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会議、会議、また会議! 超異例の多さの「金正恩主宰」党会議

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
台風被害の復旧に軍の出動を呼びかけた党中央軍事委員会拡大会議(労働新聞から)

 今年の北朝鮮は例年よりも頻繁に党会議を開いている。

 昨日(8日)も金正恩委員長出席の下、党中央軍事委員会拡大会議が開かれた。今年は金委員長が主宰する党会議は9月9日現在ですでに14回目である。例年に比べて、異常なほど多い。換言すれば、北朝鮮が多くの国難を抱えていることの表れでもある。

(参考資料:3度の台風到来で北朝鮮農業は壊滅か!? 25年前の飢饉の再来も!

 会議がどれだけ多いかは、金正恩政権発足(2012年)以降8年を振り返ってみると、一目瞭然だ。

 2012年は4月11日に開催された労働党第4回代表会議の1回のみであった。党大会に代わる全員会議では金正恩委員長が労働党1書記に推戴され、名実ともに故金正日総書記の後継者に選出された。

 2013年は1月に党第4回細胞秘書大会、2月に党軍事委員会拡大会議、3月に党中央委員会全員会議、8月に党軍事委員会拡大会議と計4回開催されている。2月の会議後には核実験が実施され、また3月の会議では核開発と経済建設の並進路線が採択されていた。

 2014年は3回のみで、3月の党軍事委員会拡大会議に続いて4月に党委員会政治局会議と党軍事委員会拡大会議が相次いで開かれた。

 2015年も前年同様に3回。2月に党政治局拡大会議が開かれ、3年間の金正日総書記の遺訓に関する総括が行われた。また、党軍事委員会拡大会議が2月と8月に2度開催されたが、8月の会議は羅先市での大雨・洪水被害対策が議題となった。

 2016年は2月に党中央委員会と人民軍委員会の初の連合拡大会議が開かれたが、党第7回大会の開催が中心議題となった。その結果、5月6日には36年ぶりに党大会(第7回)が開催されている。党大会直後に党中央委員会第7期第1回全員会議が開かれ、党規約が改正された。この年はまた12月に全党初級党委員長大会も開かれている。これも含めると、計4回となる。

 2017年は朝鮮半島の軍事的緊張が最も高まった年であるが、会議は意外と少なかった。9月3日に開催された最高幹部の集まりである党政治局常務委員会では水素爆弾実験について討議され、その日のうちに6回目の核(水爆)実験が強行された。

 10月には党中央委員会第7期第2次全員会議が開催され、翌11月には大陸間弾道ミサイル「火星15型」が発射されている。12月22日に開催された党第5回細胞秘書大会を含めると、この年の党関連会議(大会も含める)は3回のみである。

 2018年も3回。4月の党中央委員会政治局会議では南北首脳会談の開催が議題となり、同じ月に開かれた党中央委員会第7期第3次全員会議ではミサイルと核実験の中止が宣言された。また5月の党軍事委員会第7期第1次拡大会議では6月12日に予定されていたシンガポールでの米朝首脳会談に関する対応が話し合われた。

 2019年は5回開かれている。4月9日に党中央委員会政治局拡大会議、翌10日に党中央委員会第7期第4次全員会議と2日連続して開かれ、決裂に終わったハノイでの米朝首脳会談の総括と経済での自力更生が議題となった。

 9月には党軍事委員会非常拡大会議が開かれ、初めて台風(13号)対策が議題に上がった。この年は12月に党軍事委員会第7期第3次拡大大会と党中央委員会第7期第5次全員会議が1週間置きで開かれたが、12月28日に開催された党中央委員会第7期第5次全員会議では金委員長が新たな戦略兵器を予告している。

 そして、今年(2020年)である。以下、会議は14回に上る。

 2月28日 党中央委員会政治局拡大会議(権力乱用で李万健と朴泰徳副委員長が解任)

 4月11日 党中央委員会政治局会議(「コロナ」対策)

 5月23日 党軍事委員会拡大会議(李炳哲軍事委副委員長就任)

 6月7日  党中央委員会政治局会議(平壌市民の生活向上が議題)

 6月23日 党軍事委員会予備会議(本会議招集が議題)

 7月2日  党中央委員会政治局拡大会議(平壌総合病院建設等が議題)

 7月18日 党軍事委員会拡大会議(人事及び軍内部問題が討議)

 7月25日 党中央委員会政治局非常拡大会議(「コロナ」対策で開城市を封鎖)

 8月5日  党中央委員会政務局会議(封鎖した開城市支援について)

 8月13日 党中央委員会政治局会議(豪雨被害対策と「コロナ」対策)

 8月19日 党中央委員会全員会議(来年1月の党大会開催を決定)

 8月25日 党中央委員会政務局会議(台風被害対策と「コロナ」対策)

 9月5日  党中央委員会政務局拡大会議(被災地で台風9号被害対策)

 9月8日  党軍事委員会拡大会議(台風10号の被害対策)

 下半期の会議はほとんど新型ウイルス感染拡大阻止と集中豪雨及び台風被害対策に追われていた。

(参考資料:「コメで党を支えよう」のスローガンが復活! 北朝鮮は自力更生で食糧危機を乗り越えられるか!?

 長引く国連安保理の経済制裁と「コロナ禍」そして自然災害という三重苦に喘ぐ北朝鮮にとって今日の建国記念日は建国史上、最悪の日となってしまったようだ。

(参考資料:相次ぐ台風で危ぶまれる北朝鮮の4大国家プロジェクト 10月10日の党創建日がゴール!

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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