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【東京モーターショー2017】 今年の2輪のキーワードは「ネオクラシック」だ!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
第45回東京モーターショー2017

10月25日(一般公開:10月28日(土)~11月5日(日))から始まる東京モーターショーを目前に控え、各メーカーの動きが慌ただしくなってきた。今回も個性あふれる様々なニューモデルが発表されることだろう。

その中で今年の注目モデルの動向を探ってみると、ひとつのメインストリームが見えてくる。

キーワードは「ネオクラシック」だ。

懐かしいスタイルを持った現代のマシン

「ネオクラシック」とは昔風のスタイルを持ちながら、中身は現代技術で作られたモデルのこと。

ただその解釈は幅広く、エンジンや車体は現代のモデルをベースにしつつ、外観にかつての名車の雰囲気を再現したもの(ホンダ・CB1100やカワサキ・W800など)や、メカニズム自体が何十年も前からほぼ変わらないタイプ(モトグッツィ・V7シリーズやロイヤルエンフィールドなど)、60~70年代の古き良き時代のトレンドを現代的に解釈したもの(トライアンフ・ボンネビルシリーズなど)など様々である。

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▲HONDA CB1100RS

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▲Moto Guzzi V7III Stone

ここ数年高まりを見せている「スクランブラ―」や「カフェレーサー」、「ボバー」といったカテゴリーも、元をただせば過去に流行ったトレンドの再燃であり、その意味ではネオクラシックの一派として捉えることができるだろう。

ネイキッドは日本のネオクラシック

また、90年代に一世を風靡したネイキッドモデルも、かつて世界を席巻したホンダ「CB」やカワサキ「Z」、ヤマハ「XJ」やスズキ「GS」といった、国産フラッグシップモデルへの憧憬から始まったリブートモデルとして誕生した。

剥き出しの直4エンジンにあえてカウルを持たず、バーハンドルや2本ショックにこだわった独自のスタイルは、当初海外からは”オールドスタイル”と揶揄されたが、次第にファン層を広げ、「ジャパニーズ・スタンダード」として世界で認められる存在となった。

今では、日本発の”ネイキッド”という呼び名が海外メディアでも定着しているのはその証と言えよう。国産ネイキッドはその時代におけるネオクラシックだったわけだ。

注目の筆頭株はやはりZ900RS

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▲【ヤングマシン予想CG】KAWASAKI Z900RS | 発表日:10月25日

さておき、ここにきて東京モーターショーで発表される、あるいは発表が予想されているモデルの情報が集まり始めているが、やはりネオクラシック関連の話題が多いようだ。

中でも一番の注目は何といってもカワサキのZ900RSだろう。周知のとおり往年の名車、Z1のイメージをそのまま現代に蘇らせたネオクラシックだ。

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▲KAWASAKI Z1 (900SUPER4)

ベースモデルは現行のZ900であることが濃厚で、スペック的にもほぼ同じであるとすれば、125馬力を発揮する最新のパワフルな水冷並列4気筒を軽量なスチール鋼管トレリスフレームに搭載し、倒立フォークとモノショックが与えられた軽快な走りのロードスターになるはずだ。

先頃カワサキからティーザー動画がアップされたが、チラッと映ったシルエットからは正統派ネイキッドの姿が想像できる。

XSR700が満を持していよいよ国内投入

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▲YAMAHA XSR700

もうひとつの注目は、先日ヤマハから国内仕様の発売が発表されたばかりのXSR700だ。

MT-07がベースのネオクラシックで、すでに欧州では発売されているが、なぜか国内では待ったがかかっていたモデル。日本で先行発売されたMT-09ベースのXSR900同様、ベースは最新マシンなので走りの性能や信頼性は折り紙つき。

とりわけMT-07は、水冷並列2気筒のトルクフルで扱いやすいエンジン特性と軽量コンパクトな車体によって、街乗りからワインディングまでスポーティな走りを楽しめるモデルとなっている。

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▲YAMAHA MT-07 ABS

その素性の良さを生かした、クラシカルでどこか未来的な雰囲気も持ったモデルとして、一躍人気の的となることは間違いないはずだ。

SV650にカフェレーサー仕様が登場

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▲SV650X

そして、スズキが正式に発表しているSV650Xにも期待が膨らむ。

2016年モーターサイクルショーで注目を集めた「SV650ラリーコンセプト」の進化形で、水冷90度V型2気筒エンジンを搭載する現行SV650 ABSがベース。

シンプルな外観と装備の中に、スズキ一流の「走る、曲がる、止まる」を突き詰めた質実剛健なSV650は、操る楽しさに満ちたモデルで、ビギナーには敷居が低くベテランには奥深い魅力がある。

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▲SUZUKI SV650 ABS

そもそもSV650は、最近の国産では珍しいV型エンジンを採用するなど、テイスティな路線も狙える逸材だ。

案の定、Xはただのカウル付きモデルではなく、ビキニカウルとセパレートハンドルを装着し、タックロールのシートを採用するなど、カフェレーサー的なアプローチをしてきた。新しさと懐かしさが渾然一体となった独自のデザインが目を惹く。

トレンドは時代を映す鏡だ。ユーザーの高鳴る期待と作り手の熱い思いがぶつかり合って、化学反応が起きる瞬間を目にしたい。

東京モーターショーの開幕が楽しみである。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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