原因で事故が起きてしまうと、本当に笑えなくなってしまうので、自分である程度はチェックする習慣をつけたほうがいい。
自分の場合、各メーカーのニューモデルに試乗する機会が多いが、まずいきなりは走らない。バイクの周囲をぐるりとゆっくり一周しながら、各部をじっくり見ていく。それはどんなパーツで、どんな機構になっているのかを確認するためでもあるが、同時に取り付けなどに不具合がないかチェックしていることが多い。取り付けなどで気になる部分があったら、手で揺らしてみたりもする。
特に注意して見ているのがブレーキ関係などの足まわりだ。極端なことを言うと、エンジンは不調でも構わないがブレーキが効かないとまさに命取りになってしまう。具体的にはキャリパーを取り付けているボルトやパッドピンが脱落したり緩んでいないか、ブレーキホースのフィッティングなどからフルードが漏れたりしていないかなど。
以前、アルミ製のフィッティングに亀裂が入って、そこからフルードがぽたぽたと垂れていたことが実際にあったので要注意だ。
最低限ブレーキまわりは確認したい
「ネンオシャチエブクトウバシメ」という運行前点検の基本項目を表した標語もあるが、毎回そこまでしなくてもせめて「ブレーキまわり」ぐらいは自分でチェックしておきたい。そして、走り出す前には何回かブレーキレバーをポンピングして、握りのタッチを確認してからスタートしよう。
走行開始直後もブレーキやサスペンション、タイヤの感触を得るために、最初はゆっくりと走りながら穏やかに加速と減速を繰り返しながら、自分とマシンを慣らすようにしているし、何かおかしいなと思ったら一度停めて納得できる答えを探すようにしている。
そういう意味では、バイクの状態をセルフチェックする作業というのは、マシンとの対話でもあるのだ。安心してバイクと付き合うためにも、それぐらいはやっておきたいものだ。