Yahoo!ニュース

「輸出規制を解除するのか」 韓国が日本に迫った回答期限は明日!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
文在寅大統領と康京和外相(青瓦台ホームページから)

 韓国政府は日本が昨年7月以降、韓国に対して取ってきた輸出厳格化措置(半導体素材3品目の輸出規制強化と輸出管理の優遇対象国「グループA(旧ホワイト国)」からの除外)が解除されないことに業を煮やし、日本政府に対して「5月末までに態度を明らかにせよ」と迫っていたが、明日(31日)がそのタイムリミットである。

 回答期限を切った理由は昨年11月のGSOMIA(日韓軍事情報保護協定)延長決定から半年が経っても、この問題で進展が見られないことに「これ以上待てない」と痺れを切らしたことにある。

 韓国はこの半年間、日本が輸出厳格化措置を取った理由としていた▲両国間の政策対話の中断▲通常兵器に転用可能な物資の輸出を管理するキャッチオール規制の整備▲輸出管理体制・人員の脆弱性など3つの「障害」を全部クリアしていた。

 政策対話については昨年12月に局長級によって約3年半ぶりに再開され、今年3月にもテレビ会議が行われていた。

 キャッチオール規制の整備についても韓国政府は対外貿易法を今年3月に改正し、キャッチオール規制の法的根拠をより明確にさせた。

 また、輸出管理体制の強化と人員増についても今月6日付で産業通商資源部の貿易安全保障に関する組織を従来の「課」から「局」に格上げさせ、再編する形で補完している。

 こうした措置を講じたことで産業通商資源部の李浩鉉貿易政策官は今月12日、日本に対して「日本側が提起した理由は全て解消された。もはや日本は輸出規制の強化措置を原状回復することにためらう理由はない」と早期の規制解除を求めていた。

 日本が今なお、規制を解除しない理由は定かではないが、仮に明日(31日)までに日本が回答しない場合、韓国は世界貿易機構(WTO)に提訴する方針のようだ。

 韓国は昨年11月の「日韓合意」に基づきWTOへの提訴を棚上げにしたが、この「WHOカード」をもう一度持ち出して、「日本の輸出厳規制措置は韓国の輸出管理体制の不備を表向きの理由にしているが、実際は日本企業に賠償を命じた元徴用工裁判決への不当な報復である」ことを訴え、日本に圧力を掛ける構えだ。

 韓国がWTO提訴への動きを見せても日本が解除に応じなければ、「新型コロナ」の渦で鎮静化しつつあった日本製品ボイコット運動を再点火させることも辞さない構えだ。

(参考資料:いつまで続けるの?韓国の「日本製品不買運動」の現状

 昨年7月の対韓輸出規制強化を受けて韓国全土で巻き起こった「No Japan運動」で訪日韓国人観光客が200万人も減り、日本の観光産業が大きな打撃を被っただけでなく、日本製ビールは40%減少し、韓国で10年続いた外国産ビール1位の座から11位に転落し、自動車販売も前年の1308億円から927億円と400億円も減少し、不振を極めた。結果として、韓国との貿易額で92億ドル、対韓貿易黒字も49億ドルも減少した。

 昨年12月の「日韓合意」直後の世論調査では韓国国民の77.6%が日本製品不買運動については「日本が態度を変更するまで継続すべき」と回答していたことから政府がゴーサインを出さずとも自然再燃する可能性が大だ。

 さらに、8月までに解除されなければ、一旦通告したもののその後日本の輸出規制解除を条件に取り下げていたGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄を最後の手として温存しているようだ。

 韓国政府は昨年、日本への対抗措置としてGSOMIAを延長しない方針を決定し、8月24日に日本に通告したが、失効(11月23日午前零時)直前に通告を撤回し、1年間の自動延長に踏み切った。

 文政権は当時、「我が政府はいつでもGSOMIAの効力を終了できるとの前提でGSOMIAの終了通告の効力を停止させた」と国民に説明していた。GSOMIAの終了延期が「一時的な猶予」であることを強調することで国民を説得し、同時に日本に輸出規制の撤回を促した。従って、事前通告期限である8月24日までに輸出規制問題が解決しなければ、否が応でもGSOMIAのカードを切らざるを得ないだろう。

 昨年11月の文大統領の「GSOMIA破棄中断」決断を国民の70.7%が「良い決定」と評価したが、その一方で日本が韓国の期待に応えない場合は、53%が「終了(破棄)すべき」との意見だった。

(参考資料:韓国国民の70%が「GSOMIA破棄中断」を評価! 世論調査で判明!

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

「辺真一のマル秘レポート」

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌ではなかなか語ることのできない日本を取り巻く国際情勢、特に日中、日露、日韓、日朝関係を軸とするアジア情勢、さらには朝鮮半島の動向に関する知られざる情報を提供し、かつ日本の安全、平和の観点から論じます。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

辺真一の最近の記事