拡がる教員の部活指導義務 「全員顧問制度」の拡大とその背景に迫る

「全員顧問制度」を採用する中学校の割合とその推移

■自主的なのに強制される

部活動は、生徒にとっても教員にとっても基本的に「自主的な活動」である。

ところが、生徒さらには教員も、部活動への加入が強制されている場合が少なくない。とりわけ中学校教員に対しては、部活動指導を強制する学校の割合が、全国で9割に達している。

だが、過去の調査との比較検討から、以前はこれほどまでに部活動指導が教員に強制されてはいなかったことが、明らかになった。今日、教員の長時間労働が問題視されるなか、なぜすべての教員に部活動指導が義務化されるようになったのか。全教員による部活動指導の拡大とその背景に、最新のデータを用いつつ迫っていきたい。

■「全員顧問制度」という指導体制

部活動指導に「全教員が当たることを原則」としている中学校の割合(2016年度)
部活動指導に「全教員が当たることを原則」としている中学校の割合(2016年度)

教員全員による部活動指導の体制は、学校文化のなかでは「全員顧問制度」とよばれている。

厳密にはこれは「制度」とよぶには語弊がある。そもそも部活動顧問の任務自体が教員の自主的な関わりにより成り立つものである。したがって、全員顧問の「制度」というきまりが成り立つ根拠がない。だから、全員顧問は「慣行」にすぎない。

それにもかかわらず、全員顧問の体制が「制度」とよばれていること自体が興味深い。つまり、なんとなく学校のなかでそうなっているはずの「慣行」が、もはや「制度」という強い拘束力をもったものとして認識されているということである。

■拡大する「全員顧問制度」

「全員顧問制度」を採用する中学校の割合の推移(1996/2001/2016)
「全員顧問制度」を採用する中学校の割合の推移(1996/2001/2016)

2016年度のスポーツ庁による全国調査では、87.5%の中学校で教員全員による部活動の指導体制がとられている。希望制は、たったの5%である。教員に部活動指導をするかしないかの選択の余地はほとんどない。

全員顧問制度は、学校の常識になっている。だが、その歴史はさほど古くはない。

運動部活動に関する3つの全国調査から、全員顧問制度を採用している学校の割合の推移を見ることができる。部活動の指導に「全教員が当たることを原則」としている中学校は、1996年度は57.0%、2001年度は66.3%、2016年度は87.5%と大幅に増加している[注1]。

全員顧問制度を採用するかどうかは、基本的には校長の判断である。教員の長時間労働が常態化しているなかで全員顧問を強制すれば、さらに教員の負担を増大させることにつながるのではないか。なのに、なぜ指導が強制されるようになってきたのか。

■部活動指導は自主的な活動

上記の問いに答える前に、部活動指導が教員に強制されてはならない理由を、ここでごく簡単に説明しておきたい。

じつは教員は法制度上において、特殊な場合を除いて原則、勤務時間外の職務ができない(残業代が支払われない)仕組みになっている(詳しくは拙稿「教員の出退勤 9割把握されず」)。勤務時間を超えて作業しているとすれば、それは好き勝手にやっているということになっている。

そして通常の学校の時間配分において、部活動の活動時間の大半が勤務時間を超えておこなわれている。つまり、部活動の指導は自主的なものと位置づけざるを得ない[注2]

■なぜ、すべての教員で指導を担うのか

イメージ(提供:photoAC)
イメージ(提供:photoAC)

自主的な意志によって指導されるはずの部活動が、なぜ「全員顧問制度」によって強制されているのか。

答えの一部を先に言うならば、全員顧問制度の背景には、教員全員で負担を均等に分かち合いましょう、みんなで協力して部活動を運営していきましょうという考え方がある。子どもの教育は教員全体で分け合って担うものであり、そう考えることで自校の部活動を存続・発展させようとするのだ。

だが、これは答えの一部にすぎない。なぜなら、全員顧問制度が拡大してきた理由が説明できないからだ。上図で示したとおり、少なくとも20年前の時点では今日ほど全員顧問制度が徹底されていなかった。なぜ今日になって、全員顧問制度なのか。

■全員顧問制度の拡大とその背景(1) 業務の多忙化と部活動の過熱

中高生における一週間の部活動日数(ベネッセ「第2回 子ども生活実態基本調査」)
中高生における一週間の部活動日数(ベネッセ「第2回 子ども生活実態基本調査」)

