Yahoo!ニュース

今年最大の話題作「白頭山」が韓国で公開! フィクションだが、現実となるかも?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
公開された韓国映画「白頭山」のポスター

 今年下半期最高の話題作である韓国型災害映画「白頭山」(上映時間2時間8分)が本日、韓国全土で封切られた。日本の富士山と称される朝鮮半島の聖山・白頭山(標高2,744メートル)の爆発を題材にしている。

 白頭山噴火というショッキングな主題を韓国人の半数以上が見たと言われる「神と共に」シリーズのデクスタースタジオが製作。配給会社はCJエンターテインメントで、制作費用は韓国ウォンで約300億。トップスターのイ・ビョンホン、ハ・ジョンウに「犯罪都市」のマドンソクと「王の運命」の女優・チョン・ヘジンら豪華俳優陣が脇を固めている。米国(20日)を皮切りに、台湾、香港、シンガポール、マレーシアなど海外でも続々と封切られ、世界90カ国・地域に販売されるそうだ。

 映画「白頭山」は朝鮮半島を飲み込む未曾有の災害を防ぐために立ち向かう人々の物語を描いているが、どうやらこの冬最大の話題作となりそうだ。

昨日、ソウルでマスコミ試写会があったが、あらすじはおよそ以下のとおりである。

 「速報です!白頭山で火山爆発がありました!」とのアナウンスがあり、噴火の余波が韓国にまで及ぶ。ソウル中心地の江南区で大地震が起き、走っている車が横転し、漢江に津波が押し寄せ、陸橋も崩壊。

 韓国大統領府は非常事態宣言を出し、対策に乗り出す。青瓦台民情首席秘書官(チョン・ヘジン)は地質分野の権威者である大学教授(マ・ドンソク)に会い、協力を要請。米国に旅立とうとしていた教授は国内に留まり、指揮を執る。前半から中盤まではソウル市が大災害に見舞われ、大混乱をきたすスペクタクルな災難場面がこれでもかと流れ、観客は手に汗を握る。

 さらなる爆発を防ぐための秘密作戦に韓国軍爆発物処理班の大尉(ハ・ジョンウ)が投入される。一方、北朝鮮も人民武力部の工作要員(イ・ビョンホン)が乗り出し、未曾有の災難を防ぐための死闘を繰り広げる。第4次爆発を阻止できなければ、朝鮮半島は沈没する。まさに朝鮮半島の運命はこの二人に委ねられることになる。

 葛藤を繰り返しながらも、火山爆発を防ぐと言う共通目標で宿敵であるはずの二人は手を組む。ハ・ジョンウとイ・ビョンホンはこの映画が初共演で、二人のツーショットは開始20分頃から。友情と義理が行き交ったり、窮地に陥ったり、観客の涙を誘う場面も。

 映画はフィクションだが、不気味なのは白頭山爆発の危険性が5~6年前から中国や韓国の学者の間で警告されていることだ。すでに2005年の時点で撮られた映像から地下にマグマが溜まっていることも、地下から噴出するマグマによるガスで白頭山の樹木が枯死していることも確認されている。

 実際に今年4月15日には韓国の汝矣島の国会図書館で「目覚める白頭山噴火、どうすべきか」と題する討論会が開かれ、白頭山の頂上付近での地殻変動は深刻な噴火の兆候だと判断していた。

 白頭山はこれまで100年に一度の小噴火と、1000年に一度の大噴火を繰り返してきた。なかでも西暦946年に起きた大規模噴火は世界最大級とも言われる巨大噴火でその勢いは凄まじく、頂上に直径5キロメートルのカルデラが形成され、火山灰は偏西風に乗って日本の東北地方にも降り注いだ。ちなみに最後に噴火したのが1925年で、この時は小規模であった。

 白頭山の噴火規模は欧州の空港を麻痺させた2010年のアイスランドのエイヤフィヤトラヨークトルの火山噴火の1000倍と推定されている。仮に噴火が現実となれば、その被害は想像を絶すると言われている。火山の噴出物が空を覆い、約3か月で北半球の平均気温が最大で0.5℃下がるとシミュレーションされている。

 アイスランドの火山灰は0.1平方キロメートルだが、白頭山では150平方キロメートルで、東京ドーム10万個分の量。噴火から3時間後にソウル、18時間後に東京に落塵する。そうなれば、日本でも農作物に甚大な被害が発生し、航空機欠航、精密製造業への打撃など経済活動にも深刻な影響をもたらすことになりかねない。

 釜山大学地球科学教育科のユン・ソンヒョ教授によると、「1000年前の1%の噴火でも北朝鮮の人々は生き残れないかもしれない」と報告していた。 また、釜山大学の研究チームが2015年に国民安全処に提出した「火山災害被害予測技術開発」に関する研究報告書によると、北東の風が吹く気象状況下で爆発した場合、韓国国内だけで最大11兆ウォン(約1兆円)の財産被害が発生すると推定していた。

 朝鮮半島は日本列島と違い「地震が起きない」ことで知られている。実際に2011年前までは小さな地震が月に1~2回程度しか観測されていなかったが、東日本大震災が発生した2011年以降は多い月で300回以上も起きている。規模もマグニチュード3~4に上がっている。

 韓国は白頭山を監視するためすでに1億円を投じて音波観測所1ヶ所を南北境界線付近に設置している。また、大連・瀋陽など中国東北部地域5ヶ所から地震情報の提供を受けることで中国側と合意している。 中国や韓国だけでなく、米国や英国、イタリアなど欧米の火山専門家らも白頭山火山活動の調査に乗り出している。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

「辺真一のマル秘レポート」

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌ではなかなか語ることのできない日本を取り巻く国際情勢、特に日中、日露、日韓、日朝関係を軸とするアジア情勢、さらには朝鮮半島の動向に関する知られざる情報を提供し、かつ日本の安全、平和の観点から論じます。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

辺真一の最近の記事