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韓国人ノーベル受賞者が輩出されないのはなぜ? 日本の28人対して韓国は1人

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
林惠淑科学技術情報通信相と若手科学技術人との対話(科学技術情報通信部HPから)

 今朝の韓国経済紙「アジア経済」に興味深い記事が載っていた。「またやって来るノーベル賞のシーズン・・・韓国人受賞者が出ない真の理由」と題した記事だ。

 経済では「日本に追いつき、追い越せ」を合言葉に日本を猛追しているのにどうしてノーベル賞の受賞では日本の足下にも及ばないのか、韓国人の多くは素朴な疑問を抱いているようだが、その訳についてこの記事はそれなりに分析に努めていた。

 同紙のインターネット版には「日本は24人も貰っているのに・・・韓国はなぜノーベル賞を取れない」との見出しの下、ストレートに日本と比較していたが、日本は正確には米国籍者を含めると28人で、国別ランキングでは世界で7番目に多いノーベル賞受賞国である。化学、生理学・医学、物理学、文学などの分野で受賞している。これに対して韓国はたったの1人、それも平和賞である。

 金大中(キム・デジュン)元大統領が2000年に南北首脳会談を初めて実現させたことで受賞している。ちなみに平和賞は日本も佐藤栄作元首相が1974年に受賞している。

 今年のノーベル賞の受賞は10月4日(現地時間)から生理学・医学賞を皮切りにそれぞれの分野の受賞者が発表されるが、どうやら今年も韓国からは昨年に続き受賞者が出そうにもない。ノミネートされている韓国人は一人もいないからだ。一昨年はノーベル賞受賞の選定を前に韓国研究財団が独自に十数人の候補の名を挙げていたことで大いに盛り上がり、「今年こそは」との期待が高まったが、蓋を開けてみると全滅だった。

 韓国は先週(16日)所管の科学技術情報通信部が科学技術分野の人材養成のため「青年の日」(9月18日)に際して林惠淑(イム・ヘスク)長官と若手科学技術者らとの対話の場を設けていた。

 科学技術系民間団体の「韓国科学技術団体総連合会」も協力し、若手の研究者らから支援策に関する要望を聞いていたが、出席者の1人である韓国科学技術院のキム・ウォンジュン教授のデーターを駆使した韓国の現状分析が目を引いた。

 キム教授は「韓国の科学技術の水準は決して低くはない」と述べ、その裏付けとして2020年時点で韓国の科学力、技術競争力がそれぞれ世界3位、13位と高いこと、また韓国の国内総生産(GDP)対比総研究投資比率が世界2位であり、人口1千人あたりの研究者数も世界1位であるとするデーターを示していた。

 それにもかかわらずノーベル賞を取れないのは「ノーベル賞関連の科学技術インフラが脆弱である」ことに原因があるとして具体的に▲若い学者が自由に研究できる環境が整っていないこと▲失敗を意に介さず忍耐強く研究するファンディング制度が不十分であること▲誰もトライしようとしない研究分野への投資や基礎科学への十分な投資が担保されていないことなどを挙げていた。要は、若い研究者や学者が生活費などを心配せずに研究に没頭できるような環境にないのが問題のようだ。

 この日の対話の結論として「若い人々が自由かつ経済的に安定した状況で長期的に独創的かつ創意的に研究に没頭できる環境を整えてこそ韓国人のノーベル賞受賞が可能になる」と結んでいたが、韓国からいつになったら「ノーベル賞受賞者」が出るのだろうか?

(参考資料:ノーベル賞「27個の日本」と「1個の韓国」の差はどこから来る?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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