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尹政権も文前政権と同じく「竹島」で猛抗議! 支持率急落が原因?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
岸田文雄首相(左)と尹錫悦大統領(岸田首相と尹大統領のHPから筆者キャプチャー)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は大統領選挙期間中の昨年11月11日に自身のフェイスブックに「残念ながら文在寅(ムン・ジェイン)政権の4年間の韓日関係は(これ以上)悪化できないところまで悪化してしまった」とし、「日本という隣人を地球上の別の場所に移すことはできない。良くても悪くても共に生きる知恵が必要な理由」と指摘していた。

 さらに、党本部で相星孝一・駐韓日本大使と面会(11月26日)した際には文前政権の対日外交について「対日関係を国内政治に巻き込んだ」として自身が大統領になった場合、政治利用しないことを約束していた。

 そして、大統領選挙投票日の約1か月前に行った韓国日報(2月7日付)とのインタビューでは日韓の長年の懸案である領土問題について「独島(竹島)は何はともあれ、我々が支配しているわけだから」と述べ、(大統領になったら)日本の領有権主張に対していちいち反論するようなことはしないとも言っていた。

 実際に、尹大統領は領有権については「堂々とした立場を堅持する」としながらも昨年12月に日本が金昌龍(キム・チャンリョン)警察庁長官(当時)の竹島上陸を激しく抗議した際に大統領候補の中では唯一日本批判を控え、沈黙を守っていた。

 ところが、尹政権は今朝、岸田内閣が閣議決定した2022年版防衛白書に竹島が記述されていたことに反発し、「歴史的、地理的、国際法的に明白な我が固有の領土である独島に対して不当な領有権主張を繰り返したことを強く抗議する」との論評を出しただけでなく、駐韓日本大使館の林誠政務公使を外交部に呼び、強く抗議し、即刻撤回するよう求めていた。また、国防部も日本の駐韓武官(海上自衛隊防衛駐在官)を竜山の国防部に呼び、「二度とこうした行動を取らないよう厳重に促す」と口頭で抗議していた。

 外交部は「不当な主張を反復することは未来志向的な韓日関係構築にプラスにならないということを自覚すべき」と促し、「独島に対するいかなる挑発にも断固対応する」と、日本に警告を発していた。また国防部も「独島領有権を棄損するいかなる挑発にも断固対応する」と強い言葉で日本を非難していた。

 日本政府が朴進(パク・チン)外相の訪日(18~20日)後に防衛白書を閣議決定したことは韓国に対する配慮との見方もあるが、尹政権は日本の配慮とは関係なく、歴代政権同様に抗議の意思を表明したことになる。

 朴外相は知日派で、日韓関係修復に意欲を示しているが、領土問題では俗に言う「対日強硬派」である。

 国会議員出身の朴外相は外交委員会委員長時代の2010年4月に竹島に上陸した過去があり、2011年8月に鬱陵島訪問を計画した自民党の「領土に関する特命委員会」の新藤義孝と稻田朋美, 佐藤正久氏ら3人の議員の訪韓を阻止した中心人物でもある。

 当時、朴外相が代表をしていた21人の超党派議員から成る「アジア文化経済フォーラム」は新藤義孝議員らの鬱陵島訪問は「韓国の主権を侵害し、独島を紛争地域化することにある」と断じて、李明博(イ・ミョンパク)政権に対してビザを発給しないよう要請していた。

 尹政権の今回の日本への抗議と大統領の支持率との因果関係は不明だが、尹大統領の支持率は世論調査会社「韓国ギャラップ」の7月第2週(12~14日)の調査では「評価する」が危険水位の32%、「評価しない」が53%となっていた。

 ところが、今朝発表された第3週(19~21日)の調査でも「評価する」は32%のままだが、「評価しない」はなんと7ポイントも上昇していた。

 大統領就任(5月10日)から2か月強で「不支持」が60%を超えたのは尹大統領が初めてである。ちなみに、文在寅前大統領は就任から4年目の2021年4月(第3週)、また2017年に弾劾、罷免(3月10日)された朴槿恵(パク・クネ)元大統領は就任3年目の2015年1月(第3週)の時に「不支持」が60%を超えていた。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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