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「中東派遣」を決めた日本、迷う韓国! 世論は日韓共に「反対」!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

 米国とイランの対立による中東情勢の悪化に伴い日本も韓国も同盟国の米国から哨戒機や護衛艦の中東派遣を迫られているが、日韓共に世論は「中東派遣」に反対の声が高いようだ。

 日本では共同通信社が今月11日から12日にかけて行った調査結果によると、海上自衛隊の中東派遣について「反対」が58.4%で「賛成」の34.4%を大きく上回っていた。

 韓国でも世論調査会社「リアルメーター」が全国成人男女約500人を対象に世論調査を10日に実施したが、「反対」48.4%、「賛成」40.3%と、「反対」が「賛成」を上回っていた。

 日本と比べて、差が開いてないのは、立憲民主党など野党4党が反対している日本とは異なり、最大野党の「自由韓国党」や野党第2党の「正しい未来党」が賛成に回っていることによる。

 日本と韓国とは逆転現象が起きており、自民党と公明党の与党が賛成している日本とは異なり、韓国では逆に文在寅政権の与党「共に民主党」と支持基盤の進歩勢力が反対の声を上げている。

 昨年12月に自衛隊派遣をすでに閣議決定している日本は米軍によるイランのソレイマニ軍司令官殺害やイランのイラク駐留米軍基地へのミサイル攻撃などの情勢変化があっても変更せず、予定通り派遣するのは周知の事実である。

 派遣を前提に河野太郎防衛相が今週中にも訪米し、エスパー米国防長官と会談し、中東地域に派遣される海上自衛隊と米軍の協力について意見交換をすることになっているが、韓国はまだその段階には至ってない。

 昨年12月までは日本同様にイラン近海のホルムズ海峡への海軍の派遣に前向きだったが、今年に入って米国とイランの対立が激化したことで「国民の安全を最優先に考える必要がある」との理由から一転、慎重な姿勢に転じてしまった。

 民意を重視せざるを得ない、まして4月の総選挙を前に支持基盤の進歩勢力の結集を図らなければならない文政権としては反対が賛成を上回っている状況下では「派遣すべきか、自制すべきか」で悩むのは当然かもしれない。

 「反対」と「賛成」が拮抗している韓国の現状は中東派遣に反対する進歩系の「参与連帯」など100余の市民団体が10日に記者会見を行い、気勢を上げたかと思えば、その3日後には賛成派の在郷軍人会が「米韓同盟の精神に従い、参加するのが同盟国の基本的道理である」の声明を出すなどまさにGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の時と同様に国論の分裂を招いている。

 また、外交面でも米国のハリス駐韓大使からは派遣を強く迫られ、逆にイランのシャーベスタリー駐韓大使からは「派遣すれば、国交断絶もあり得る」と牽制されるなど米国とイランの板挟みにあっている。

 文政権は康京和外相を米国に派遣し、パートナーであるポンペオ長官から米国の考えを聞いて最終判断する考えだが、康外相自身は9日の国会外交統一委員会で「米国と我々の立場が情勢分析や中東諸国との2国間関係を考慮した際、必ずしも同じとは限らないと思う」と答弁し、米国の要求に慎重に応じる意向を表明していた。

 しかし、結局は「海峡付近を航行する韓国の船舶と国民の保護の必要性、海上安全保障のための国際的努力への寄与」という名目で日本と同様に米国主導のホルムズ海峡の有志連合には加わらず、独自派遣の形を取り、ソマリア沖アデン湾に派遣している海軍の「清海部隊」をホルムズ海峡ではないオマーン港やアラビア海の北部公海での活動で米国から了解を取り付けるようだ。

 文大統領が本日の新年記者会見でこの問題についてどこまで踏み込んだ発言をするのか注目したい。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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