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【車列走行】政府が進める実証実験は果たして渋滞解消の切り札になるか!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真はイメージ

クルマの走行状況に応じて青信号の時間を調整して渋滞解消や事故防止につなげるシステムの導入を政府が進めている。仕組みはこうだ。信号機の前にクルマの走行状況を感知する「光ビーコン」を設置し、その情報を通じて警察の交通管制センターが自動的に信号表示を調整。クルマが制限速度を守っていれば青信号を長く表示して通過しやすくし、スピード超過だと赤信号で停止させる。

たとえば、制限速度を守るバスのようなクルマを先頭とした車列ができた場合、車列が通り抜けるまでは基本的に「青」を維持する。そうすることで、ドライバーは信号で止まる回数を減らそうと思い自発的に制限速度を守るようになるという。4月から神奈川県厚木市で実証実験を始めて、効果があれば来年以降に全国にも広げていく。国内の交通渋滞による経済損失は10兆円超とされ、CO2排出量の削減も含めて渋滞解消への切り札としたい考えだ。

このシステム、「車列」を作らせることで渋滞を解消し交通事故を減らすことが狙いだが、果たして目論見通りにいくだろうか。渋滞学の権威である東京大学の西成活裕教授も言うように、渋滞はそもそも前が邪魔で後続が詰まり、クルマの密度が高くなった結果発生する。一定の車両間隔で一定の速度で全員が整然と走っていればいいが、車列にひとりでもブレーキを踏む人がいれば、それが原因で渋滞が広がってしまう。ドライバーの中には初心者もいれば高齢者もいるのだ。中にはノロノロと走る感覚に業を煮やして無理な追い越しをかけたり、車列に追いつこうと焦ってアクセルを踏む人もいるかもしれない。車列走行の安心感から集中力を欠き漫然運転に陥る可能性もある。

世界的にも例を見ない新しい取り組みということで、その構想自体はもちろん高く評価できるが、導入にはコストもかかるし実際の運用として成功するか否かは結果を見てみないと分からない部分もある。仕組みだけが独り歩きにならないように、普段から道路を利用する我々ユーザーも注視していく必要があるだろう。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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