Yahoo!ニュース

ヤマハが新型コンセプトモデル「T7」を発表!ミドルアドベンチャー時代の幕開けか!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
YAMAHA T7

9月に開催されたドイツ・インターモト(ケルンショー)に続く世界的モーターサイクル見本市の第2弾として、今年もEICMA2016(ミラノショー、一般公開:11月10日~11月13日)が開催されました。

各メーカーから2017年モデルを中心に、近々製品化されるであろうコンセプトモデルや参考出品車なども多数発表されるなど、世界の2輪動向を占う上でもキーとなるショーです。

今回注目したい アドベンチャーモデルの動き

YAMAHA T7
YAMAHA T7

今回の目玉のひとつと言えるのが、ヤマハから発表されたコンセプトモデル「T7」でしょう。ロードスポーツモデルの「MT-07」系の並列2気筒エンジンを搭載したミドルクラスのエンデューロモデルのようです。今回こうしたモデルが登場してきた背景を探るために、まずは最近のオフロード系モデルの流れについておさらいしておきたいと思います。

近年、このジャンルは世界的な人気となっています。中でもアドベンチャーツアラーと呼ばれる大型ツーリングモデルは、高出力の大排気量エンジンと頑丈で荷物の積載性に優れる車体、ウインドプロテクションに優れるデザインと不整地をものともしないロングストロークの足回りが与えられ、ラフロードを含む高速連続走行を快適にこなせるのが特徴です。

画像

特に最新モデルではトラクションコントロールやコーナリングABS、電子制御サスペンションなどの電子デバイスをフル装備し、安全性も格段に高められています。代表的な機種としては、BMW・R1200GSやドゥカティ・ムルティストラーダ1200エンデューロ、トライアンフ・タイガーエクスプローラー、KTM・1290スーパーアドベンチャーなどが挙げられるでしょう。

「望むなら世界の果てまでも行ける」まさに究極の全方位的性能が与えられた夢のスーパーマシンと言えます。

既成概念を変えた新型アフリカツイン

ただ、それだけに車格は巨大で重量もあり、プライス的も高価になってしまうことも事実です。性能面でも、ことに日本の道路環境や日本人の体格を考えると、ややオーバースペックというか、使いこなせるライダーや場所は限られるでしょう。

私も個人的に「もう少しコンパクトで軽量なアドベンチャーモデルがあったらいいのになぁ」と思っていましたが、そんな矢先に今春登場したのがホンダの新型アフリカツインでした。

CRF1000L Africa Twin
CRF1000L Africa Twin

排気量はライバルよりやや小さめの1000ccで車体もひと回りスリム。オートマチック・トランスミッションの一種であるDCTを採用することで、クラッチ&シフト操作からライダーを開放することで、オンロードではもちろんオフロードでも抜群の扱いやすさを実現しました。

以前レポートしましたが、新型アフリカツインのメディア試乗会はなんとモトクロスコースで開催され、私もその走破性の高さ(しかもイージー)に驚かされた記憶があります。と同時にさらにもし600ccぐらいのミドルクラスのアドベンチャーモデルがあったら、それはどんなに自在に楽しめるたろう、という思いに駆られたのでした。

33年ぶりにXT660テネレが復活

さて、EICMA2016に話を戻すと、その願いを叶えてくれそうなモデルが今回リストアップされています。

ヤマハからコンセプトモデルとして今回出品されている「T7」は、MT-07の並列2気筒エンジンを新設計のシャーシに搭載するミドルクラスのエンデューロマシンのようです。

YAMAHA T7
YAMAHA T7

海外メディアなどでは「33年ぶりにXT660テネレが復活!」とのコメントが出るなど、注目度の高さが分かります。ちなみにXT660テネレとは、80年代のバリ・ダカールラリーで活躍したヤマハファクトリー製ラリーマシンのレプリカとして人気を博したモデルです。

今回の「T7」はクロスプレーン・コンセプトに基づく並列2気筒ユニットを採用しているところがキモでしょう。純粋なエンデューロモデルやダカール・ラリーのレギュレーションで規定されている単気筒ではないことから、より幅広い用途や楽しみ方も想定したファンデューロモデルか、あるいは仕様によっては軽量・コンパクトを武器にしたミドルクラスのアドベンチャーモデルとしての登場も期待できそうです。

画像
画像
画像
画像

ちなみにスペックは最高出力74psに車重18Kg。軽量アルミ製タンクにカヤバ製サスペンション、前後21/18インチの大径クロススポークホイール、LEDヘッドランプ、アクラポビッチ製エキゾーストを装備。ダカール・ラリーでも活躍中のWR450F譲りのスタイリングからも本気の走りが想像できます。

詳しい情報がないので限られた資料から予想するしかなく、画像を見る限り保安部品も無いことから現段階では市販予定について語ることはできませんが、エンジンは完成度の高い「MT-07」用がすでに存在し、WR450Fで実績のあるシャーシなど骨格となるベースもあるため、かなり現実味のあるモデルと見ていいでしょう。ぜひ公道仕様の量産モデルとして発売して欲しいところです。

続々と発表される、小排気量のアドベンチャーモデル

また、ホンダからは「CRF250RALLY」が発表され、スズキからは「Vストローム250」、カワサキからは「ヴェルシス300」、BMWからは「G310GS」と小排気量のアドベンチャーモデルといえるカテゴリーに新型車両が多くお目見えしました。

これらは日本人にとっても扱いやすいジャストサイズならではの楽しみ方や、250クラスの維持のしやすさなど、購入を後押しするような魅力を持ったモデルと言えます。

当然250ccのクラスはアジアもにらんだグローバルモデルであり、今後もこの「アドベンチャー」カテゴリーに注目です。そして、もちろん日本への導入についても期待が高まります。

ホンダ CRF250RALLY
ホンダ CRF250RALLY
スズキ Vストローム250
スズキ Vストローム250
 カワサキ ヴェルシス300
カワサキ ヴェルシス300
BMW G310GS
BMW G310GS

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

佐川健太郎の最近の記事