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奈良はNO! 東京はOK! 防護服支援への矛盾した韓国の対応

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
日本への医療支援を批判されている慶州市の市長(出所:慶州市のウエブサイト)

 困ったときに助け合うのが隣人同士なのに一部韓国人の日本への剥き出しの「敵愾心」にはそのあまりの愚かさに言葉を失ってしまう。

 韓国の歴史文化都市、世界遺産都市として知られている慶尚北道・慶州市の朱洛栄(チュ・ナクヨン)市長が今月17日に姉妹都市である奈良市や交流都市の京都市にそれぞれ備蓄していた防護服とゴーグルを送ったところこれが韓国で問題視され、一部のネットユーザーから凄まじいバッシングを浴びている。

 韓国政府はこれまでに支援要請のあった世界の国々に対して「新型コロナ」関連の医療支援を行い、これに国民は賛同、支持していた。日本に対しては政府からの要請がなかったことから政府レベルの医療品支援は行われてないが、日本に進出している韓国企業でつくる駐日韓国企業連合会は東京都の医療現場を支援するため今月20日に東京都に2300着防護服を寄付していた。駐日韓国企業連合会は今月初めにも1000着を寄付していた。それだけに慶州市長の対応については韓国国内で待ったがかかり、ブーイングとは何とも呆れかえってしまう。

 朱市長が21日に日本に防護服の支援を行ったと報道されるや「金が余っているならば市民に使うべきである」とか「韓国に輸出規制をしている日本を助けるのはおかしい」との批判の声が上がり、市のホームページの自由掲示板には市長に対して「売国奴」とか「土着倭寇」とのレッテルを貼り、慶州市の人道支援を批判する書き込みが上がっていたのだ。

 さらに驚いたことに、翌22日には早くも青瓦台(大統領府)のホームページの国民請願掲示板には朱市長の解任を求める請願が投稿されていた。26日午前10時現在、約8万2千人が賛同しているからただ事ではない。

 市長解任の提唱者は自らを「慶州で自営業を営んでいる平凡な一市民」と名乗っているが、解任を請願する理由として▲市長は市民の理解を得ず、独断でやっている▲生計が苦しい市民への支援を優先させるべきだ▲市長は慶州のための市長であるべきだ等々もっともらしい理由を挙げていたが▲我々の税金を日本というとんでもないところに捧げている▲今は日本製品不買運動の最中にあるのを忘れるな等請願文の随所に日本に対する反感が滲み出ていた。

(参考資料:韓国の総選挙で「親日」のレッテルを貼られた政治家の当落

 良かれと思ってやったことへの思わぬ批判に朱市長は昨日(25日)自身のフェイスブックに「海外姉妹都市に防疫物品を支援したことがそれほど大きな過ちというのか」とこの件に関する自身の見解というか、次のような反論を載せていた。

 「韓日中3か国の平和と共助を願っている者として素朴な人道主義から支援に踏み切った。純粋に人道的な見地から取った措置である」

 「日本の姉妹都市及び交流都市は『コロナ』が収束すれば、再び交流し、観光や経済を再開させる間柄である。奈良市とは今年7月に姉妹都市締結50周年を迎える。友好の証として送った」

 「(税金の無駄使いの批判に対して)慶州は原子力発電所の地であることから防護服は多く備蓄していた。予算を新たに追加し、血税を乱費したわけではなく、余っているから姉妹都市に分けてあげただけだ」 

 「(親日の批判に対して)2005年に慶尚北道自治行政局長に再任された時に竹島(毒島)の領有権を主張する島根県との交流断絶を果敢に主導した自身への売国奴の批判はあまりにも酷すぎる」

 朱市長は最後に「我々に必要なのは無条件の反日ではなく、未来志向的な克日だ」と訴えたが、事態を鎮静化させるため予定していた姉妹都市の福井県小浜市などへの支援を取り消したうえで「国民感情を考慮し、今後何かを決定する場合はより慎重を期する」と事実上の謝罪に追い込まれてしまった。

 慶尚北道は先月の国会議員選挙では保守野党「未来統合党」が全区を独占したほどの保守の地盤であるが、その一方で竹島(独島)を行政区域にしている道である。

 折しも、日本政府が2020年版外交青書で独島を日本固有の領土と明記したことについて同庁が今月19日に「300万の道民と共に決して座視できない」と非難する談話を出し、また道議会も報道資料を出して「日本政府が誇大妄想の領土侵奪のシナリオを書いている」と批判したばかりだった。

(参考資料:いつまで続けるの?韓国の「日本製品不買運動」の現状

 竹島をめぐる対立の煽りを受けたのか、あるいは保守市長を追い落とすための一部勢力の組織的な嫌がらせなのかは定かではないが、市長の判断、行為は称賛されることはあっても非難されるべきことではない。奈良市が慶州市に感謝の意を表明していることがその証である。

 (参考資料:「未曾有の災難」に見舞われても変わらない日韓関係

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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