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ドゥカティ「新型ハイパーモタード」試乗会で感じた新しいスポーツライディングの楽しみ方

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
DUCATI Hypermotard 939 SP

「新型ハイパーモタード」のプレステストにスペインへ

ドゥカティの新型「ハイパーモタード939/SP」のインターナショナルプレステストに行ってきました。会場となったのはスペイン・バルセロナ近郊のカステローリ・サーキットとその周辺のワインディングロードです。

新型ハイパーモタード939ですが、先代の821から排気量が拡大されて937ccへ。最高出力と最大トルクもアップしています。シャーシは特にアナウンスがなかったので大きな変更はないようですが、エンジンマネジメントも含めて全体的にアップグレードされているとみて間違いないでしょう。

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予想を裏切る”安心感”

今回試乗したのは2つの仕様で、初めにオーリンズ製前後サスを装備した上級バージョンのSPをサーキットでテスト。詳しいインプレッションは後日あらためてレポートしたいと思いますが、まずはそこで感じた新しい感覚についてお伝えできればと。

その日、実はあまり気乗りしませんでした。朝から冷たい雨が降り続いていて、初めて走るサーキットは路面ミューも高くなさそう(笑)。さらにお相手は気難しい印象が付きまとうメガモタードモデル。正直、走る前からナーバスな心境でしたが、新型ハイパーモタード939はいい意味で予想を裏切る”安心感”で私を迎えてくれたのです。

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ウェットだからこそ感じた電子制御の恩恵

そのカギは今回も電子制御にありました。まずは出力特性が穏やかな「ウェット」モードで探りながら走り始め、コースに慣れていきます。トラコンとABSの設定も自動的に最大になっているので、雨の中でも車体が起きていれば思い切ってアクセル全開とフルブレーキが可能です。コーナー立ち上がりでの不用意なスピニングや、ブレーキングでの握りゴケを怖れて、特にウェットではスムーズな操作ができないものですが、そこをいざとなればマシンが助けてくれる安心感。精神衛生的にもかなり◎です。

しばらく走ってコースに慣れてきたところで、モードを「スポーツ」から「レース」へとさらにレベルアップしていきますが、その頃になると体もマシンに順応してくるので、より俊敏な出力レスポンスや強いブレーキングにも対応できるようになってきます。逆に言えば、電子制御の介入レベルを下げられる。つまり、電子制御によってサーキット走行で最初の鬼門となる、”慣熟不足による自爆のリスク”をかなり低減できるのです。電制はコンディションが悪いときほど心強いとあらためて実感しました。

もちろん、ピレリのレインタイヤの恩恵も大きいです。いくら高精度なトラコンやABSでも横G方向には働いてくれません。コースの一部には雨水が流れている部分もあったのですが、そこを何事もなくバンクされたまま走り抜けられたのは最新のレインタイヤのパフォーマンスによるところでしょう。

人間とマシンが相互に補完し合いながら、難しい局面を切り抜けていく。これもまたモータースポーツの醍醐味。新しい時代のモーターサイクルの楽しみ方なんだと思いました。

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出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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