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北朝鮮の次の手は? 極超音速ミサイルの次は軍事衛星!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
2012年に発射された衛星発射ロケット(左)と通信衛星(朝鮮中央テレビから)

 北朝鮮はミサイルについてはやはり「有言実行の国」だった。

 1年前の労働党第8回大会で金正恩(キム・ジョンウン)総書記は「国防科学発展及び兵器システム開発5か年計画」を示し、核兵器の小型・軽量化と超大型核弾頭の生産▽極超音速滑空ミサイル導入▽1万5千kmの射程圏内を正確に打撃できるICBMの保有▽原子力潜水艦と潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の保有▽軍事偵察衛星の保有を5大課題に掲げていた。

 優先順位は付けていなかったが、極超音速滑空ミサイルの保有は「最も重要な戦略的意義を持つ」(金総書記)ものであったらしく、北朝鮮は早くから研究開発を進め、製作の段階に入っていた。そして、昨年9月28日に初の発射テストを行い、今年1月5日の2度目の試験を経て、3度目の発射で成功させている。

 速度はマッハ3から6、そして10に達し、飛距離も500km、700km、1000kmと伸びていた。北朝鮮の発表によると、発射されたミサイルから分離された極超音速滑空飛行戦闘部は距離600km辺りから滑空再跳躍し、初期発射方位角から目標点方位角へ240km強い旋回軌道を遂行して1000kmの水域の設定標的に命中している。日本は「弾道ミサイルならば射程は700km」と推定していたが、目標地点までの数百kmは旋回軌道しながら低空で飛んでいたためレーダーで捕捉できなかったようだ。

 試射は「大成功だった」として金総書記は開発に携わった国防科学院の関係者らを党本部庁舎に招き、記念写真を撮っていたが、これまでも大陸間弾道ミサイル「火星14型」や「火星15型」の試射が成功した際には決まって関係者らと記念写真を撮っていた。これは試射が事実上、終了したことを意味しているが、唯一、中長距離弾道ミサイル「火星12型」だけが例外だった。

 「火星12型」は2017年5月14日に試射が成功し、立ち会っていた金総書記は嬉しさのあまり関係者らを抱きかかえ、記念写真に納まっていたが、「火星12型」の発射はその後も続けて行われていた。新たに編成された戦略軍ミサイル部隊がこの年の8月と9月に実戦配備に向け実際に発射してみせたのだ。

 仮に、極超音速ミサイルの開発が終了したとの前提に立てば、北朝鮮の次の目標は何か?SLBMの発射が想定されるが、軍事衛星の発射もあり得る。自力のロケットによる衛星発射は1万5千kmの射程圏を精密に打撃できる大陸間弾道ミサイルに繋がるからだ。

 金総書記は党第8回大会での演説で「近い内に軍事偵察衛星を運用し、偵察情報収集能力を確保する」と公言していた。

 北朝鮮は打ち上げに失敗した2回を含め過去6回、西側諸国が長距離弾道ミサイル「テポドン」と称するロケットで人工衛星を打ち上げているが、最後に手掛けたのが2016年2月の「光明星4号」の発射である。

 金総書記は「光明星4号」発射直後に「実用衛星をもっと多く発射せよ」と担当幹部らに直接指示し、2017年の新年辞では「これ(2016年2月の打ち上げ成功)により宇宙征服に向かう道が敷かれた」と演説していた。同年12月25日付の労働新聞には「平和的宇宙開発を一層推進し、広大な宇宙を征服していく」との記事が掲載され、人工衛星の開発が重要な国策になっていることを明かしていた。しかし、2016年2月を最後に北朝鮮は一度も衛星を発射していない。

 北朝鮮は国防計画同様に宇宙分野でも国家5か年計画がある。第1次国家宇宙開発5か年計画は2012~2016年までだったが、この期間は3度打ち上げられている。しかし、第2次計画がスタートした2017年からは一度も行われていない。本来ならば昨年で期限切れだが、一度も行っていないことから期間が延長されている可能性も考えられる。

 北朝鮮の国連代表は一昨年10月に国連総会第4委員会での演説(15日)で、「宇宙開発事業を自国の実情に合わせてたゆまず進める」と表明していた。

 北朝鮮はすでに数メートルの解像度を持つ重さ100kg以上の地球観測衛星と静止軌道に投入する数トン以上の通信衛星を完成させている。北朝鮮の国家宇宙開発局(NADA)の幹部が2017年に訪朝したロシアの軍事専門家に明言していた。

 また、NADAは推進力を3倍に増やした新型の静止衛星運搬ロケット用大出力エンジンを開発し、その地上噴出実験を2017年には成功させている。米航空宇宙研究機関の「エアロスペース」は当時、「38ノース」への寄稿文で「北朝鮮が公開したエンジンは小型無人用探索装備を発射するには十分だ。停止軌道に通信衛星など多様な低高度偵察衛星を発射するのに適している」と解析していた。商業衛星も使い方によっては軍事衛星となる。

 さらに、米朝首脳会談のため一時解体を表明していた平安北道・東倉里にある西海衛星発射場の復旧・補修工事も2019年3月末には終了している。

 北朝鮮の人工衛星は過去6回のうち2回は2月(7日)と4月(13日)に発射されていた。北朝鮮は今年、2月16日の金正日総書記の80歳の誕生日と4月15日の金日成主席の生誕110周年を「民族大慶事」として盛大に祝うと予告している。

 最短で2月の発射も100%ないとは断言できないが、現実には北京冬季五輪開催中であることからできないだろう。そうなると、北京五輪期間中の2月は見送り、4月の発射となる公算が高い。というのも、失敗に終わったものの2012年4月13日の発射は2日後の金主席生誕100周年を祝って行われていたからだ。

 米国が北朝鮮の中止要請を無視し、3月に米韓合同軍事演習を強行すれば、その対抗措置としての軍事衛星の発射は決してあり得ない話ではない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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