【2輪版異種格闘技の面白さ】オートレースに未来はあるか、現状に見た光と影
プロレス的面白さの2輪版異種格闘技
去る12月13日(日)、埼玉県・川口オートレース場にて、ロードレース出身のオートレーサーと全日本選手権で活躍する現役ロードレーサーが一堂に会して戦うエキシビションレース「オーバルスーパーバトル IN 川口2015」が開催された。オーバルコースに長けたオートレーサーが勝つか、それとも現役ロードレーサーに軍配が上がるか、オーバルコースを舞台とした史上初の異種2輪混合競技イベントとして話題を呼んだ。
オートレースからはロード出身の青木治親、青山周平選手ら全5名。全日本ロードレースからは青木ノブアツ、山口辰也、酒井大作ら全9名と世界GPや全日本選手権で活躍した元チャンピオンクラスが集うなど顔ぶれも超豪華だ。国内2輪ロードレース最高峰のJSB1000クラスとオートレーサー、スーパーモタードが入り乱れてのバトルを展開。さらにチュートリアルの福田充徳さんの特別参戦や、KTMによるワンメイクレース、スーパーカートによるエキシビションレースも同時開催されるなど大いに盛り上がった。まさにプロレス的な面白さの2輪版異種格闘技とも言える、大胆かつエキセントリックな試みは大いに評価されるべきだろう。
忍び寄る存続の危機
一方で、オートレースなどの公営競技は最近のファン離れから売上が年々減少していると言われ、存続が危ぶまれているのも事実。そして先頃、オートレース発祥の地といわれる船橋オートレース場がついに廃止されることが決定した。船橋オートの昨年度の売り上げはピーク時の86%減となる103億円に落ち込み、さらに開場から45年以上が経過し施設も老朽化。走路やスタンドの改修、券売機のコンピューターシステムの更新などで費用は約15億円かかるなど自治体財政を圧迫していたこともあり、 船橋オートレースを施行する千葉県と船橋市は「税金を投入せずに事業を続けることは困難」と判断した。存続に向けた選手会の必死の活動も実を結ぶことはなく、来年3月をもって船橋オートレースは長い歴史にピリオドを打つこととなった。
国民のギャンブル離れ
現在、日本で開催されている公営競技はオートレースの他、競馬、競輪、競艇の4つで、いずれも国や地方公共団体などの公の機関がギャンブルとして開催するプロスポーツとして発展し、財政にも貢献してきた。しかし最近では公営競技の売上は減少傾向にあり、財政貢献ができないことを理由に廃止に踏み切る自治体が相次いで出ているのが現状だ。オートレースもかつてはスター選手を擁して多くのファンを集めたが、近年は観客動員数も減り、場内も閑古鳥が鳴く寂しい情景になっている。前述のように、ロードレース界から著名ライダーがオートレースに転向したり、女性選手の積極的な投入や古くは元SMAPの森且行選手の活躍などが注目されたこともあったが、時勢の大きな流れを変えるまでには至っていない。
公営競技は日本固有のプロスポーツであるが、時代の流れの中で国民のギャンブルに対する意識や娯楽スタイルの変化に伴って、現代の人々の嗜好にそぐわない面も出てきているのではないだろうか。
夢のあるアイデアを
大胆でスピード感のある変革が求められる中、その意味で今回の川口オートレースでのイベント、「オーバルスーパーバトル IN 川口2015」は非常に価値のあるチャレンジングな試みだったと思う。
残念ながら閉場が決まった船橋オートでも、自転車愛好家向けのイベントを開催したり、一般ライダー向けのライディングスクール会場として貸し出すなどオートレース以外にも活動の場を提供していた。アイデア次第では多彩なコンテンツが考えられると思うのだ。たとえば、MotoGPマシンとWSBKマシンとの一騎打ちや、4輪でもサーキット最速のF1対オーバル最速のNASCARの対決なども見てみたい。オーバルコースならではの観客が近くでレースを一望できるメリットも生かせるはずである。安全対策などには万全を期す必要はあるが、たとえエキシビションであっても広くモータースポーツファンを呼べる興行にできる可能性はあるのでは。
伝統あるプロスポーツを未来に残すためにも、皆で知恵を絞って夢のある企画を実現できたらと思う。
※原文から著者自身が一部加筆しています。