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郵便配達バイクがいよいよ電動化!? ホンダと日本郵便がインフラ整備へ向けて協力

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
半世紀にわたる郵便配達バイクの歴史が変わろうとしている

日本郵便とホンダは、約半世紀にわたり郵便配達用二輪車の開発・運用で協力してきた。

“郵政カブ”の愛称で親しまれた「ホンダMD90 郵政機動車」は、スーパーカブをベースに専用に設計されたモデルで、1971年に初めて郵便局に配備されて以来、日本全国を走り続けてきた。

その歴史が変わろうとしている。

郵政カブ電動化へ向け4つの指針を打ち出す

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日本郵便とホンダは、現行の二輪車に替わる電動二輪車を用いた郵便配達の、「社会インフラ整備」に向けた協業の検討を開始した。

近年、地球環境への意識が高まる中、電動二輪車の導入や郵便局での充電ステーションの実証実験を行い、持続的な地球環境への貢献を行う社会インフラの整備に向けた協議を進めていく。

今回の協業に向けた新たな取り組みとしては、以下の4つが柱となる。

1 ホンダの開発する電動二輪車を用いた実証実験を行うことにより、郵便配達業務への電動二輪車導入の可能性を検討する。

2 郵便局への充電ステーションの導入により、将来的には郵便局がより利便性の高い「人々の集う場所」として地域に貢献できる存在となることを目指す。

3 ホンダが開発した、スマホやタブレット端末の位置情報を活用した業務支援システム「Honda Biz LINCを導入することで、より効率的で安全な運用を目指す。

4 郵便配達用二輪車の保守体制を全国で強化することで、郵便事業の永続的なユニバーサルサービス(公共的なサービス)の確保を目指す。

モビリティを通じたスマート社会の実現へ

▲2015年モーターサイクルショーで出展された「電動カブ EV-CUB」
▲2015年モーターサイクルショーで出展された「電動カブ EV-CUB」

遡れば、ホンダは2016年2月に行われた社長会見の中で、2輪・4輪における「電動化技術」を大きな柱とすることを発表していた。

その中には、モビリティを通じてエネルギー社会を支えていくことを目指し、スマート水素ステーションの開発など持続可能なスマートコミュニティ社会の実現にも取り組んでいく主旨も盛り込まれていた。

そして、2輪における近い将来の開発の目玉として、2015年のモーターショーで発表された「EV-CUB Concept」をベースとした量産モデル、「EV-CUB」を2018年目途に日本で市販することも同時に発表されたことは記憶に新しい。

また、カブシリーズの最大市場であるASEAN主要国への導入についても計画され、ユーザーの生活に根付いたCUBブランドによるEVの普及とCO2削減を目指すことも合わせて行なっていくことがアナウンスされた。

▼2016年2月に発表された「電動カブ EV-CUB(イーブイ・カブ)」

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郵政カブによって一気に進む電動インフラ整備

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つまり、郵便発達用電動バイクの下地はすでに出来上がっていると考えていいだろう。

2018年から市販化予定の「EV-CUB」をベースとした“EV郵政カブ”が先行して実用性や耐久性の実地テストを行ってくれるとすれば、一般用としてリリースされた際には誰もが安心して乗れる、より信頼性の高いモデルになっていることだろう。

と、同時に郵便局という地域の住民なら誰でも知っている拠点が充電ステーションとなることで利便性も向上するし、従来の郵政カブ同様に全国のホンダのショップで保守・整備してもらえるとなれば、ユーザーにとっても大きな安心感となるはずだ。

加えて、地域を知り尽くした配達のプロのよるナビゲーションのノウハウの蓄積は、今後のアプリ開発にも役立てられるに違いない。

ホンダとしては、二輪の電動化の前に長年立ち塞がっていた「充電」や「メンテ」などの問題をEV郵政カブによってクリアにし、一気に電動化へのインフラを整えようとしているように見える。

近い将来、4スト単気筒の力強い鼓動とロータリー式ミッションの「ガシャコン」という音が耳に懐かしい時代が来るのだろうか。

電動化の波がいよいよ二輪にも訪れようとしている。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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