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「竹島」に上陸していた「不法入国者」文在寅大統領の来日に問題はないのか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
大統領になる前年に竹島に上陸した文在寅大統領(独島警備隊提供)

 今朝の「読売新聞」によると、韓国の文在寅大統領が東京五輪の開会式に出席するため来日する方向で日韓両政府が調整しているようだ。韓国側からの要請で日本側も受け入れに前向きのようだ。

 韓国側からすれば、安倍首相(当時)が2018年2月に韓国の平昌(ピョンチャン)で開かれた冬季五輪に出席してくれたことへの「答礼」だが、日韓首脳会談を避けている菅首相にとって本来ならば、文大統領は「招かざる客」の筈だ。しかし、「コロナ禍」の中、執念を燃やす東京五輪成功のため外国の首脳が1か国でも多く参加してくれるのはウェルカムのようだ。まして、韓国では東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の公式ホームページの日本地図に竹島(韓国名:独島)が表示されていることに反発し、ボイコットの声が日増しに高まっているが、文大統領の来日は事実上、韓国の参加が担保されたことに等しいことになる。

 しかし、文大統領の来日には日本がクリアしなければならない複雑な問題がある。元慰安婦・元徴用工絡みの問題ではない。文大統領には「竹島」に上陸した「過去」があることだ。

 在任中ではなく、大統領になる前、即ち野党時代の2016年7月25日に竹島を電撃訪問している。観光客は日帰りが一般的だが、文氏はよりによって1泊していた。島に駐在する40人の警備隊員らと夕食を共にし、管理事務所で一夜を過ごし、26日に離島した。

 朴槿恵政権に妨害されるのを警戒したのか、訪問は直前まで伏せられていた。折しも、文在寅氏が上陸した日にラオスの首都ビエンチャンで「日韓慰安婦合意」(2015年12月)の当事者である日韓外相が会談し、「両国関係が進展したのは喜ばしい」と、今後関係をさらに発展させることを誓い合ったばかりだった。

 「日韓慰安婦合意」に批判的だった文大統領は上陸決行の理由について「以前から韓日歴史問題の象徴である独島の訪問を考えていた。『8.15(解放記念日)』を前に領土主権の重要性を強調したかった」と語っていた。当時、日本政府は韓国政府に適切な対応を取るよう抗議していた。

 韓国の大統領は初代大統領の李承晩から現在の文在寅大統領にいたるまで延べ12人いるが、このうち「禁断の地」に足を踏み入れたのは現職時(2012年8月)の李明博元大統領と、議員時代(2005年8月)の朴槿恵前大統領、それに文在寅大統領含めて3人しかいない。

 李元大統領は大統領を辞めてから一度も日本に来たことがない。朴槿恵前大統領は現職時代一度も来日したことがない。歴代大統領として唯一訪日歴のない大統領として記録されている。両人共に今は、獄中にある。

 日本の立場からすれば、厳格に言えば、3人とも不法入国者であり、主権侵害者である。不法入国した以上、尖閣諸島で日本の領海を侵犯した中国漁船船長らと同様に来日すれば「毅然たる、断固たる外交」を標榜している以上、法的処分をせざるを得ないのではないか。しかし、国家元首に対して現実にそれが可能だろうか?事情聴取を含めて法的なけじめを付けることができるのだろうか?

 日本は国防委員会や外務委員会に所属する韓国の国会議員の相次ぐ「竹島上陸」に対して外務省が駐日韓国公使を呼び、その都度「日本としては受け入れられない」と抗議しているが、これまで芸能人などの入国を拒否したケースはあるが、訪日する政治家に対して注意したり、警告したり、あるいは事情聴取したことは過去に一度もない。

 古くは、2011年11月に日本の抗議を無視し、「美しい我らの領土独島音楽会」という名のコンサートを「竹島」で開き、韓国の政治家やマスコミ関係者ら500人が参加したが、主催した超党派の「独島を守る国会議員の集い」の中心人物である朴宣映議員が1か月後の12月に来日しても何のお咎めもなかった。

 昨年も11月に韓日議員連盟の金振杓会長一行が来日したが、金会長は2008年7月に現在、与党「共に民主党」の大統領候補である丁世均前総理と共に「竹島」を訪問しているし、随行者の最大保守野党「国民の力」の成一鍾議員も2016年8月、2018年11月と2度も竹島に上陸している。議連副会長の李採益議員は慶尚北道警察署長当時の2006年2月、独島治安責任者として独島警備隊を創設し、「地球上には竹島はない。あるのは我が領土、独島だけだ」の文言が書かれた「独島訪問記念カード」を制作した当事者であるが、こうした言動はすべて不問にされている。

 韓国人「竹島」訪問者は2005年4万1134人、2012年20万5778人、2018年22万6645人、日本が輸出規制を行った2019年25万8181人、2020年8万9374人である。累計で254万人に達している。韓国人の20人に一人は竹島上陸者である。

 日本の対韓輸出厳格化措置に反発し、日本観光ボイコット運動が起きる前の年(2018年)には753万人が来日していたが、「竹島」に上陸した者がいたとしてもおそらく余りにも多すぎて法的措置は取れないだろう。

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の公式ホームページの日本地図に竹島を表示しても、外務省が毎年、外交白書に「竹島は日本の固有の領土」と明記しても、現実には「竹島は遠くなりにけり」。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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