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『プライベートジェットはお買い得』なのか?検証してみました【ホンダジェット国内初飛行搭乗記】

増澤陸チーフ図解オフィサー

ホンダジェットの日本第一号機が、試験飛行を終え、いよいよ本番運用に入りました。その初飛行に同乗させていただく機会を得たので、レポートをお送りしたいと思います。

ホンダジェットとは?

・5人乗り(乗員除く)の小型ジェット

・自動車メーカーのホンダがアメリカの子会社で作っている

・昨年、日本で「型式認定」が下り、日本でも登録して飛ばすことができるようになった。

・価格は約5億9千万円(2018年5月現在)

・第1号機を購入したのは投資家の千葉功太郎さん、堀江貴文さん、山岸広太郎さんのグループ

この写真は日本登録第一号機の発表会の時の写真。今回、私が搭乗させていただいたのもこの機体です。

ルートと目的

せっかくのプライベートジェットなので、プライベートジェットでしか実現できないルートにチャレンジしようということで、北海道内をぐるぐる周回するプランにしました。

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いま、北海道には休止中含めて13の空港・飛行場があります。このうち、「オホーツク紋別」「旭川」「とかち帯広」は道外との路線しか飛んでいません。また、道内線もほとんどが札幌をハブにしてのネットワークになっており、「横移動」は便利ではないのが現状です。そこで、徹底的に横移動するルートを選びました。

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最終的にこんな感じのルートになりました。あとで解説しますが、これを公共交通機関で実現するのはかなり大変です。

実際の飛行

6:00 成田空港着

自宅から成田空港までは自家用車でやってきました。

ここからはグランドハンドリング会社の先導で進みます。

前の車がグランドハンドリング会社。後ろの車がここまで乗ってきた車です。

グランドハンドリング会社、とは、航空機のスムーズな運行をサポートする会社のことで、こういったプライベートジェットの運行において、フライトプランを作成したり、入出国審査の手続き調整やターミナルから飛行機への移動をサポートしたりします。

なお、通常のターミナルは一切通過せず、裏口のようなゲートを車で通過して、そのまま飛行機の横まで行くことができます。自宅の前から飛行機のタラップの前まで、乗った車を降りることは一度もありません。

08:30 函館着

函館から利尻空港に向かったのですが、途中、時間に余裕があるということで、急遽フライトコースを変更してもらい、礼文島上空付近をぐるっと回ってもらいました。こういうことができるのもプライベートジェットならではの楽しみです。

11:00 利尻着

14:00 紋別着

16:30 丘珠着

ここでようやく、北海道土産を購入しました。

19:30 成田着

帰着しました。朝ここを出てから、まだ、12時間ほどしか経っていません。あまりに移動が早すぎて頭が追いついていません。本当に僕は函館や利尻や紋別や札幌にいったんだろうか?とちょっと信じられない感じが残りました。

機内の様子

機内の様子をご紹介します。

左に座っているのがホンダジェットのオーナー、千葉功太郎さんです。中の広さは、体感的に横幅がミニバンクラス。長さがミニバン二台分ぐらいです。成田空港までアルファードで来たのですが、それにそのまま翼とジェットエンジンがついている感じといえば伝わりやすいかもしれません。客室の座席は5つあります。

機内最後尾にはトイレもあります。写真左が閉じているところ。写真右が開いているところ。写っていませんが、もちろんドアもあります。

安全のしおりもちゃんとあります。座席の下にはもちろん救命胴衣も。ただし、アテンダントの方が出てきて黄色いやつをかぶってふくらませるあの実演はありません。

びっくりしたのが、コックピットと客室の間にまったく仕切りが無いこと。飛行中もとくにドアが閉まると行ったことはありません。(カーテンはあるので締められる。)一般のエアラインではちょっと考えられない感じです。ずっと計器やパイロットさんの操縦の様子を見ていました。

こちらが、今日の機長の中村さんです。まだお若いのに色々な機種の免許を持っているエリートパイロットだそう。

プライベートジェットでやってみたかったこと

また、「普通のエアラインだとあまりやらないことをやってみよう」というチャレンジもやりました。

シャンパンで乾杯

プライベートジェットといえば富裕層。富裕層といえばシャンパンで乾杯。ということで、乾杯してみました。気圧が低いせいか泡が多く出てちょっと詰まりました。

ナマの食べ物を持ち込んで広げて食べる

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函館で海産物を物色する千葉さん。

ここで買ったものを、そのまま機内に持ち込んで広げて食べました。

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買ったのは毛蟹でした。めちゃくちゃ美味かったです。カニのような汁物はもちろん、乗客が自分たちしかいないので、匂いのきついものなんかも遠慮なく食べられますね。

仕事

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「世界を飛び回るビジネスマン」風の写真撮影にもチャレンジ。しかし、狙い通りにいかず、富裕層のオーナーにくっついてきた怪しい不動産ブローカーにしか見えませんでした。

SPごっこ

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VIPにつきもののSPのコスプレも。VIPと毛蟹を脅威から守っています。

商談成立!

