日本政府が金昌龍(キム・チャンリョン)警察庁長官の竹島(韓国名:独島)上陸を問題視し、日米韓外務次官会談後の共同記者会見を拒否したことは様々な波紋を呼んでいる。

 日本国内では「竹島上陸を容認できない」とする毅然たる姿勢を示したとして評価されているが、韓国では「外交非礼」との批判が、米国では「ホスト国としてのメンツが潰された」との声が上がっている。

 今回の日本の対応への評価はさておき、正直言って、「竹島」を巡る日本の韓国への「毅然たる外交」には首をかしげざるを得ないというか、ちぐはぐな面も多々ある。その一例を挙げてみる。

 金警察庁長官が竹島に上陸したその日(16日)に来日した韓日議員連盟の朝鮮通信使委員会のメンバー(6人)の中に竹島に上陸した成一鍾(ソン・イルジョン)議員が含まれていた。成議員は昨年11月も韓日議員連盟訪日団の一員として来日していた。

韓日議員連盟朝鮮通信使委員として今月15日に来日した成議員(右端)
韓日議員連盟朝鮮通信使委員として今月15日に来日した成議員(右端)

 最大野党「国民の力」の前身である「セヌリ党」「自由韓国党」「未来統合党」で院内副代表を務め、現在は戦略企画部の責任者でもある2回生議員の成議員は2016年8月15日、そして2018年11月26日に2度、日本からすれば「歴史的にも国際法的にも日本の領土」である竹島に「不法上陸」していた。

 成議員は島根県と帰属を巡って対立している慶尚北道出身の議員ではない。忠清南道出身(端山市)議員である。過去に2度も竹島に上陸した国会議員は「国民の力」の党首の座を36歳の李俊錫(イ・ジュンソク)代表と争って敗れた「美しき野党のマドンナ」こと羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)元議員の2人しかいない。

 成議員は、一度目は与党の一員として、2度目は野党の立場から「国会独島訪問団」に加わっていた。

 日本政府は2016年の時も、2018年の時も韓国政府に中止を申し入れ、また抗議もしていた。それにもかかわらず、成議員は日本の「勧告」を無視し、1度ならず2度も上陸していたのである。

 成議員は1度目の時は出発前に出演したCBSラジオの番組で「日本は外交的に窮地に立たされる度に独島を外交カードに使おうとしている」と日本を批判し、日本の抗議を「一考の価値もない」と述べ、撥ねつけていた。

 成議員は2度目の8人の議員から成る訪問団の時は実務を取り仕切っていた。日本の抗議を全く意に介さない成議員は「独島は我が国の心臓であり、象徴である」と述べ、「持続的に独島を支援し、多くの国民が独島を訪れるようにしたい」と、韓国人の独島観光化を推進していく決意を表明していた。その結果、韓国人の竹島上陸は2012年には約20万5千人だったのが、2019年には25万8千人に増えていた。

 韓国国会議員の竹島上陸は2005年から始まったが、この年には後に大統領になった朴槿恵(パク・クネ)議員が、2008年には今年4月まで総理だった丁世均(チョン・セギュン)議員が、2012年には来年3月の大統領選挙に向け尹錫悦(ユン・ソギョル)前検察総長と野党大統領候補の座を争った劉承旼(ユ・スンミン)議員が、そして2016年には現大統領の文在寅(ムン・ジェイン)氏が上陸を決行していた。

(参考資料:「竹島」に上陸していた「不法入国者」文在寅大統領の来日に問題はないのか?)

 しかし、日本は外務省レベルで抗議はするもののこれまで竹島に上陸した韓国の政治家に対して直に注意、警告、あるいは来日した際に事情聴取したことは一度もない。

 超党派の「独島を守る国会議員の集い」が2011年11月に竹島で「美しい我らの領土独島音楽会」を開いていたが,呼びかけ人の朴宣映(パク・ソンヨン)議員が1か月後の12月に来日しても何のお咎めもなかった。韓国政府がこの年の8月に竹島への中継地である鬱陵島視察を計画した新藤義孝、稲田朋美両衆院議員と佐藤正久参院議員ら自民党議員らの入国を認めず、強制退去処分を科したのとは対照的であった。

 韓国国会特別委員会は2013年に韓国政府に対して靖国に参拝する日本の閣僚や国会議員の名前をすべて公開するよう韓国政府に迫っていたことがあった。韓国への入国を禁止するための措置であったことは言うまでもない。

 日本政府もその後、韓国の歌手やタレントの入国を竹島絡みで拒否したケースはあったものの日本の抗議を無視し、堂々と竹島に上陸した政治家や国会議員に対してはこれまで1件もない。不法入国や領海侵犯には法治国家として入管法などに基づき何らかの法的処分をしなければならないが、韓国の国会議員には一度も適用されたことはない。

 昨年11月の韓日議員連盟の訪日には成一鐘議員と共に金振杓(キム・ジンピョ)会長も来日していたが、金会長もまた、2008年7月に丁世均前総理と共に竹島に上陸していたが、竹島上陸を問われることはなく、不問にされていた。

 共同記者会見を拒否した理由が「韓国警察庁長官の上陸は到底、受け入れることはできない」ことにあるならば、竹島に上陸した政治家についても「毅然たる対応」をしても良さそうなものだが、日本の寛大さの表れとして入国が許されているならば韓国議員の竹島上陸はこれからも後を絶つことはないであろう。

(参考資料:日本が「不法占拠」とみなす知られざる韓国の竹島(独島)「実効支配」の現況)