米国の対外情報発信メディア「自由アジア放送」(RFA)が昨日、世界中で大ヒットしている韓国ドラマ「イカゲーム」のUSBが中国から北朝鮮に密かに持ち込まれ、それを見た若者らが「重刑に処せられた」と伝えたことを「朝鮮日報」や「中央日報」など韓国メディアが今朝一斉に報じていた。ショッキングな出来事だけに報じるのは当然だろう。

 「RFA」によると、先週、咸鏡北道清津市の高級中学校(高校)の生徒6人が密かに「イカゲーム」を視聴し、社会風紀を取り締まる「109常務連合指揮部」の検閲で摘発され、処罰されたとのことだ。

 この事件は党中央に報告され、韓国ドラマのUSBデバイスを中国から持ち込んで販売した住民は銃殺され、これを購入した生徒は無期懲役、一緒に視聴した友人を含む生徒ら5人は5年の労働教化刑(懲役)を受けたというのが放送内容であった。

 党中央は中国との国境が封鎖されている状況下でUSBが持ち込まれたことを深刻に捉え重刑に処したとのことだが、北朝鮮は昨年1月から新型コロナウイルス感染症防疫で中国との国境を全面封鎖している。往来は厳禁で、不法入国者は発見され次第射殺される。一体どうやって持ち込んだのだろうか?国境警備員に賄賂を渡して見逃してもらったのか、それとも決死の覚悟で密入国したのだろうか?

 銃殺された住民が中国から持ち込んだUSBを国境から遠く離れた、日本海に面した清津市の学生が中身もわからないまま購入したと言うのも理解に苦しむが、何よりも「RFA」はどうやって事件発生から僅か1週間でこの情報をキャッチできたのだろうか?

 北朝鮮の内部情報筋、それも咸鏡北道の司法当局筋からの情報とのことだが、電話で聞いたのか、メールで知らされたのか、これまた関心のあるところだ。電話・通信を傍受し、盗聴に長けている北朝鮮で外部とのやりとりや情報交換が可能なのだろうか?

 記事には「今日、平壌で金と権力を持つ人々は『イカゲーム』に溺れている」との平安南道平陽市に住む住民の声も載っていたが、「RFA」に情報を漏らしたことが発覚すれば、「米帝に情報を流出した」と「スパイ罪」での処刑は免れない。金銭目当てからではなく、北朝鮮の惨状を外部に伝えなければならないとの使命感から西側のメディアに情報を提供する「勇気ある」情報筋がいること自体が驚きだ。

 「RFA」によれば、「イカゲーム」だけでなく、「愛の不時着」など韓国のドラマや映画が北朝鮮の人々の間でも広まっているとのことだが、統制、監視下にある、密告社会の北朝鮮でそこまで広まるものだろうか?広まっているならば、それだけタガが緩んでいるのだろう。

 この他にも内緒で見れるぐらい各家庭にパソコンなどの機器があるのだろうか?電力事情が良くないのに電源は問題ないのだろうか?等など様々な疑問が湧く。

 今回の摘発は韓国や米国などの資本主義映画やドラマを見たり保存したりする人に対して最高刑を科す「反動思想文化排撃法」が成立して以来、初の摘発事件とのことだが、この悪法が最高人民会議で公布されたのは昨年12月。「韓流」が流行している割にはこれまで1件も摘発されなかったのもこれまた実に不思議だ。

 「RFA」は9日前(1月15日)にも「最近、平壌など都市地位で金持ちや若者の間で『イカゲーム』が密かに視聴されている」として、平安南道平城市に暮す住民の話を伝えていた。

 この住民もまた「先週平壌で換金の仕事をしている弟の家で『イカゲーム』を見てきた。金のある、権力もある者は今ドラマにはまっている」との最新の平壌情報を伝えていたが、摘発されれば弟もろとも死刑に処せられる恐れがあるのにあえて外部に情報を伝える必然性はどこにあるのだろうか?使命感からやっているならば立派の一言に尽きる。

 しかし、いくら「韓国ドラマを見て、発覚しても金さえ渡せば、司法機関の幹部を手なずけることができるので『イカゲーム』の視聴者が増えるだろう」と言っても、命を賭けて見るほどのドラマとはとても思えないのだが。。。