中学生の自殺 文科省 半数把握できず

(写真:アフロ)

■まずは相談を

大型連休が明けて、学校が再開した。部活動や授業のこと、友人関係のこと、辛いことがたくさんあるかもしれない。そんなときには、気軽に相談できる窓口がある相談窓口の一覧(内閣府)はこちら)。

9日の深夜、悲しく、悔しいニュースが入ってきた。東京で中学2年の女子生徒2人が、電車にはねられ死亡したという。自殺とみられる。

本事案の詳細は、まだわからないものの、まずもって私たちは中学生が自ら命を絶っているという現実を「直視」しなければならない。

■文科省 中学生の自殺事案のうち約半数把握できず

90年代半ばまで文科省は自殺の実態をおおよそ把握できていた…
90年代半ばまで文科省は自殺の実態をおおよそ把握できていた…

気がかりなデータがある。警察庁が把握している中学生の自殺件数と、文部科学省が把握しているそれとを比べてみると、とくに近年、両者の間に大きな差が認められるのだ[注1]。

グラフを見てもらいたい。1990年代半ば頃までは、警察庁の数字と文科省の数字は似通っている。つまりこの日本社会で起きた中学生の自殺事案については、文科省もその実態をほぼ正確に把握していた。

だが、1990年代後半頃から、両者の間に大きな開きがみられるようになる[注2]。年によってその程度は異なるものの、文科省は毎年おおむね4~5割の自殺事案を把握していない。

たとえば2014年に関していうと、警察庁が99件であるのに対して、文科省は54件のみの把握にとどまっている。警察庁が把握した事案のうち45.5%について、文科省はその実態を把握できていない、「直視」できていないのだ。

■文科省 学校・教委に積極的な調査を要請

文部科学省「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」(2014年)
文部科学省「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」(2014年)

文科省は2014年に示した「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」において「学校及び学校の設置者が、たとえ自らに不都合なことがあったとしても、事実にしっかりと向き合おうとする姿勢が何よりも重要」であり、「学校や教育委員会が、早い時期から主体的に調査に取り組むこと」を要請している。

文科省が事案を把握し切れていないのは、公立校の場合でいうと、情報が教育委員会止まりになっている可能性がある。教育委員会には何らかの情報が届いていても、それが「自殺」としては文科省にあがっていないことも考えられる[注3]。

子どもの命がかかわる事態である。文科省においては、かつてのようにすべての自殺事案の情報が集約されるべきであり、その仕組みづくりの徹底が急務である

■私たち大人が一丸となって

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統計的には、長期休暇の後、学校が始まると自殺が増加する。学校が子どもにとって何らかの負荷となっていると推察される。

そして中学生の自殺死亡率は、2013年以降、過去最多を更新し続けている「逃げる」という選択肢 中学生の自殺 17年ぶりの年間100件超に向き合う)。事態は危機的である。

子どもを見守るべき私たちがいますべきことは、この社会で起きていることをしっかりと「直視」し、改善のすべを一丸となって探っていくことである。

  • [注1]警察庁の件数は、『警察白書』『平成●年中における自殺の状況』より、文科省の件数は、「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より拾い上げた。
  • [注2]1987年までは警察庁と文科省ともに、「年間」の件数、1988年以降は文科省のみ「年度間」の数である。したがって、1988年以降における警察庁と文科省の件数の開きは、「年間」と「年度間」の差によるものという説明が不可能ではない。だがそうだとしても、1990年代後半以降、その差がさらに拡がった点までは説明できない。なお、文科省の調査では2006年度からは国私立学校、2013年度からは高等学校通信制課程も調査対象に含まれるようになっている。ただし、それによって警察庁の件数との差が埋まることは起きていない。
  • [注3]文科省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」では、下図にある流れで、文科省にデータがあがっていく。
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