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日韓 今度は海洋資源を巡って対立 日本の天然ガス開発は韓国の「EEZ」外か、内か?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
天ガス探索・試掘地点(INPEXのHPから)

 日韓関係は元慰安婦や元徴用工問題などで対立状態にあるが、歴史認識の葛藤は政治・経済に拡大することはあっても力の行使による紛争に繋がることはない。但し、領土、領海問題と資源をめぐる争いは一歩対応を誤れば、軍事衝突を引き起こす恐れがある。

 周知のように日韓の間では長年にわたって領土問題が横たわっている。日韓の狭間にある小島を巡って両国とも「歴史的にも国際法的にも我が国の固有の領土である」と領有権を主張し、対立してきた。

 日本の外相が外交演説で竹島の領有権を主張するのは安倍晋三政権下の2014年から8年連続となるが、その度に韓国外務省は「座視できない」として抗議声明を出している。

 今年も林芳正外相は恒例の外交演説でいつものように領有権を主張し,これに対して韓国外交部もまた慣例に従い、即時抗議していた。島の帰属をめぐって島根県と争っている慶尚北道の李轍雨(イ・チョル)知事は糾弾声明を出し、日本に謝罪を求めていたが、これもまた、毎度お馴染みの道民、国民向けのパフォーマンスである。防衛白書が発表された時も、また、2月22日の竹島の日にも韓国では同じような現象が起きる。

 何かといがみ合う日韓だが、2018年12月に発生した日本のP-1哨戒機への韓国駆逐艦のレーダー照射事件など偶発的な事件はあっても、韓国が陸海空軍を動員し、毎年上半期と下半期の2回にわたって実施している「独島(竹島の韓国名)防衛訓練」に海上自衛隊や海上保安庁が「対抗措置」を取らない限り、フォークランド紛争(英国とアルゼンチンとの間で1982年に勃発した軍事衝突)が起きることはないだろう。

 日韓の間では「領土問題」よりもむしろ紛争が起こりかねないのは「領海」「資源」を巡る対立だ。「領海問題」や「資源問題」では「領土問題」同様に両国共に譲ることはあり得ないからだ。

 一昨日(17日)、日本のエネルギー開発大手の国際石油開発帝石会社(INPEX)が30年ぶりに韓国との狭間の日本海で石油及び天然ガス探索、開発に乗り出すとの情報に韓国が敏感に反応し、騒ぎ出し始めた。

 技術調査費(約330億円)の半分を出資する独立行政法人の日本石油天然ガス金属鉱物資源機構(JOGMEC)が公開したところによると、試掘場所は山口県から北に約150km、島根県から北西に約130km離れた,水深約240mの地点で、日本のEEZ境界線の内側に該当しているが、公開された地図上では、慶尚北道の慶州市海岸から東に約150~160km離れた地点と重なっていた。

日本海における探索・開発状況(INPEXのHPから)
日本海における探索・開発状況(INPEXのHPから)

 報道が明るみに出るや、韓国政府は昨日、駐日韓国大使館を通じて日本の外務省に韓国側のEZZを侵犯しているかどうかを確認するため座標の確認を要請したところ、外務省は「民間の企業活動に関連した事案のため具体的な座標を提供できない」と拒否したうえで「韓国のEZ内ではない」と回答したとのことだ。

 日韓の間は双方のEEZが重なっている「中間海域」が存在しているが、協定が締結されていないためEEZの海上境界は未だに確定されていない。

 この「中間海域」を巡ってはこれまで何度もいざこざが起きている。海上保安庁の測量船が2020年8月に長崎県沖の日本の排他的経済水域内(EEZ)で調査をしていたところ、韓国公船から調査の中止を要求される事件が起きている。また一年前の昨年1月にも同じ場所で海上保安庁の測量船「昭洋」が地質調査をしていたところ、韓国海洋警察庁の警備艇が現れ、無線で「ここは韓国の海域だ」として調査の中止を要求される事件が発生したばかりだ。

 日韓両国はかつて、小泉政権下の2006年に竹島周辺海域での海洋調査実施を巡って海上保安庁と海洋警察隊が睨み合ったことがあった。

 韓国の海洋研究院所属の海洋調査船が日本の抗議を押し切って竹島周辺海域を含む日本海海底地形の韓国名を新たに登録しようと独島周辺海域で調査を実施した際、海上保安庁が巡視船を派遣し、調査中止を要求した。

 日本は当時、韓国が中止しないため対抗上、最新のデータに基づく海図を作成する準備を進め、同年4月に「6月30日まで竹島周辺海域で調査を実施する」との「水路通報」を公表した。韓国はこの日本の動きに対して今度は周辺海域に非常警戒令を発令し、警備艇約20隻を集中配備し、「日本の調査船が韓国の主張するEEZに進入すれば、実力行使も辞さない」との構えに出た。

 この時の対立は外務次官協議によって▲日本政府は海洋調査を中止する▲韓国政府は国際会議で海底地形の韓国名表記を提案しないことで合意文が交わされ、海上での衝突という最悪の事態は避けられたが、当時の官房長官だった安倍晋三元首相はその後、当時の状況について「銃撃戦が起きる寸前だった」と回顧していた。

(参考資料:未解決の「日韓紛争」ランキング「ワースト10」)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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