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最初のバイクは何がいいのか!? いきなり大型で失敗するパターンとは……

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

先日、ある方から「大型二輪免許を取ったのでスポーツバイクを買いたいが何がおすすめでしょうか?」と問われたことがあった。

聞くと、バイクは初めてだが4輪ではサーキットなども走ったことがあるとかで少し腕に自信があるようだ。

今は教習所で大型二輪免許が取れるようになり、公道走行の経験を経ずしていきなり大型バイクで公道デビューするライダーも少なくない。

ただ、その免許は公道を走ってもいいという許可証であって、免許皆伝という意味ではない。昔はこうだった……なんて説教臭い話をするつもりはない。

ただ、安全に末長くバイクライフを楽しむためのアドバイスとして聞いてほしい。

最初は中古車でも十分ではないか

私はこうお答えした。「最初は中古でもいいので250ccクラスのスポーツモデルを買って、街乗りやツーリング、サーキット走行などいろいろなシチュエーションを体験したほうがいい。その上で、自分がどういうライダーになりたいのか、どんなバイクライフを歩みたいのか方向性が見えてきてから、好きな大型バイクを選べばいいと思います」と。

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「最初は中古でもいい」と言ったのは、バイクに乗れば必ず転倒するからだ。転倒といってもいろいろあるが、まずは“立ちゴケ”の洗礼を受けるだろう。

自慢にもならないが、自分もこれまでの人生で何度もコケてきた。Uターンを曲がり切れずフロントブレーキを握ったらエンストしてそのままガッシャン、などバイク歴が長い人ならいくらでも経験があるはずだ。ライダーはそういう失敗体験を積み重ねて、転ぶパターンとそれを避ける方法を学習していく。

そういう意味でコケるのは悪いことではない。失敗は成功の母なのだ。その経験値がないと、加減が分からずいきなり大きなミスをすることになりかねない。

新車メーカーは怪訝な顔をするかもしれないが、これから大きく羽ばたくための学習用バイクとしては中古でもいいんじゃない、という意味だ。

通過点としては250ccがおすすめ

「250ccクラスのスポーツモデル」を勧めたのは、バイクのことを学ぶのに最適な素材だから。どんなモデルを選ぶのもそれは個人の自由だ。

ただ、いきなり大型バイクというのはいろいろな意味でリスクが高い。大型バイクは4輪でいえば高性能スポーツカーのようなものだ。

最高出力は100馬力以上、車重も200kg以上はざらだし、値段も高い。それでいて自立さえできないし、自動ブレーキもない。操るには気力、体力、スキルが必要だ。

それに引きかえ、250ccクラスであればパワー的にも車格的にも無理がなく、本当の意味で人間の身体能力で辛うじてコントロール可能な乗り物だと思う。

ネイキッドでもカウル付きでもいいので、ミッション付きのスポーツモデルが良い。アクセルやブレーキ、シフトチェンジなどの基本操作や、大型バイクを操るための体重移動やバランス補正などの身体感覚も覚えられる。

つまり、大型バイクへの通過点として最初に乗るには丁度いい選択ということだ。原付クラスからデビューするのも悪くはないが、そこまで小さくなると同じバイクでも性能やサイズ感も違い過ぎてかえって戸惑うこともある。

普段から大型バイクに乗っている人が通勤用として原付を増車するなら問題ないが、その逆は難しい。小は大を兼ねないからだ。

バイクを本当に楽しむには経験値が大事

「いろいろなシチュエーションを体験すること」をお勧めするのは、経験値を増やしてほしいからだ。

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通勤・通学でも毎日乗っている人はそれなりに街乗りスキルが磨かれるし、長年ツーリングに親しんだライダーは土地勘やいろいろなサバイバルテクニックを持っている。

サーキット走行を経験すれば、速度によってバイクがいかに止まれず曲がらなくなるのか身をもって理解できるはずだ。

ライダーとしてできるだけ幅広い経験を積むことで安全マージンも確実に高まるし、バイクという乗り物への洞察と奥深い楽しさを知ることになる。

焦ってムリをする必要はない。時間をかけてじっくりと付き合うことで、バイクの良い点や悪い点、スタイルやエンジンや乗り味の好みなども自分自身で分かってくるだろう。そこからが本番だ。

運命の一台に出会うために

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ピカピカの大型スポーツバイクを新車で買ったはいいが、いきなりカウルを割ったりタンクが凹んだりするのを見るのはとても辛いことだ。心と体とサイフが同時に痛む三重苦のショックは相当なもので、それが原因でバイクを降りてしまう人もいるほど。

また、デザインに一目惚れして手に入れたモデルでも、乗ってみると自分のイメージとはだいぶ違っていたということもありがちだ。

恋愛と同じで、運命の一台に出会うためにはそれなりの経験を積んで目を肥やす必要があるだろうし、そのバイクに見合ったライダーとしての品格も必要と思う。

誤解がないよう繰り返すが、人は誰でも好きなモノを買う権利があるわけで、それを否定するつもりはさらさらない。ただ、最初のバイクから頂上を狙うというのは、やはりどう考えてもムリがある気がするのだ。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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