「原発処理水放出」容認発言で与野党議員から吊るしあげられた韓国の外相

韓国の鄭義溶外交部長官(外交部HPから)

 韓国の国会外交統一委員会は昨日(20日)、国会で全体会議を開き、外交部から日本政府の福島原発処理水海洋放出決定に関する報告を受けた。予想されたように鄭義溶外交部長官(外相)は前日に「日本が科学的根拠を示し、IAEAの基準に従うならば、反対しない」と日本に歩み寄る発言をしたことが問題視され、与野党議員から吊し上げられていた。

(参考資料:原発処理水」海洋放出問題で文在寅政権を突き上げる韓国の保守野党)

 来年3月の大統領選挙で政権奪還を目指す保守野党「国民の力」に所属する趙太庸議員は「政府は報道資料では日本政府の決定に断固反対すると言っていたが、鄭長官は(日本が)国際原子力機関(IAEA)の適合性手続きに従っているならば(海洋放流には)敢えて反対しない」と言っている。文大統領が言っていることと違うではないか」と大統領と外務長官の発言の食い違いを突き、「日本が汚染水放出を検討していたことは2018年に公論化され、メディアでも懸念が表明されていた。それにもかかわらず、なぜ文在寅政権はこれまで消極的、曖昧な対応をしてきたのか」と批判した。

 鄭長官に対しても「外交部長官も、それに原子力安全委員会委員長もIAEAのあるウィーンに行き、我々の憂慮を伝えるべきだったのにそうした努力もしていない」と悲嘆し、「日本が最もいうことを聞く国が米国なのにプリンケン国務長官やケリー気候変動問題担当特使の記者会見の内容をみると、米国は日本の立場を支持している。米国を相手にした外交努力が足りなかった」と外交部の怠慢ぶりを槍玉に挙げていた。

 また、同じ党の金善教議員も「政府は国務調整室主幹で2018年10月に福島原発TF(タスクフォース)を発足させていた。ここで作成された対外秘現況資料には専門家の意見として『三重水素被爆の可能性は低い』とか『三重水素は海流に従い希釈され影響がないことが予想される」と書かれてある。これは我が国が作成した書類であることは間違いないのか?公式なシミュレーションを一度もせずに一部専門家の意見として文書を作成したのも問題だが、こんなものを持って国会で説明しようとしたのも問題で、容認できない。まるで、日本政府以上に日本を持ち上げているではないか。(文在寅政は)一体、韓国政府なのか、日本政府なのか?』と鄭長官を詰問していた。

 一連の野党議員の質問に対して鄭長官は自身の発言については「マスコミが(私の発言の)一部だけを切り取って見出しに掲げ、報じていたのは残念だ。我が国民の健康と安全を担保できる十分な科学的根拠、放流決定以前に我が政府との事前協議、国際基準に従って透明性のある方式で放流が行われるべきとの条件が充足されるならば必ずしも反対しないとの趣旨で言ったのである」と釈明していた。

 しかし、鄭長官の答弁は納得が得られず、与党の議員からも鋭い質問が浴びせられた。与党議員の質問は野党議員と変わらないぐらい辛辣だった。

 李在汀議員は「与党の議員だが、野党の議員の気持ちで質問する。我が政府は汚染水放出を防げないとの前提で事実上、無気力に対応した」と声を荒げ、また、外交統一委員長職務代理でもある同僚の鄭鎮碩議員も「汚染水の海洋放流は非可逆的行為である」と断じ、「これによって発生する被害規模と対象は広範囲であるのに日本政府は費用と効率を前面に出し、汚染水タンク内貯蔵という代案の代わりに放射性物質汚染水を海洋に排出することにしたことに深刻な憂慮を表明する」と述べ、海洋放出はどんなことがあっても受け入れれないとの立場を明らかにした。

 さらに、忠清北道・大田出身の李相珉議員は「3つの条件が充足されればあえて反対する理由はないの表現はニュアンスにおいて国民の情緒と要求とは非常かけ離れており、食い違った混線を招く恐れがある。『反対のための反対をした』との自責の念に駆られる必要はない。政府は堂々と反対の立場を表明し、要求事項を明確に明らかにすべきだった。『あえて反対はしない』とのそうした発言は改めてもらいたい」と、鄭長官に発言の撤回を求めていた。これには同党の金榮珠議員も同調し、「長官は『3つの条件が充足していないので我が政府は積極的に対処することにする』と答弁すべきだった」と、鄭長官を叱責していた。 

 この件では保守野党「国民の党」の李テギュ議員も「韓国外交の失敗である」と結論づけていたが、特にバイデン政権が日本の立場を支持したことについて「米韓関係と日米関係の現在地を示すもの」と、文政権の対米外交軽視を批判した。

 なお、外交委員会には101人の議員の連名による「日本政府の福島放射性汚染水海洋放出決定を糾弾及び撤回を求める決議案」が19日に上程されている。

 決議案は▲日本の放出決定に深い憂慮を表明し、即時撤回を求める▲日本政府が韓国を含む隣接国との緊密な協議の下、処理方式を決定するよう求める▲韓国政府は国際海洋裁判所提訴などを検討し、海洋放出履行時には日本産水産物の全面輸入禁止など追加的措置を考慮するなど積極的に対応するよう求めるの3つの骨子から成っている。

(参考資料:日本の「原発処理水放出」への対応に苦慮する文大統領 2008年の「米国産牛肉輸入反対デモ」がトラウマ)

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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