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新型「V-Strom650/1000」が国内デビュー 質実剛健で人気のアルペンマスターがさらに進化

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
SUZUKI V-Strom1000

本場欧州で認められたロングセラーモデル

スズキから新型「V-Strom」シリーズが登場。「V-Strom 650」シリーズを5月30日より、「V-Strom 1000」シリーズを6月26日より発売することがアナウンスされた。

Vストロームシリーズは高速道路や山岳路を含む長距離ツーリングを快適に楽しめるスポーツアドベンチャーツアラーとして初代1000ccモデル(DL1000)が2002年に登場。当時のVツインスポーツモデル、TL1000の水冷V型2気筒エンジンを流用したパワフルな走りで欧州を中心に人気を博したモデルである。

そのスケールダウン版としての650ccモデルも翌年2003年から投入され、扱いやすいパワーと素直なハンドリングで幅広い層から支持されるロングセラーモデルとなった。

その後、2012年にはフルチェンジした新型650が国内にも投入、2014年には同じく排気量拡大やABS、トラコン搭載など大幅な変更を行った新型1000も投入され現在に至っている。

新型はスポークホイールを追加し電制が進化

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そして今回、「V-Strom」シリーズは再び全面改良が施され装備をグレードアップ、デザインも見直されシリーズでの共通イメージ化が図られた。

具体的には650cc版の「V-Strom 650 ABS」は新たにトラクションコントロールを採用し、ワイヤースポークホイール仕様の「V-Strom 650XT ABS」はナックルカバーとアンダーカウルを標準装備。

1000cc版の「V-Strom 1000 ABS」には制動時の姿勢を安定させる「モーショントラック・ブレーキシステム」を新採用し、新たにワイヤースポークホイール仕様の「V-Strom 1000XT ABS」を追加設定。合わせて2つの排気量から4モデルがラインナップされることになった。

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スクリーンやガード類を充実し快適性アップ

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シリーズ共通の装備としては、高さを3段階に調整できる大型可変ウインドスクリーンを従来モデルよりも高く(650cc:+9mm、1000cc:+49mm)し、1000cc版は角度調整も可能とすることで快適性を向上。

燃料タンクはより長い航続距離を実現する大容量20Lを確保し、12Vのアクセサリーソケットを650ccモデルにも新採用。防風・防雨効果により長距離や寒冷時における快適性を向上するナックルカバーをアンダーカウルと合わせて標準装備(「V-Strom 650 ABS」を除く)とした。

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SV650譲りの低速アシスト機構を投入

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さらに2段階から選択可能な「トラクションコントロール」を650ccモデルにも新採用するなど安全性を向上。

ワンプッシュするだけでエンジンが始動する「スズキイージースタートシステム」や、発進時や低回転走行時にエンジン回転数をわずかに上げる「ローRPMアシスト」を採用するなど利便性も高められている。

これらのシステムは昨年発売されたSV650にも採用されたもので、特にローRPMアシストに関してはUターンなどの低速バランス系で絶大な効果を発揮してくれる。こと大柄かつシートが高めのアドベンチャーツアラーにとっては大きなメリットとなるはずだ。

「1000」はコーナリングABS+前後連動ブレーキを装備

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また、1000ccモデルに関してはIMU(慣性計測装置)の搭載によりコーナリング中のブレーキングでもバンク角に応じたABSを作動させる仕組みや、フロントブレーキをある程度以上強くかけると自動的にリヤブレーキにも効力を配分し、車体を安定させる「モーショントラック・ブレーキシステム」も新たに採用されるなど、より高度な制御システムが導入されている。

こちらはコーナリングABSに前後連動ブレーキを組み合わせたようなシステムであり、大幅に安全性を高めたと考えていいだろう。

手頃で堅実なミドルアドベンチャーツアラーに期待

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このように長い年月をかけて熟成されてきたVストロームシリーズは、前述のように国内は元より海外で高い評価を受けてきたモデルである。山岳路ツーリングの本場、欧州でも“アルペンマスター”の異名をとるなど、質実剛健な作りと信頼性の高さは折り紙付きだ。

筆者も数年前に欧州をツーリングしたときには、リヤシートに荷物を満載したり、タンデムで長旅を楽しむVストロームの姿をよく見かけたものだ。特に650は税金が安く価格もリーズナブルということもあり、幅広いユーザー層に人気があるようだ。

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オーバーリッタークラスの高性能マルチツアラーや巨大アドベンチャーモデルも目立つが、やはり現地でもプレミアムな存在ということで、庶民感覚としてはVストロームのような堅実なミドルクラスが大勢を占めているように思えた。私自身、従来型には何回か試乗しているが、乗り手を裏切らない“素性の良さ”が印象に残っている。

それから数年が経ち、最新の電子制御テクノロジーによってさらに扱いやすさと安全性を高めたVストローム。国内でもさらなる人気の高まりに期待したい。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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