朝鮮問題とは関係のない、台湾問題との関連で北朝鮮の朴明浩(パク・ミョンホ)外務次官が昨日(22日)興味深い談話を発表していた。

 台湾問題との関連で北朝鮮が談話を出すのは異例である。それもバイデン米大統領が昨日(21日)、台湾が中国から攻撃された場合に「米国は台湾を守る責務がある」と米CNNの番組で語った直後だけに気になる。

 国営通信の朝鮮中央通信が伝えた朴次官の談話のポイントは以下のとおりである。

 「台湾の情勢は朝鮮半島の情勢と決して無関係ではない。台湾問題に対する米国の無分別な干渉は朝鮮半島の危うい情勢緊張を一層促しかねない潜在的な危険性を内包している」

 「南朝鮮(韓国)駐屯米軍兵力と軍事基地が対中圧迫に利用されており、台湾周辺に集結している米国と追随勢力の膨大な武力がいつでも我々を狙った軍事作戦に投入され得るということは周知の事実である」

 「敵対勢力が、朝中両国が共同して台湾と朝鮮半島で軍事的緊張を引き起こしかねないという盗人猛々しい強弁を張りながら我が国と中国を狙った全方位的な武力配備を積極的に促している現実は、米国が自分らの覇権的地位を維持するために社会主義国家である我が国と中国を共に圧殺しようと企んでいるということの実証である」

 「我々は台湾問題に関連する米国の覇権主義的行為を朝鮮半島情勢との連関の中で覚醒を持って引き続き注視するであろう」

 朝鮮中央通信は朴次官の談話と同時に10月1日の中国建国72周年に祝電を送った金正恩(キム・ジョンウン)総書記への習近平主席の返電も紹介していた。習主席の返電は4日前の19日には送られていた。

 習主席は「中朝関係を極めて重視している」と述べ、「戦略的意思疎通を強化し、親善協調を深化させ、相互の積極的支持を導いていくよう中朝関係を新たな段階に主動する用意がある」と述べ、祝電で「反中対決策動粉砕のための中国の戦い」に支持を表明し、「地域の平和と安定を守るための共通の戦いでの戦略戦術的協調と同志的団結」を強調していた金総書記のエールに応えていた。

 北朝鮮が同盟国である中国に連帯を表明するのは当然のことだが、実際に有事の際には北朝鮮は後方支援するのだろうか?

 中朝間には「中朝友好協力及び相互援助」に関する条約がある。その第2条には「一方が、第三国の国家又は国家連合から武力侵攻を受けて戦争状態になった場合、もう一方は力を尽くして速やかに軍事的援助及びその他の援助を提供する」ことが謳われている。これを盾に北朝鮮が軍事面で中国を側面支援することは十分に考えられる。北朝鮮にとって中国の「敗北」は北朝鮮の対米戦略の破綻を誘発するからである。

 想定される北朝鮮の協力としては米国のような直接的な介入や援軍などの軍事支援ではなく、台湾有事の際に投入される駐韓米軍と在日米軍を牽制する「助っ人」としての役割が考えられる。ミサイルの発射を繰り返し、朝鮮半島の緊張を高め、駐韓米軍と駐日米軍の動きを封じ込めることである。仮にこうしたシナリオがあるとすれば、中国は今後、北朝鮮のミサイル発射を黙認するどころか、むしろ積極的に協力、奨励することが考えられる。

 もう一つは、北朝鮮の軍港を中国海軍に使用させるシナリオである。

 北朝鮮はかつて金正日(キム・ジョンイル)総書記が急死する4か月前の2011年8月に中国海軍所属の練習艦「鄭和」とミサイル護衛艦「落陽」等から成る訓練艦隊を中国の大連港から日本海に面した元山への入港を許可したことがあった。

 中国艦隊の寄港は1996年以来、実に15年ぶりだったことや「中朝友好協力相互援助条約」50周年にあたる年だったことから北朝鮮でも大きく報道されていたが、中国艦隊の指揮官の一人は歓迎式典での演説で「中朝の軍事関係を強化するための重要な外交行動である」と挨拶していた。

 地図を見れば、一目瞭然だが、北朝鮮の東側、即ち日本海に面した清津や元山の港は日本列島のどって腹を望む位置にある。日本海に出られない中国海軍がこれらの港を軍港として使用するような事態になれば、あるいは北朝鮮の飛行場を空軍基地として利用することになれば、日本にとっての軍事的脅威は半端ではない。