【攻勢に出るKAWASAKI】カワサキがブランド価値を高めた「専門店」を120店に拡大!
国内二輪販売網再編へ
川崎重工グループの2輪販売部門であるカワサキモータースジャパンは、2017年度よりモーターサイクルの国内販売網の再編を行うことを発表。全国にある「カワサキ専門店」を現状の6店舗から120店舗程度に拡大する予定となっている。
メーカーリリースによると、2017年度から2019年度にかけて国内販売モデルのすべてを取り扱う「カワサキ専門店」と、排気量400ccまでの製品を取り扱う「カワサキ正規取扱店」の2系統の国内販売網を構築するとのこと。その狙いを「他社と一線を画した生涯顧客の獲得拡大を目指すブランド戦略を一層推進するため」としている。
狙いはKAWASAKIブランドの強化
カワサキ製モーターサイクルのこれまでの販売網は、直営の「カワサキ専門店」と、他社製品も扱う「カワサキ正規取扱店」で構成されていた。いずれの販売店でもすべてのモデルを取り扱ってきたが、今回の再編により、両者の取り扱いモデルを明確化するとともに、「カワサキ専門店」では直営以外の販売店も加えるかたちで、店舗数を現状の6店舗から20倍程度にまで拡大する計画を打ち出した。新たな専門店はカワサキのイメージを強く印象付けるカラーや外観が与えられるという。
国内2輪車市場における年間販売台数は、1982年の320万台をピークに現在の40万台強へと全盛期の約8分の1程度にまで減少している。ただ、一方で軽・小型二輪車市場ではここ数年、回復基調にあることから、カワサキが得意とする中・大排気量モデルの販売力強化により、一気に攻勢に出るものと見られる。
得意の大排気量モデルで差別化
簡単にいうと、今後、カワサキ製大型バイクは「カワサキ専門店」でしか売らない(買えない)ということだ。これにより、ライダーの間では昔から漠然と語られてきた”ビッグバイクのKAWASAKI”のイメージ定着と、ブランドバリューの一層の向上を図るのが狙いだろう。
最近でこそ、小排気量モデルも少しずつラインナップを増やしているカワサキだが、やはり稼ぎ頭は得意の大排気量モデルであることに変わりない。
ちなみにカワサキ以外の国産2輪メーカーとしては、ホンダが「ドリーム」、ヤマハが「YSP」、スズキが「スズキワールド」などの専門店や直営店をすでに全国に展開している。これに対し、カワサキは直営店である「カワサキプラザ」が全国6カ所(仙台、東京、静岡、大阪、岡山、福岡)に点在するのみで、専門店としてのプレゼンスを十分発揮できていたとは言い難い。
ほとんどが中・大排気量モデルという、他メーカーとは異なる製品構成ではあるものの、総販売台数で他の3メーカーに大きく水を空けられているという事実は、エンドユーザーとの直接点となる「店舗」の不足と無縁とは言えないだろう。
とはいえ、既存の直営方式では急激な店舗数の拡大は容易ではない。そこで、既存のカワサキ系有力店を取り込むかたちで一気に「カワサキ専門店」の看板を増やし、販売とアフターセールスの面でもスケールメリットを出していく。そして、排気量400ccまでの普及モデルについては、他メーカーも扱う「カワサキ正規取扱店」、つまり従来どおりの併売店でカバーする目算だろう。
世界動向を見据えたその先にあるもの
最近の世界のモーターサイクル市場を見渡すと、日本を含む先進国では趣味の高級大型スポーツモデルが堅調で、逆に原付50ccは衰退。途上国では実用性重視の125ccクラス、そこから脱した新興国では徐々にではあるが、250ccから上のレジャー目的のモデルに熱い視線が注がれている。
最近、カワサキは攻勢に出ている。昨年には量産市販2輪車初のスーパーチャージャーを搭載した世界最速マシンとして一躍脚光を浴びた「Ninja H2/H2R」を鮮烈デビューさせたことは記憶に新しい。また、市販車ベースで戦われる世界最高峰ロードレースであるスーパーバイク世界選手権では「Ninja ZX-10R」が2015年のシリーズチャンピオンに輝くなど好調だ。
世界が注目するこの絶好のタイミングで、”KAWASAKI”ブランドをまずはお膝元である日本から再発信していこうという意思が見えてくる。
4輪の世界でも国産車はブランディングが下手だと言われ続けてきた。2輪でもそれは当たらずとも遠からず。MotoGPをはじめとした、世界トップレベルのモータースポーツを席巻する国産メーカーではあるが、その実績に対してブランド価値は相対的に低いと言わざるを得ない。
今回のカワサキの大胆な決断の先には、果たしてどのような結果が待っているのか。他の国産メーカーと差別化しつつ、欧米の高級ブランドに伍して戦えるのか。カワサキの挑戦に注目していきたい。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。