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【電動レーシングマシン試乗レポート】異次元の加速感!パイクスピーク優勝マシン「韋駄天ZERO」

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
TEAM MIRAI「韋駄天ZERO」

“パイクスピーク”で優勝した電動バイク「韋駄天ZERO」に試乗

今週、TEAM MIRAIの電動レーシングマシン「韋駄天ZERO」に試乗してきました。

ご存じの方も多いと思いますが、TEAM MIRAIはオリジナルの電動バイクで世界のメジャーな公道レースに参戦し続けているプロジェクトチーム。代表の岸本ヨシヒロ氏は自らマン島TTレースのTT-ZEROクラスに参戦するなど、レーシングライダーとしても活躍されています。

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今回試乗する機会に恵まれたのは、2015年のパイクスピークインターナショナルヒルクライムレース(PPIHC)の電動バイク部門で優勝した「韋駄天ZERO」です。

世界最小のスポーツ電動バイクを製作するというコンセプトの元、従来のデイトナ675ベースの車体をフルモデルチェンジ。NSF250Rのフレームに米国・ゼロモーターサイクル社製の高性能電動モーターを搭載した純粋なレーシングマシンです。

パイクスピークで目標の11分を切る10分58秒の好タイムを記録し、参戦2年目にして念願の電動バイククラス優勝を果たした、そのマシンの実力はいかに!

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コンパクトで軽量、かつ瞬間的にフルパワーが取り出せる

というわけで、さっそく試乗してみましたが、まずとにかく車体がコンパクト。もともと250ccレーサーがベースではありますが、量産市販車のサイズ感ではなく、かつての2ストレーサーRS125程度です。

そして、車重わずか104kgの車体に75馬力のパワー。数値だけではピンとこないかもしれないですが、一般的なレシプロエンジンとは出力特性がまるで異なり、スロットルとモーターが直結しているかのごとく、まさしく超リニアにトルクが立ち上がってきます。レシプロエンジンのように回転上昇を待つ必要がなく、極端に言えば瞬間的にフルパワーが取り出せるわけです。

もちろん、制御ユニットでコントロールはされていますが、そこは勝つためのレーサーなのでレスポンスは非常に鋭く、ゼロ発進からはもちろん100km/hからでもフロントが浮くほど。今までのレシプロエンジンでは体験したことがない加速感です。電動モーターなので当然シフト操作もいらず、新幹線のようなモーターの唸り音だけが静かに響いているだけ。

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2ストレーサーのようなハンドリングの鋭さ

会場となった船橋オートレース場の短い直線では、とてもフルスロットルまで開け切る勇気はありませんでした。ハンドリングの鋭さはまさに2ストレーサーのよう。エンジンブレーキがあまりかからない点も似ているかも。カッチリした車体と足回りで正確にラインを刻んでいきます。

船橋オートの高速周回路では長い時間フルバンクでヒザ擦りを楽しめました(笑)。ちなみに所属のオートレーサー選手も試乗されていましたが、オートで使う競技車両よりコーナリング速度は高かったそうです。

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オートレース界も注目する静寂性や環境性能

いろいろ聞くと、電動バイクの静寂性や環境性能にオートレース界も着目し、競技車両を電動化する計画も持ち上がっていたそうですが、残念ながら実現はされなかったとのこと。素晴らしいアイデアなので誰か後を継いでもらえればと思うのですが。

さておき、電動バイクの可能性を見せてくれたTEAM MIRAIの「韋駄天ZERO」。まさに”未来”を予感させてくれる素晴らしいモーターサイクルでした!国内のレースでも電動カテゴリーを作ったら楽しいのでは、と思いましたがいかがでしょう。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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