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大阪に東京が再考求めた「中央区」「北区」。全国にいくつあるの?

増澤陸チーフ図解オフィサー

大阪で進められている「大阪都構想」が実現した場合、新しい区の名称として「北区」「中央区」が検討されていることについて、東京の自治体から再考の声が寄せられているとの報道がありました。

【独自】大阪都構想で「中央区やめて」…東京・中央区が再考求める

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200219-OYT1T50029/

こちらが、現在の区割り案です。

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「北」「中央」というのは単に場所を表す言葉であって、固有名詞というわけではないので、そこに他の自治体からクレームが入るのはなぜ?と、気になる人も多いのではないでしょうか?実際、北区はたくさんあります。

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一番歴史のある「北区」は大阪市北区です。

同様に中央区もたくさんあります。

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最も古い「中央区」は東京都中央区ですが、それ以外にも9件も中央区はあります。

このように、「北区」「中央区」は他にもたくさんあるのに、なぜ今回、東京都は大阪都構想の区名に対して再考を要望したのでしょうか?

その理由を考えるヒントは、「特別区」という制度にあります。

「特別区とは?」

東京の23区と他の政令指定都市にある「区」では、実は法律上の位置づけが異なります。

日本の地方自治体は大まかにはこのようになっています。

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「府県」と「市町村」からなる二層構造を基本としています。

特に大規模な「政令指定都市」「中核市」については、一般的な市町村よりも大きな権限が与えられています。逆に、東京の23の「特別区」は、市町村よりも権限は小さいものの独立した基礎自治体として認められています。

一方で「大阪市北区」や「熊本市南区」などは、単独の自治体ではない単なる行政区分で、「大阪市」や「熊本市」の一部に過ぎません。

今回の「大阪都構想」では政令指定都市である「大阪市」を解体して4つの「特別区」に分けることで、大阪府との二重行政を解消しよう、という狙いがあります。

これによって、これまで単独の基礎自治体ではなかった「大阪市北区」を含む地域が、大阪都の「北区」という独立した基礎自治体となります。行政区分としての「北区」はたくさんありますが、基礎自治体としての「北区」はいまのところ東京都北区しかなく、名称が重複する、として再考を求めている形になります。

例えば、

「伊丹市」という基礎自治体は「兵庫県伊丹市」しかありませんが、単に「伊丹」という地名であれば、茨城県つくばみらい市にも「伊丹」という地名があります。【地図

これが、

「伊東市と熱海市が合併するので、『いたみ市』にしたい」ということになったらどうでしょうか。新たに「いたみ市」という基礎自治体ができるとしたら、兵庫県伊丹市にお住まいの方の中には「ややこしいし、ちょっと考え直してくれないかな」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

なお、実際の事例としては、府中市(東京都と広島県)、伊達市(福島県と北海道)や越前市と越前町(どちらも福井県)、釧路市と釧路町(どちらも北海道)、高山市・高山村(岐阜県、群馬県、長野県)など重複する市町村がないわけではありません。強制的に違う名称にさせることはできませんので、結局は歴史的な成り立ちや住民の意見を踏まえた上で、調整して決定されているようです。

こんなにも多い区名の重複

区の名前には他にも重複しているものがたくさんあります。多い順に並べてみました。

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最も多いのは「南区」です。やはり「南向き」などイメージがいいのでしょうか。全体的に、区の名称は方角や位置関係でシンプルに決められることが多いようです。

地域を表す名称はやはり魅力があります。「名古屋市熱田区」と聞けば「熱田神宮があるんだ」とすぐにわかりますし、「静岡県葵区」は徳川のお膝元だったことを意識させます。

区の名前は地元の人にとって分かりやすく、親しみ深いものであれば、他の地域と被っても別に構わないかと思います。

一方で、せっかく新しく決めるのであれば、観光資源を最大限アピールできるような名前にしてもいいのかなと思います。

ユニバーサルスタジオがあるから「ユニバ区」とか、くいだおれの街だから「かにどうら区」とか、大阪ならではのひねりがある区名が出てくるのを少し期待しています。

チーフ図解オフィサー

東京都在住のブロガー・ITコンサル。経済・経営の話題を中心に図解でわかりやすく解説することに定評がある。ブログ『それ、僕が図解します。』は、個人運営ながら、時には月間訪問者数20万人を超える人気ブログとなっている。世の中の分かりにくいことや納得の行かないことを少しでも減らすことを目標としている。図解を始めたのは約20年前から。仕事に必要な画面遷移図を描き続けているうちに、何でも図で説明できるようになった。得意としているのは、経済・経営、不動産、税金、終活・相続など。著書:『デジタルコンテンツ白書』編集委員(2007−2014)等 京都大学農学部卒。宅地建物取引士。相続診断士。

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