全員顧問制度が拡大してきた背景には、4つの変化が考えられる。

第一が、教員の多忙化である。業務量の増大により各教員の時間的余裕がなくなるなかで、部活動指導を実現させるために、各教員のわずかな時間を全員分寄せ集めざるをえない。本記事冒頭で、「長時間労働が問題視されるなか、なぜすべての教員に部活動指導が強制されるのか」と問うたが、じつは「長時間労働だからこそ、すべての教員に部活動指導が強制される」のである。

第二が、部活動の過熱である。部活動は長期的スパンで見ると、その活動日数を含め、拡大の経過をたどっている(詳しくは拙稿「お正月の部活練習 必要か」など)。部活動が盛んになれば、多くの人員が必要になる。

■全員顧問制度の拡大とその背景(2) 高まる安全意識と減らない部活動数

全国の中学校における生徒数と運動部活動数の推移(中体連「加盟校調査」より作成)
全国の中学校における生徒数と運動部活動数の推移(中体連「加盟校調査」より作成)

第三の変化は、生徒の安全性に対する関心の高まりである。部活動中の事故防止のために、たとえば「運動部活動中、顧問の教員は生徒の活動に立ち会い、直接指導することが原則」(「運動部活動の在り方に関する調査研究報告書」2013年)といった旨の内容が、国や自治体からたびたび指示されてきた。このとき、主顧問が不在の場合には副顧問が立ち会うといったように、一つの部活動における複数顧問の必要性が高まる。

第四の変化は、減らない(減らせない)部活動数である。中学校の運動部について調べてみたところ、図示したとおり、全国の運動部活動数は減少(1994年度比で0.88倍)してはいるものの、全国の生徒数(1994年度比で0.73倍)よりは減少幅が小さい。部員数が少なくなっても、「伝統だから」「現部員のために」と、部活動が維持される。業務の多忙化のなかで、各教員のわずかな時間を全員分持ち寄ることで、減らせない部活動を維持している[注3]。

■人的資源ではなく部活動に手をくわえよう

イメージ(提供:photoAC)
イメージ(提供:photoAC)

このように考えると、全員顧問制度とは、限られた人的資源を強制的に動員することで、量と質ともに肥大化した部活動になんとか割り当てていくという苦肉の策である。

しかしながら全員顧問制度は同時に、部活動指導を希望しない教員にも、一定量の負担を押しつけるものでもある。「自主的なのに強制する」という矛盾がここに生じる。だが、部活動が自主的な指導によるものであるからには、やはり全員顧問制度は回避されねばならない。

人的資源と部活動との関係を考えたとき、全員顧問制度は前者を操作する方法である。だがこれからの改革は、後者の活動総量を重点的に操作するという方法を、模索すべきである。

たとえば部活動の活動総量が半分程度にまで減らされれば、今日とはまったく異なる人的資源の配置を描くことが可能になるはずだ。そして総量規制のためには、部活動を競争の原理から切り離すことが求められる。これらの未来展望図は、別稿にゆずりたい。

[注1]

1996年度と2001年度の数値は、調査対象となった中学校が100校のみであるため、両者間の数値を比較検討するには慎重を要する(サンプルの決定方法は同一)。ただし2016年度の数値は全数調査(すべての中学校を調査)であり、かつ1996年度と2001年度調査との差が明らかに大きい。以上を総括すると、おそらくこの20年間に全員顧問制度の割合がかなり高まったと推定される。

なお、各年度の調査名称ならびに調査概要は下記のとおりである。

1) 1996年度調査

文部省(当時)「中学生・高校生のスポーツ活動に関する調査」。全国の中学校100校、高校100校の生徒や保護者、教員などを対象に、1996年の4月から7月にかけて実施(回答率の記載なし)。図のデータは校長調査の回答によるもの。

2) 2001年度調査

文部科学省「運動部活動の実態に関する調査」。全国の中学校100校、高校100校の生徒や保護者、教員などを対象に、2001年10月に実施。回答数は中学校96校(回答率96%)、高校97校(回答率97%)。図のデータは校長調査の回答によるもの。

3) 2016年度調査

スポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」。全国のすべての小中学校を対象に実施。小学校は20、272校、中学校は10、593 校。図のデータは校長調査の回答によるもの。

[注2]

部活動指導の自主性については、この先まだ少し細かい議論が必要になるが、ここでは割愛する。本記事ではさしあたり、部活動指導を教員に強制することは基本的にできないということを、理解してほしい。

[注3]

厳密に言うと、中学校の教員数は、この間大きな変化はない。ただし業務の多忙化により、各教員の時間の余裕がなくなってきている点が重要である。すなわち、一人ひとりの教員のわずかな時間を全員分寄せ集めすることで、部活動数の現状をできる限り維持しようとしているのである。