本当?嘘?北朝鮮の「感染者ゼロ」 事実ならば「奇跡」!

上は3月20日の軍事訓練、下は3月12日の軍事訓練視察(労働新聞から)

 新型コロナウイルス感染は今やパンデミック(世界大流行)となっている。感染が確認された国と地域は世界173か国・地域に上る。発祥地の中国から遠く離れたアフリカ、南米を含め感染者は5大陸に跨り、感染者の数は3月21日午後6時現在、23万人を超え、死亡者は1万人に迫っている。

 陸を接してない対岸の台湾、日本も例に漏れないわけだから、中国と陸を接しているラオス、ベトナム、インド、香港、マカオ、ロシア、モンゴルなど隣国がドミノ現象を起こすのはある意味で当然かもしれない。

 ところが、不思議なことに中国と1420kmも国境を接している北朝鮮だけは公式的には「一人の感染者も出していない」と言っている。一昨日(19日)も北朝鮮外務省はわざわざ声明まで出して「我が国は新型コロナウイルス感染者が一人もいないクリーンランドである」と「豪語」していた。信じ難いが、事実ならばこれは「奇跡」に近い。

 確かに北朝鮮の対応は素早かった。北朝鮮の医療は防疫・治療システムが不備なことから予防を最も重視している。

 新型コロナウイルスが中国で発生するや「人民の生命安全を守ることは我が党と国家の最優先課題」であるとして、経済的損失を覚悟のうえで、早々とパトロンの中国との陸海空の出入りを全てシャットアウし、中国を経由して入国した自国民や外国人を隔離施設で過ごすことを義務付けた。

 また、中朝国境に近い地域や中国人観光客が訪れた地域を中心に中国と接点があったことで感染が疑われる、あるいは恐れのある住民を「医学的監視対象者」として隔離した。主に慈江道、平安南道・平安北道、江原道の住民が対象とされたが、対象となった人数については一切明かさなかった。

 一方、隔離された外国人の多くはロシア、英国、カナダ、スウエーデン、チェコ、ルーマニアなど北朝鮮に駐在している20カ国の大使館員や平壌に常駐している国際機関の職員で、その数は380人に達していた。隔離は1カ月以上に及んだ。

 水際対策は徹底し、外国からの輸入物資への検査検疫及び消毒まで行っていた。「先制的な封鎖対策を徹底的に立てるうえで、輸入物資に対する取り扱いを厳しくすることが重要である」との理由からだ。

 その結果、北朝鮮の報道によって判明したことだが、3月20日までに慈江道で約2630人、平安南道・平安北道で約4300人、江原道で約1430人と、計約8360人の隔離が解かれた。また、外国人も3月19日現在、3人を残して全員が解除されている。

 在韓米軍のエイブラムズ司令官は3月13日、「閉じられた国なので断定はできないが、確実に感染者はいるとみている」と述べていたが、どうやら、地方は別にして、首都・平壌は封じ込めに成功しているのかもしれない。そのことは、2月28日から日本海に面した江原道・元山の別荘に滞在していた金正恩委員長も平壌に戻り、3月18日には平壌総合病院建設起工式に出席していたことからも窺い知れる。

 金委員長は式典に動員された数千人に及ぶ関係者、市民らを前に演説をぶっていた。本人曰く、「起工式に出席する予定はなかったが、工事関係者を激励するために参加した」と述べていた。配信された写真を見ると、起工式で金委員長と一緒に鍬入れをしていた朴奉珠党副委員長ら側近の誰一人、マスクをしていなかった。

 金委員長は昨日(20日)も黄海側に面した平安北道での西部前線大連合部隊による砲射撃競技を視察していたが、金守吉軍総政治局長や朴正天軍総参謀長ら将軍らは誰一人、マスクをしてなかった。

 直近の3回にわたる軍事訓練では随行した軍幹部らが全員、マスクを着用していたが、昨日の訓練ではマスクを付けた随行者は一人もいなかった。

(参考資料:北朝鮮のミサイルは慣例の2発ではなく、3発連続だった!

 さらに、北朝鮮は単距離ミサイルを発射した今日、「4月10日に最高人民会議を開催する」と発表した。この日は全国から687人代議員が平壌の万寿台議事堂に集結する。日本、韓国も含めた感染被害を被っている多くの国々が感染拡大を防ぐため集会やイベントを自制しているのとは逆行する決定である。賭けにしてはリスクが高すぎやしないだろうか。

 朝鮮中央通信は隔離解除を報道した際に「各道(日本の県)で、隔離期間が完了してウイルス感染の症状がない人たちが次々隔離解除されている」と伝えていたことから、今なお隔離されている人が相当数いるものと推測される。それに、北朝鮮は先月27日、今月13日と2度にわたって学校の開校を遅らせただけでなく、2日前には労働新聞を通じて国民に対してはマスク着用を促し、マスクを着用しない乗客の列車やバスなど公共交通手段を厳禁し、違反した場合の罰則まで科す措置を発表したばかりだ。

 やることがちぐはぐに感じるが、1990年代半ばに未曾有の大飢饉で百万単位の餓死者を出した「苦難の行軍」のことを考えれば、日本や韓国と違い、三桁、四桁の被害者(感染者)程度ならば意に介してないのかもしれない。

 北朝鮮にとってはミサイルの発射、最高人民会議の開催、金日成主席の生誕日(4月15日)祝典は最優先すべき、避けては通れない重要行事なのである。

(参考資料:北朝鮮の超大型放射砲(短距離弾道ミサイル)は脅威か!

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動開始。98年 ラジオ「アジアニュース」パーソナリティー 。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。著書に「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人、残念な日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など25冊

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