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次のNPO政策やボランティア政策を担う「共助社会づくり懇談会」はなぜ非公開なのか

西田亮介社会学者/日本大学危機管理学部教授、東京工業大学特任教授

民主党政権のもとでは、「新しい公共」という名で、新しいNPO政策やボランティアのあり方が議論されてきた。30代の社会起業家が委員を担ったり、民間人材が非常勤公務員として調査に取り組み、その成果は寄付税制の拡充といったかたちで結実した。そして、これらの審議の過程は、公式中継や動画共有サイトなどの協力を得ながら、原則公開されていた。

先日、新しい政権のもとで、同種の会議が始まった。「共助社会づくり懇談会」である。ところが、この懇談会は原則非公開とされている。

1.会議は、原則として非公開とする。

2.会議の配付資料は、原則として、会議終了後、内閣府ホームページにおいて公表する。

3.公開された会議の議事録については、原則として、後日、内閣府ホームページにおいて公表する。

4.座長が特に必要と認めるときは、配付資料及び議事録の全部又は一部を公表しないものとすることができる。

5.この要領に定めるもののほか、会議に関し必要な事項は座長が定める。

(『共助社会づくり懇談会 運営要領(案)』より引用。下線強調は筆者)

「共助社会」 (本来政治が担うべき公助はどこにいったのだろう...という疑問はいったんさておくとして)を目指すにあたって、そもそもその議論が公開されないような共助社会の姿とはいったいどのようなものなのだろう、と思ってしまった(「新しい公共」推進会議では、この運営要領に会議を原則公開とする旨を記していた)。

またこの会は、その目的を、「特定非営利活動法人等による地域の絆」と記している。

懇談会の趣旨 地域の活性化を図るとともに、全ての人々がその能力を社会で発揮できるよう下支えを進める共助社会をつくっていくためには、特定非営利活動法人等による地域の絆を活かした共助の活動が重要となってくる。このような活動の推進に必要な政策課題の分析と支援策の検討を行う場として、共助社会づくり懇談会を開催する。

(『共助社会づくり懇談会』より引用。下線強調は筆者)

だが、 NPOが担うのは地域の絆だけではあるまい。より多様なアソシエーションや住民ニーズ、政策提言など多様なポテンシャルを有するはずだ。なんらかの事情で非公開にすべき場合には、そのときに検討すればよいのではないか。そのために「原則として」という文言が存在するはずだ。前向きで、新しい共助のあり方を検討する第一歩として、会議は公開にしてみてはどうだろう。

社会学者/日本大学危機管理学部教授、東京工業大学特任教授

博士(政策・メディア)。専門は社会学。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、独立行政法人中小企業基盤整備機構経営支援情報センターリサーチャー、立命館大学大学院特別招聘准教授、東京工業大学准教授等を経て2024年日本大学に着任。『メディアと自民党』『情報武装する政治』『コロナ危機の社会学』『ネット選挙』『無業社会』(工藤啓氏と共著)など著書多数。省庁、地方自治体、業界団体等で広報関係の有識者会議等を構成。偽情報対策や放送政策も詳しい。10年以上各種コメンテーターを務める。

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