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「安倍首相辞任」でどうなる日韓関係? 次の首相と信頼関係を築けるか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
日韓首脳会談(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 安倍晋三首相が辞意を表明した。

 「史上最悪の関係」にあると言われている日韓関係についてこれまで両国ともに相手の指導者が変わらない限り、良くならないと言い合ってきた。今まさに、その一方が先に退こうとしている。

 今年66歳になる安倍首相と67歳になった文在寅大統領はたった一つ違いの同世代である。両人とも東大やソウル大など名門校出身ではない。また、共に法学部を卒業するなど相通じる点も少なくはなかった。

 安倍首相は2005年10月に発足した第3次小泉改造内閣で内閣官房長官として初入閣した。同じ派閥に属していた小泉純一郎元首相の引き立てがあった。

 一方の文大統領もまた、同じ法律事務所に属していた先輩の盧武鉉大統領の下で2005年に大統領府(青瓦台)入りし、民情首席秘書官に起用されていた。

 小泉元首相の後ろ盾もあって安倍首相は2006年9月に首相に就任したものの健康問題で2007年9月に政権の座から降りた。文氏も遅れること半年後(2008年2月)に政権交代を機に青瓦台(大統領府)を去った。

 安倍首相はその後、2012年12月に再び首相の座に復帰したが、奇しくも弁護士家業に戻っていた文大統領も同じ年の2012年4月に政界に戻り、この年の12月には野党統一候補として大統領選挙に出馬している。惜敗したものの、2017年5月に再度大統領選挙に挑戦し、大統領の座を射止めている。

 年齢もほぼ同じで、地理的に最も近い山口県下関市と慶尚南道巨済市で産まれ育ち、かつトップになるまでのプロセスが似ている二人だが、どういうわけかウマが合わなかった。

 文在寅政権は安倍首相を「反韓、右翼」とみなし、安倍政権は文大統領を「反日、左翼」とみなし、元慰安婦、元徴用工問題など歴史認識問題でぶつかり合い、その結果、日韓関係は一歩も前に進めない状態に陥ってしまった。

 少しでもウマが合えば、最小限度の信頼関係さえあれば、多少なりとも事が動くものだが、二人の間には相互不信しかなかった。外交関係が結ばれて65年経つのに今なお、トップ同士で信頼関係が築けないのは実に嘆かわしいことだ。

 思えば、外交関係がなく、敵対関係にあった日本と北朝鮮でさえ、2002年に首脳会談が実現し、懸案であった拉致問題が動き、少なくとも日本は5人の拉致被害者を取り戻すことができた。小泉純一郎首相(当時)のリーダシップと金正日総書記の決断の賜物であった。

 北朝鮮が「日本のでっち上げ」と否認していた拉致を認めたのは両者が交わした「平壌宣言」に記されているように「双方が相互の信頼関係に基づき、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した」ことに尽きる。一言でいうと、両首脳のウマが合い、意気投合したことだ。

 小泉、金正日両人共に1942年生まれの午年で、共に二世政治家であった。髪型はパーマで趣味はクラシック。メディアからは「変人」と「奇人」と揶揄されるぐらい共通点が多かった。首脳外交には噛み合わせというか、組み合わせが大事だ。

 日韓の指導者を韓国が軍事政権に別れを告げ、文民政権を樹立した1992年から振り返ってみると、韓国は金泳三、金大中、盧武鉉、李明博、朴槿恵、そして文在寅に大統領の座が引き継がれている。

 一方この間、日本は宮澤喜一、細川護熙、羽田孜、村山富市、橋本龍太郎、小淵恵三、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦、安倍晋三と総理が入れ替わっている。

 おそらく一番、ウマが合ったのは、「21世紀に向けた日韓パートナーシップ」と題する共同宣言文を発表し、良好な関係を築いた「小渕―金大中」ではないだろうか。

 日韓は歴史的にも経済的にも文化的にも深い繋がりがあり、ワールドカップを共催した間柄でもある。仲たがいのままでいいのか、仲良くしたほうが良いのか、正解を得るには政治家の先生よりも子供らに聞いたほうが良いかもしれない。

 日本の次なるリーダーが誰になるのか?韓国は固唾をのんで見守っている。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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