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素材写真でありそうな「商談成立!」のシーンを撮影してみました。やってみるとわかりますが、現実にこのシチュエーションはありえないですね。

へべれけ

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一般のエアラインで泥酔すると怒られますが、自家用ならそんなことを気にする必要はあまりありません。(でも状態によっては機長さんに降ろされるかも)

麻雀

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ミニ麻雀牌を用意して麻雀してみました。できなくはない。

筋トレ

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ビジネスエリートなら移動する間を活用して筋トレしたいという気持ちをきっと持っているはず。プライベートジェットならそれもかないます。

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他に乗客はいないし、トイレもあるので、着替えができます。スーツからトレーニングウェアに着替えて、筋肉をガッツリ追い込むことも可能です。

公共交通機関のみで今回のコースを実現したら?

今回、プライベートジェットならではの自由なルートで北海道を周遊しました。

もしこれを公共交通機関だけで実現しようとするとけっこう大変です。

実現するには、いろんなルートがありますが、利尻島と紋別がかなり不便なため、そこを優先的に回るとだいたいこんなルートになります。

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朝、羽田を出たら、まず新千歳経由で利尻へ。2時間後、丘珠(札幌)に戻ってきて、今度は長距離バスで紋別へ。紋別で一泊したあと、早朝にタクシーで女満別空港へ。そして、女満別空港から丘珠に戻ってきて、札幌市内に少し滞在したあと、函館へJRで向かいます。そして、函館から空路羽田に戻ってきます。ほぼ2日間を費やす感じです。

フェリーこそ乗りませんが、飛行機・バス・電車・タクシー、と様々な公共交通機関のお世話になる必要があります。

プライベートジェットと公共交通機関との比較

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プライベートジェットの場合、移動に5時間、現地滞在は9時間でした。

一方、公共交通機関の場合、移動に21時間、現地滞在は16時間です。現地滞在時間には、睡眠時間や、空港や駅での待ち時間なども含まれます。したがって、実質的な滞在時間はほぼ同じなのに、移動は3倍の時間がかかる計算になります。

費用面ですが、今回のようにプライベートジェットを丸一日チャーターして、国内を飛び回った場合、だいたい500万円いくらぐらい掛かります。公共交通機関は約20万円ですから、その差は約25倍。5人で行く場合でも、約5倍の費用がかかります。これにどれだけの価値を見いだせるか?がポイントになります。

プライベートジェットは富裕層の「どこでもドア」であり「タイムマシン」

プライベートジェットを使うと、「待ち時間」がありません。保安検査場を20分前までに通過する、とか、出発ゲート前に5分前に来る、とか、到着してもゲートが開くまで待ったり、手荷物がベルトに流れてくるを待つ、そういうのが一切ありません。自分が乗ったらすぐに出発。ついたらすぐに現地でタクシー、です。これが思いのほかストレスフリーです。

自宅→車→飛行機→車→現地の流れが極めてスムーズで、まさにこれは「どこでもドア」そのものでした。

また、今回、公共交通機関だと2日間かかるコースを1日で回ることができました。

と、いうことは、1日を480万で買った計算になります。

例えば、年間の利益が20億を超えるような会社を経営している経営者の場合、1営業日あたりの利益は1,000万円ですから、1日を480万で買えるなら、買ったほうがいいという判断もあるかもしれません。

「『どこでもドア』や『タイムマシン』があったらいいけど、実際実現したら、一回の使用料いくらになるんだろう?」と想像したことはないですか?僕はあります。

プライベートジェットのチャーター代。500万円はかなりお高いですが、半額の250万円ぐらいになってきたら、東京ーNYのファーストクラスの2人分ぐらいの価格なので、払っている人がいない金額ではありません。待ち時間や、ルートの自由さといった利便性を考えるとそれなりに利用者数が増える可能性があるかもしれないなあ、と思いました。

チーフ図解オフィサー

東京都在住のブロガー・ITコンサル。経済・経営の話題を中心に図解でわかりやすく解説することに定評がある。ブログ『それ、僕が図解します。』は、個人運営ながら、時には月間訪問者数20万人を超える人気ブログとなっている。世の中の分かりにくいことや納得の行かないことを少しでも減らすことを目標としている。図解を始めたのは約20年前から。仕事に必要な画面遷移図を描き続けているうちに、何でも図で説明できるようになった。得意としているのは、経済・経営、不動産、税金、終活・相続など。著書:『デジタルコンテンツ白書』編集委員(2007−2014)等 京都大学農学部卒。宅地建物取引士。相続診断士。

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