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韓国の大邱市はロックダウンにならなかったのになぜ東京が?東京と大邱の比較!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
「コロナ終息」のための3月28日までの大邱市の「3.28運動」(出所:大邱市)

 新型コロナウイルス感染の拡大で東京が緊張している。東京の感染者は昨日(27日)も40人が確認され、累計299人となった。

 小池百合子都知事は3日連続で40人台(25日=41人、26日=47人、27日=40人)の感染者が出たことで都民に週末の不要不急の外出を自粛するよう再三要請している。このまま何もしなければ、オーバーシュート(感染爆発)が起きるかもしれないとの懸念からだ。

 東京は1月24日に最初の感染者が確認されても平静だった。浮足立ったのは2月23日に二桁の16人、そして24日に過去最多の17人の感染者を確認したあたりからだろう。さすがに25日に前日よりも約2.4倍の41人の感染者が出たとなると、「もしかしたら」の不安がよぎるのは当然だ。

 東京よりも1日早い1月23日に初の感染者を確認した隣国・韓国の首都・ソウルも3月12日に東京と同じ数の47人の感染者を確認している。しかし、オーバーシュート(感染爆発)も、ロックダウン(首都封鎖)にも至らなかった。翌13日には約3分の1の14人に減ったからだ。

 ソウル市は以降、多くても3月20日の17人が最多で、この1週間も21日15人、22日10人、23日6人、24日14人、25日13人、26日13人、27日16人の増にとどまっている。27日の時点では東京よりも感染者数では77人も多いが、3月12日以降は一度も40人台はおろか、30人台、20人台の感染者も確認していない。

(参考資料:過去最多の41人で「重大局面」の東京は「49人」を出したソウルと同じ道を辿れる!?

 しかし、韓国第3の都市、大邱市は凄まじく多くの感染者が出ている。3月27日現在6516人で、東京都の約21倍。死亡者(96人)も東京(5人)の約19倍だ。日本全体の国内感染者(1467人)の約4.4倍で、死亡者(46人)も倍近くある。

 人口数が東京よりも約10分の1程度の大邱市で最初に感染者が確認されたのは2月18日である。翌19日に11人、20日に23人、21日に50人、22日に70人の感染者が確認され、23日には22日の約2倍の148人の感染者が出た。大邱市南区にある新興宗教団体「新天地イエス教会」で発生した集団感染が原因だ。

 翌24日(141人)以降も26日178人、27日340人、28日297人の感染者を確認し、29日には最多の741人の感染者が出た。

 大邱市の感染者は3月に入っても増加の一途を辿り、3月1日514人、2日512人、3日512人と3日連続で500人台の感染者を確認したが、翌4日からは4百人台(405人)、5日に3百人台(321人)、8日に2百人台(297人)、9日に百人台(190人)と段階的に減少し、10日には二桁台の92人まで下がった。直近の一週間は、21日69人、22日43人、23日24人、24日31人、25日14人、26日26人、27日34人と推移している。

 大邱市はこれだけの感染者が発生したにもかかわらず、ロックダウンをせずに済んでいる。外出禁止令が出て危機的な状況には陥っているマドリードやパリ、ロンドン、ニューヨークのようにはならなかった。

 大邱市が取った措置と言えば、日常生活でのマスクの着用(2月18日)、幼稚園の休園(2月20日)、全ての集会の禁止(2月26日)、3月9日の新学期開校(3月9日)の2週間延長(3月1日)、不要不急の外出の自制(3月4日)、クラブなど社交場やカラオケ店への営業自制の勧告(3月15日)、自制しない場合の行政命令による集会や集合の禁止措置(3月22日)、教会に対する4月5日までの礼拝中断とスポーツジム、映画館、小劇場に対する4月5日までの休業勧告(3月24日)等である。

 大邱市が沈静化しつつあるのは3月15日に新型コロナウイルスの早期終息のため今日(3月28日)まで「3.28大邱運動」という名のキャンペーンを展開し、市民にこの運動に積極的に賛同するよう呼び掛けたことだ。キャンペーンと言っても大袈裟なことではなく、市民に以下の5つの規則の順守を求めただけのことだ。

 1.外出と移動は最小化し、集会はしばらく自粛する。

 ※宗教行事以外にもカラオケ、インターネットカッフェなど人が密集する営業店の運営を3月28日まで中断する。

 2.手洗いなどの個人衛生を徹底させ、食事の際のルールを順守する。

 ※手洗いと人との距離を2メートル空け、少し離れて食事をし、対話も少なくし、相手との間隔を空けるよう努める。

 3.症状がある場合は出退勤をせずに至急1339(疾病管理本部)もしくは保健所に電話する。

 4.完治者も隔離解除者も健康状態をチェックし、社会的距離を開けることに積極的に協力する。

 5.心理的距離は縮め、お互い安否を確認する。

  ※電話やメール、SNSなどで連絡を取る。

 東京は大邱に比べれば、感染者は圧倒的に少ない。1日の感染者数もまだ二桁、それも50人に満たない。それでも、早くも都知事がロックダウンの可能性を口にしているわけだからそれだけに一旦オーバーシュート(感染爆発)が起きれば、歯止めが掛からないとの危惧があるのだろう。

 備えあって憂いなしで、用心することにこしたことはない。

(参考資料:感染対策に「緩い日本」! 「キツイ韓国」! 日本は自主判断、韓国は半ば強制!

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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