組体操は「教育」か? 学習指導要領に記載なしで事故多発 文科省の迅速な対応求む ▽組体操リスク(8)

文部科学省が定める「学習指導要領」に組体操の記載はいっさいない

■負傷事故が多く、頭部や頸部を損傷しやすい

小学校における体育的活動(部活動除く)時の負傷事故件数[2013年度]
小学校における体育的活動(部活動除く)時の負傷事故件数[2013年度]

巨大組体操ブームが止まらない。小学校ではピラミッドの7段はもはや当たり前、それに飽き足らず、難易度がさらに高い5段タワーをも一緒に演じるという学校も少なくない。今週末の運動会で、それを披露するという学校もあるだろう。

すでに知られているとおり、組体操では負傷事故が多発している【緊急提言】組体操は、やめたほうがよい)。2013年度の最新のデータでも、小学校では3番目に事故が多い種目である[注]

そして、負傷の部位については、他の種目と比較して、頭部や体幹部(頸部、腰部など)といった重要な部位の損傷が目立つ組体操が「危険」な理由)。

■学習指導要領に記載なし やらなくてもよい種目で事故多発

ここで問題視したいのは、組体操は文部科学省が定める小中高の体育の学習指導要領とさらにその解説版にも、記載がいっさいないという事実である。

上の表にも示したように、負傷事故が多い10種目のなかでも、組体操だけ、学習指導要領には扱いがない。つまり、やらなくてもよい種目で、事故が多発しているのである。

戦後の学習指導要領を確認してみると、小学校では昭和24(1949)年度に簡易な記載があったものの、昭和28年度版には記載がすでになくなっている。

中学校および高校では、昭和26(1951)年度版(この当時は中学校と高校で同一の学習指導要領)に、「巧技」のなかの「組立型」として明確な位置づけがされていて、さまざまな組み方が図解で紹介されている。それでも最大は、3段のピラミッドである。

しかしそれも長くは続かず、中学校では昭和44(1969)年度、高校では、昭和31(1956)年度版で、組体操の記述がなくなっている。

■文部科学省や教育委員会の見解

学習指導要領に記載されていない種目で、事故が多発している。このことを行政側はどうとらえているのか。

教育委員会に問い合わせをすると、「学校の判断に任せています」と決まって同じ答えが返ってくる。学習指導要領に記載がないのだから、そう答えるしかないのだ。

他方で以下にみるように、教育委員会のなかには、組体操の実施に否定的な見解を示しているところが複数ある。

群馬県教委「学校行事のための体育ではないので、体育大会での組み体操は、体力を高める運動になりません。学習することをやって発展的な学習であればよいですが、学習指導要領に示された内容を行いましょう。」

仙台市教委「Q1 体育大会での組み体操は、体力を高める運動となるか。 A 学校行事のための体育ではない。学習指導要領に示された内容を行うこと。」

長崎県教委「学習指導要領の趣旨、運動の特性やねらいなどから、運動会で発表する組体操の練習等を安易に『体つくり運動』として取り扱わないように留意する。」

つまり、運動会の出し物に向けて体育の授業を計画すること自体が誤りであり、体育は体育の授業として完結した目的と内容で実施されなければならない。そして、そのことを含めて、組体操は体育科の種目として相応しくないとの判断である。ただし、そう表記されてはいるものの、これは有名無実化している側面が強く、上記の自治体であっても組体操は学校教育に導入されているのが現実だ。

じつは上に見た主張は、学習指導要領の改訂(2008年3月に改訂、2011年4月から完全実施)に際して、全国の教育委員会関係者を集めて文部科学省が開催した協議会(2009年度)において、教育委員会からの質問を受けて文部科学省が応じた答えに依拠している。各教育委員会の資料で類似した文言がみられるのは、そのような理由からである。

ここで重要なのは、文部科学省が「組体操は、体育の授業で教育すべき内容として不適切である」との旨を、公に認めているということである。

■文部科学省に迅速な対応を求む

文部科学省の上記の回答からは、ずいぶんと年月が経過した。しかもその当時は、組体操事故はほとんど議論されていなかった。

組体操事故が大きく報じられた今日、それでも学校の組体操ブームは止まっていない。文部科学省が不適切であると言ったにもかかわらず、体育の時間を費やして組体操が実施され、多数の子どもが事故に遭っている。今日も、明日も、無駄な事故が起き続ける。

学習指導要領に書いてあることは一つも間違っていない。だから堂々と、文部科学省は組体操のあり方に関するメッセージを、一刻も早く発すべきである。

[注]

しかも組体操は、まったく実施していない学校も多く、かつ学年も6年生(または5年生との共同)のみであることを考え合わせると、事故の発生率は、他種目と比べてより高いと考えられる。