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「竹島(独島)」での恒例の韓国の軍事訓練は中止か!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓国海兵隊(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 今年7月から続いていた「日韓チキンレース」は韓国のGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄の凍結とWTO(世界貿易機関)提訴の中断でブレーキがかかり、今後の双方のキャッチボール次第では修復、正常化に向けて動き出すことが予想される。

 日韓両国は所謂、GSOMIA時効の11月22日の「土壇場妥協」に基づき、韓国がGSOMIAとWTOで譲り、それに応える形で日本が輸出絡みの交渉に応じることで懸案の早期解決を目指すことにし、すでに幾つかの事案で動き出している。

 一つは、輸出管理をめぐる日韓局長級の政策対話を12月中旬(第三週)に東京で開くことで合意したことだ。

 両国は11月22日の日韓同時発表に基づき、すでに6日後の28日にはソウルで経済産業省課長級による準備会合を開いているが、局長級による「輸出管理政策対話」が開かれれば、2016年6月以来、実に3年半ぶりとなる。

 政策対話で韓国の輸出管理体制、運用に問題がないと確認されれば、半導体素材の輸出厳格化措置の解除及び韓国のホワイト国への回帰も可能となる。

 次に、韓国が元徴用工問題をめぐって日韓企業と国民が自発的に寄付して、財団をつくって元徴用工らに保障することを骨子とした文喜相国会議長の私案を法案として国家に発議することを決定したことだ。

 韓国の与野党とも法令化に異論がないことから早ければ12月中旬までに議決されるものとみられている。安倍政権も国会決議を前提にこの「文喜相案」を受け入れる用意があると伝えられていることから結果として「輸出」と「元徴用工」のディールが成立することとなる。

 最後に、名古屋で開かれた先の日韓外相会談で安倍首相と文大統領による首脳会談を12月下旬に中国で開催することでほぼ内定したことだ。

 中国の成都で開かれる日中韓首脳会談に合わせての会談となるが、開催されれば、昨年9月以来約1年3か月ぶりのこととなる。

 ということは、日韓首脳会談までに「輸出問題」と「元徴用工問題」でメドが付いていれば、首脳会談は関係改善に向けての儀式(セレモニー)ということになるが、仮にこじれた場合、再びGSOMIAの破棄と、まだ態度を表明していない恒例の「独島(竹島)防御訓練」の動きが再燃するかもしれない。

 韓国政府からすれば、日本の輸出規制解除がGSOMIA破棄中断の条件となっているが、直近の世論調査によると、仮に条件が満たされなければ、韓国国民の52.1%が「予定通り破棄すべき」と唱えている。GSOMIAの破棄が決定的となれば、韓国海・空軍、海兵隊、海洋警察隊合同による「独島(竹島)防御訓練」が強行される可能性もゼロではない。

 「外部勢力が韓国の領土である独島を不法に占拠する」ことを想定した同訓練は毎年2回、上半期(6月)と下半期(12月)に分けて実施されている。

(参考資料:やるのか?やらないのか? 韓国軍の「独島(竹島)防御訓練」)

 今年の上半期の訓練は「G20サミット」(6月28日)で安倍首相との首脳会談を打診していたことや7月1日に発動された半導体素材の輸出規制厳格化措置の解除を求めていたこともあって態度を明らかにしていなかったが、日本が8月2日に韓国をホワイト国から除外する政令改正を閣議決定したこともあって逐艦、護衛艦、警備艦などの艦艇、F-15K戦闘機、海上作戦ヘリ、P3C哨戒機、さらには初めてイージス艦まで動員して8月下旬に実施している。

 昨年12月の訓練は13~14日に行われていたが、12月に入ってもまだ発表がないことや、8月の大規模訓練から4か月も経っていないこと、これから日韓の対話が始まること、さらに米国からも日本を刺激しかねない軍事演習を自制するよう求められていることから今年に限っては下半期の演習は見送られる公算が高いと言えよう。

(参考資料:竹島で日韓軍事衝突の可能性は?「防衛白書」に警戒心を強める韓国)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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