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「コロナ感染」の検査も、軽症者の「施設」も、お手本は欧米ではなく、隣国にあり!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓国の軽症者用の施設「生活治療センター」の個室(出所:韓国中央疾病対策本部)

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は3月16日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を抑え込むには各国による検査体制の強化が必要であることを強調し、「検査に次ぐ検査で、疑わしいケースはすべて検査して欲しい」と述べていた。

 日本政府はこれまで医療崩壊の危惧を理由に検査対象を絞り、重症者重視の検査方式に比重を置いてきた。そのお陰で欧米諸国とは異なりオーバーシュートせず、感染拡大を抑えることができたと言い続けてきた。

 しかし、東京を中心とした感染者の急増から緊急事態宣言を出すことになったこの期に及んでは検査による感染者の早期発見、隔離、治療が急務であるのは言うまでもない。「感染しているのでは」との国民の不安を解消するためにもこれまで以上にPCR検査をする必要がある。

 PCR検査を欧米や韓国並みに行えば、それに比例して感染者は増える。政府も東京都も緊急事態宣言の発令と共にその備えに入っているが、手っ取り早いお手本となるのが、隣国の韓国である。

 韓国にはPCR検査をしてくれる「選別診療所」がある。テントで作られた「選別診療所」は3月1日から一般病院と隔離された場所に設置されており、呼吸器症状やコロナ症状の疑いがあれば「1339」(疾病管理本部)コールセンターもしくは管轄保健所に相談すれば、この「選別診療所」で診断を受けることができる。

 「選別診療所」は韓国の全国に613か所ある。首都・ソウルだけで74か所もある。ソウルは東京よりも1区多い25区から成っているが、少なくとも1区に2.6か所は設置されている。

 また、「選別診療所」の他に検体採取が可能な診療所(保健所や病院)が全国に581か所ある。ソウル市内だけで68か所ある。

 さらに、日本でも報道されているが、自動車に乗ったままで検査を受けることのできるドライブスルー(乗車検診)が全国に74か所設置されている。ソウルは4か所で、市が保有する駐車場、「119」安全センターの敷地、蚕室総合運動場、そしてソウル市立病院の敷地内に設置されている。

 ドライブスルー検査は大邱市で新興宗教団体「新天地イエス教会」の信者らによる集団感染が発生し、感染者が三桁となったことへの危機感から2月下旬には導入されていた。

 車に乗ったままコーヒーやハンバーガーを注文するように感染が疑われる人が車に乗ったまま問診、検診、検体採集ができる。受付から問診表の作成、医療スタッフとの面談、体温の測定、鼻と口からの検体採取までの全プロセスにかかる時間は10分弱で、すべての検査は車に乗った状態で行われる。

 韓国のPCR検査は4月8日現在48万6003件である。日本(4万8357件)の10倍である。首都を比較すれば、東京の4422件に対してソウルの検査数は8万4530件に上り、東京よりも実に19倍も多い。

 PCR検査を増やせば、必然的に感染者も増える。韓国は4月8現在、感染者は1万384人で日本(4257人)の約2.4倍も多い。しかし、首都に限って言うならば、東京の1117人に対してソウルは578人と、不思議なことに東京の約半分である。

(参考資料:日本の感染者数は韓国の3分の1なのに東京がソウルよりも多い不思議!

 韓国はPCR検査の結果、感染が確認されれば、患者の基礎疾患の有無や健康状態などを考慮して4段階(軽症-中等度-重症-最重症)に分類される。

 軽症患者は自宅での隔離か、病院とは別途の隔離施設「生活治療センター」への移送となる。中等度患者は感染病専担病院に、また重症及び最重症患者は国家指定の隔離病院に入院する。

 入治療の必要性は低いが、感染拡大の遮断とモニタリングが必要な軽症患者は生活治療センターの1人部屋に入所する。感染者全体の8割にあたる軽症者が自宅隔離または生活治療センターに入ることで病床不足を解消し、重症患者のための病床を確保できる。現在では全国に16か所あって、約4千人の収容能力がある。

 公共機関やサムソンやヒョンデなど韓国の企業が提供した社員用研修院や保養所を「生活治療センター」として活用しているが、センターには内科と感染専門医の4人、看護婦6人、それ看護婦をサポートする看護助手7人が常駐するほか、センターの管理のため官民軍警から人員が派遣され、生活、管理の面でサポートする。

 医療陣は施設内の感染者の健康状態を随時点検し、入院治療が必要だと判断した患者は迅速に病院へ移送することになっている。

 日本政府も東京都も当面はホテルを確保し、軽症者を隔離することにしているが、ホテルでは医者一人と看護婦2人が待機して対応することにしているが、24時間常駐ではない。ケアする人数にしても韓国の「生活治療安全センター」よりも少ないのが気になる。

(参考資料:韓国の「コロナ感染」は収束に向かう? 2週間内に一日の感染者を50人以下に!

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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