2018シーズン注目のニューモデルを斬る!その(1)「X-ADV」が提案する新たな2輪ライフ
2018オンシーズンということで各メーカーから新型モデルが目白押しだが、その中で個人的に注目しているモデルについて何回かに分けて語りたいと思う。そのひとつが今回マイナーチェンジした「X-ADV」である。
アドベンチャーとコミューターの融合
X-ADVはちょうど1年前の2017年春に、ホンダがアドベンチャーモデルの新たな提案として登場させたブランニューモデルである。
NC750系でも扱いやすさと力強い低中速トルクで定評のある、水冷4ストOHC4バルブ並列2気筒745ccエンジンにDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を組み合わせ、アドベンチャーモデルの力強さとコミューターの利便性を高次元で融合させているのが特徴だ。
マイチェンでオフロード性能を強化
今回の仕様変更では、Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)が2段階に加えOFFも選択が可能になったこと。また、アクセル操作に対する駆動力をダイレクトに後輪へ伝達するGスイッチを新採用するなど、オフロード走行時のコントロール性が一層高められているのがポイント。いわば、乗り味の点でさらにアドベンチャーテイストが濃くなったわけだ。
ワクワクの中にリッチ感もある
X-ADVのスタイリングは独特だ。マスが集中した塊感のあるボディに足の長い前後サスペンションを組み合わせることでアドベンチャーテイストを強調しつつ、シート前側からも跨げる乗り降りしやすい形状やフルフェイスが収納できるシート下ラゲッジスペースを確保するなど、スクーター的な日常使いも兼ね備えたまさにハイブリッド感覚のモーターサイクルと言える。
また、オールLEDの灯火類やスマートキーシステムなど先進性をアピールするとともに、ハイマウントタイプのフル液晶多機能メーターに5段階調整式ウインドスクリーンを装備するなど、ラリーマシンに乗っているようなワクワク感のあるコックピット演出も見事。遊び心の中にも、いろいろなバイクを乗り継いできた大人のライダーを満足させられるガジェットを散りばめている点も注目に値する。
普通の人を冒険へといざなう
X-ADVは開発コンセプトとして「アクティブな心躍る気持ちで、どこへでも行ける」を掲げている。平日は都会をスマートに移動し、休日は日常を離れて冒険へ旅立とう、と遊び心あふれるモーターサイクルライフを提案したモデルだ。それは、今まであまりアドベンチャーモデルなどと接点がなかったユーザーへの呼びかけでもあったと思う。
アドベンチャーというコンセプト自体はすでに特別なものではないが、それが一般ユーザー目線であったのが新しい点だろう。本気で山野に分け入り砂漠を走るような冒険ツーリングに出かけたいなら、CRF1000Lアフリカツインをはじめとした巨大アドベンチャーツアラーを選べばいいだろう。だが実際のところ、その手のモデルを乗り回すには相応の体格と体力とテクニックが求められる。もちろん、コストも。つまり、憧れはあっても現実としてはなかなか敷居が高いのである。
敷居は下げても走りは本格的
特に大きな問題となるのがシート高だろう。ちなみにアフリカツインは870mm(ローポジション:850mm)、クロスオーバースタイルのVFR800Xでも835mm(ローポジション:815mm)となっているのに対し、X-ADVは790mmとミドルネイキッド並みに抑えられている。
もちろん、スクータータイプの宿命としてタンクや収納スペースの関係でシート幅は広くなっているが、それでも専用設計の低重心シャーシによる安心感は大きい。そして、倒立フォークとプロアームの前後サスペンションにクロスワイヤースポークホイールという、本格的なオフ仕様の足まわりを備えていて、なんとブレーキユニットに関しては、まんまアフリカツインと共通である。
都会での日常から一気にアウトドアへ
X-ADVの従来型に試乗したことがあるが、DCTによるイージーな乗り心地と快適性はもちろんのこと、ちょっとした林道ぐらいなら臆せずに入っていける走破性も見せつけてくれた。それが今回のマイチェンでさらにダートが楽しくなっているだろう。
普段はメガスクーターのように通勤からビジネスまでこなしつつ、思い立ったら高速道路を使ったロングツーリングの先にある湖畔の山小屋まで一気に足を伸ばしてみる。そんな夢もきっと実現してくれる、日常と非日常を近づけてくれるマシンだ。