新型コロナウイルス 音楽業界への影響は?

(写真:アフロ)

新型コロナウイルスによる社会および生活への影響が徐々に拡大してきました。そして、その影響からは音楽業界ももちろん逃れることはできません。

名指しされ始めた「コンサート」

日本の企業も新型コロナウイルスへの対策を遅ればせながら始めつつありますが、そういった動きの1つとして2月14日にヤフーの取り組みが報じられました。

ヤフーは14日、新型コロナウイルスによる肺炎の影響を避けるため、約6500人の全社員に対し、公私にわたり100人以上が集まる会合への参加を原則禁止した。仕事で訪れるセミナーや、休日のコンサートなどのイベントも対象だ。期間は未定としている。

出典:ヤフー、100人超す会合参加を禁止 新型肺炎対策で(日本経済新聞 2020年2月14日18時25分)

※2/16朝追記→上記日経の記事について、本記事公開直後の2月15日17時13分に内容が更新されています。更新後の記事では「プライベートでの参加は規制していない。」という記述が追加されており、もともとの報道が不正確だったのか実際の通達そのものが変わったのかはわかりませんが、「コンサート」という言葉は削除されました。これ以降の本記事の趣旨には影響ありませんが、「所属企業によってコンサート参加が規制される」というリスクが後退した(?)ことに関してはほっとしています。

この報道(※2/16朝追記→2/14時点での当初の報道内容を指します)で注目したいのは「健康状態が確認されているわけではない大勢の人が長時間密室で行動を共にする催し」として「コンサート」が名指しされていることです。

2月に予定されていたsuchmosの中国公演が中止されるなど、すでに日本のアーティストのアジアでの活動については新型コロナウイルスに起因する制限が出始めています。今回報じられたような企業のアクションと同種の取り組みが実際に広がった場合、今度は日本国内でのコンサート実施そのものに大きな影を落とすことになる可能性が高いです(さらに異なるベクトルの話として、すでに来日予定だったアーティストの延期案件も出てきています)。

かねてから予定されていた夏の東京オリンピックおよびパラリンピックの影響により、2020年の日本の音楽業界はライブイベントの実施に際してイレギュラーな対応を強いられています。ライブ市場を牽引してきた大型フェスに関しても、フジロックフェスティバルが通常より約1か月遅い8月21日~23日に開催、ロックインジャパンは2013年以来の1週末のみの開催、サマーソニックは今年は開催を見送りと、例年とは異なるカレンダーがすでに示されています。

もともと「向かい風」が予期されていた2020年のライブシーンにとって、新型コロナウイルスの一件はそんなネガティブな状況にさらに拍車をかける要因になりかねません。

「接触」の回避

今回の件に関するニュースで「濃厚接触」という言葉がたびたび出てきますが、アーティストが開催している「接触イベント」に関しても影響が出てきています。

ジャニーズ事務所の「SixTONES(ストーンズ)」と「Snow Man」の両グループは1日、2~3月に東京、大阪、札幌、福岡で予定していた「スペシャルイベント+ハイタッチ会」をいったん延期すると発表した。女性アイドルグループ「日向坂46」は1日に予定していたイベントと2日に予定していた個別握手会を延期。「AKB48」は1日に大阪で開催予定だった「大握手会」を、「SKE48」と「NMB48」も2日に大阪で予定していた個別握手会をそれぞれ延期するとしている。

出典:ジャニーズのハイタッチ会やAKB握手会延期 新型肺炎(朝日新聞 2020年2月1日)

大勢の人が集まるうえに、演者とファンが至近距離で物理的な接触を伴う(1回ごとの接触は短時間ではありますが)こういったイベントが大事をとる形で開催されなくなるケースはこの先も出てくるのではないかと想定されます。48グループや坂道グループ、ジャニーズといった超大手以外のアイドルグループでも、こういった動きが一部で顕在化しつつあります。

この度、新型コロナウイルスによる影響を依然として警戒すべき状況と判断し、今週2月8日(土)下北沢GARDENで行われる「lyrical school presents ”BE KIND REWIND” REPLAY」から、当面の間ライブ及びイベント後に行われる『特典会』を中止とさせていただきます。

出典:フィロソフィーのダンス 公式サイト

「前向きに変わるきっかけ」にするために

コンサートと接触イベント。この2つは、ここ最近の日本の音楽業界を支えてきた重要なファクターでもあります。2010年代を通じて音楽の楽しみ方が「興行主導」に移行し、ライブを中心にして収益構造を組み立てる流れが固まっていきました。また、AKB48の大ブレイクを支えた「CDを“握手をする権利が付随した商品”と捉え直して販売促進を加速させる手法」は、2010年代に突入する時点ですでに死に体になりつつあったCDビジネスを延命させることとなりました。

このどちらにも悪影響を及ぼす可能性のある新型コロナウイルスの一件は、音楽業界にとって甚大なインパクトをもたらすかもしれません。ただ、そういった影響を前向きなものとして扱うチャンスも残っているのではないかと思います。今回生じた制約を、接触に偏りすぎたアイドルカルチャーを是正するきっかけにすることはできないか。ライブ配信を活用した新たな楽しみ方が確立されることで、コンサート会場の不足などにも対処し得る体制を構築できないか。考えようによっては様々な可能性を見出すこともできるはずです。

2020年が日本にとっていろいろな意味で「節目の年」となることは間違いないと思います。音楽業界にとっての2020年が「新しい変化の兆しが生まれた年」となるようなアクションを期待したいところです。