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「ベルリン慰安婦像」設置から1年 撤去か、永久存置か?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
ベルリンの中心地に設置された「慰安婦像」(在独「コリア協議会」が撮影)

 猛暑が過ぎ、涼しい秋の到来となったが、日韓にとっては「過去の問題」や歴史認識を巡ってまだまだ「熱い攻防」が続きそうだ。

 「最悪の日韓関係」に陥った要因となった元慰安婦、元徴用工問題と並ぶ「懸案」の一つ、韓国人B,C級戦犯の補償問題は戦犯らの訴願が憲法裁判所によって却下されたことで係争に発展せず、日韓両政府にとっては事なきを得たのも束の間、昨年シュレーダー元首相まで巻き込み、国際的な関心を呼んだベルリンの慰安婦像問題が待ち受けている。一難去って、また一難である。

(参考資料:欧州の中心国・ドイツを抱き込め! 日韓の対立は外交戦へ!)

 ブランデンブルク門やベルリン中央駅などがあるベルリンの中心地、ミッテ区の公共の場に「平和の少女像」と称される慰安婦像が設置されてから早いもので1年になるが、設置期限が今月25日と迫っていることからミッテ区は今週中にも撤去か、永久存置かの決定を下さなければならない。

 「ベルリン慰安婦像」はドイツ在住の韓国人団体「コリア協議会」が主導し、ミッテ区の許可を得て、昨年9月25日に1年期限で設置されたが、慰安婦像設置は「2015年の日韓慰安婦合意に反する」とする日本政府の抗議もあってミッテ区は急遽許可を取り消し、10月7日にフォンダッセル市長の名で「10月14日までに撤去せよ」との行政命令を出していた。ところが、これに反発した「コリア協議会」が「1年の期限付き設置を認められていた」として異議申し立てを行う一方、10月12日に行政裁判所に撤去命令執行停止仮処分を申請したことで撤去処分は保留となってしまった。

 日本はこれまでにフライブルク市に建立が計画されていた慰安婦像を在独日本大使館、それにフライブルク市と姉妹都市を結んでいる愛媛県の松山市などが働きかけ、設置を阻止していたことや一昨年もベルリン北部のブランデンブルクのナチ強制収容所記念館(Ravensbruck Memorial)に「コリア協議会」が寄贈した慰安婦像を撤去させた「実績」もあって総力を挙げて、「ベルリン慰安婦像」の設置阻止に動いた。

 実際に在独大使館、総領事のみならず茂木敏充外相までが電話でハイコ・マース・ドイツ外相に撤去協力を要請し、加藤勝信官房長官も「政府としては撤去に向けてさまざまな関係者にアプローチしていきたい」と乗り出し、10月21日には外務省のホームページに「慰安婦問題に関する我が国の対応」のドイツ語版を載せ、慰安婦問題に関する日本の立場、対応を伝えていた。また、自民党も有志議員82人(衆議院議員64人、参議院議員18人)が連名で市民団体の執行停止仮処分申請で像の撤去手続きが中断状態にあった11月18日にミッテ区の全議員に手紙を送り、撤去を求めていた。

 しかし、日本の外交努力も虚しく、ミッテ区議会は12月1日に全体会議を開き、設置期限を2021年9月25日まで延長することを出席議員29人のうち24人が賛成し、決議してしまった。区議会のフランク・ベルターマン議長自身が永久存置に積極的だったこともあって区議会は今年3月1日には区長対してこのまま設置、保存するよう求める決議まで採択している。

(参考資料:「ベルリンの慰安婦像」が撤去保留へ! 日本のロビー外交が裏目?)

 永久設置を求めている「コリア協議会」のハン・ジョンファ代表は「ベルリンの多くの市民は少女像をとても大事にしてくれているので区が永久存置を認めてくれるものと思っている」と楽観視しているが、認可権限を持っている区長はまだ結論を出していない。

 文在寅政権は「民間の自発的な動きに政府が関与するのは望ましくない」と、日本政府の対応を批判している手前、外交的な働きかけを控えているが、与党「共に民主党」系の国会議員113人が連名で撤去に抗議する書簡をドイツ政府に伝達していた。また、ソウルの城北区長と京畿道の義政府市長が設置を求める書簡を送っていた。昨日も、城北区では永久存置を求めるパフォーマンスが行われたばかりである。ミッテ区議会には城北区の高校生らから永久存置を嘆願する手紙が寄せられているが、その数は4千通に達している。

 日韓の論争となっている慰安婦像は2011年12月14日に初めて駐韓日本大使館前に設置されて以来、この10年間で韓国国内に82カ所、海外に16カ所設置されているが、欧州では唯一ドイツだけである。

(参考資料:「慰安婦像」 ベルリンの次はドレスデン!欧州の博物館では初の展示!)

 今年4月にはドレスデンの公共博物館に、7月にはミュンヘン都心にあるギャラリーに設置(9月15日まで)されているが、ドイツ南部のバイエルン州ヴィーゼントのネパール・ヒマラヤパビリオン公園内(2017年3月設置)とフランクフルトのラインマインにある韓国人教会前(2020年3月設置)の像を含めるとすでに5個になる。

(参考資料:「慰安婦決議案を阻止せよ!」 米国での日本のロビー活動の実態 上)

(参考資料:「慰安婦決議案を阻止せよ!」米国での日本のロビー活動の実態 下)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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