教師の暴行をともなう死亡事件 賠償金は税金で?!――桜宮高校の事件を越える闘い 滋賀県秦荘中事件

教員個人の賠償責任を問う闘い

いま、スポーツ指導における死亡事案のなかで、2組の遺族が民事訴訟において、教員個人の賠償責任を問う闘いに挑んでいる。一つは、大分県立竹田高校の暴行熱中症死事件、もう一つが、滋賀県愛荘町立秦荘中学校の暴行柔道死事件である。

スポーツ指導による死亡という点では、大阪市立桜宮高等学校のバスケットボール部における主将の自殺事件(2012年12月)を思い起こす読者も多いことだろう。じつは桜宮高校の事案も、民事訴訟――事案が顕在化したときに比べれば報道量はとても少ない――の最中で、先月22日に東京地裁で第1回公判が開かれたばかりだ。ただこの事案と、先にあげた竹田高校と秦荘中学校の事案には、闘う相手に大きなちがいがある。

国家賠償法の壁を越えて

桜宮高校の事案では、自治体が相手である。原告は、大阪市に約1億6500万円の損害賠償を求めている。もちろん竹田高校の場合も、秦荘中学校の場合も、それぞれ大分県や滋賀県愛荘町を被告としている。しかし両原告は、生徒を死に至らせた部活動の顧問を相手取っている点が、特筆されなければならない。

じつはこの闘いは、きわめて厳しい闘いである。なぜなら、国会賠償法(国賠法)の条項により、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」(第一条)とされるからである。簡単にいえば、公務員が職務中に起こした損害については、公務員個人ではなく国や自治体が賠償金を肩代わりしてくれるというものである。さらに言い換えれば、教師がもたらした損害賠償を、私たちの税金で負担する制度である。

桜宮高校の事案は、国賠法の定めのとおりに、大阪市を相手取っている。しかし、竹田高校と秦荘中学校の原告は、それでは納得できないと考える。すなわち、公務員個人(部活動顧問)の賠償責任を問おうというのである。本記事の副題「桜宮高校の事件を越える闘い」というのは、そのような意味においてである。

滋賀県愛荘町立 秦荘中学校 暴行柔道死事件

先月31日、愛荘町立秦荘中学校において発生した暴行柔道死事件における民事訴訟(第二審、大阪高等裁判所)にて、判決が下された。

柔道初心者である中学1年生の村川康嗣さんが、2009年7月29日に柔道部の練習中に、急性硬膜下血腫を発症し死亡した事例である。無制限乱取りのなかで最後の一人だけ残されて乱取り継続を強要され、そのときに顧問が相手になって康嗣さんを投げてその結果、康嗣さんは帰らぬ人となってしまった。

康嗣さんの遺族は一審でほぼ全面的に勝訴したものの、顧問の賠償責任が認められなかった点を不服として、控訴審に挑んでいた。

「本件控訴を棄却する」――これが裁判所の答えであった。